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Day3 最終アピール

「アジアの母乳育児支援ネット~女性のエンパワメントに向けて~」連続講座 

最終アピール
東京(日本) 2003年1月17日~19日
■主催:母乳育児支援ネットワーク

母乳育児支援ネットワークは2003年1月17日~19日にアジアの国際NGO(非政府組織)を招聘して、「アジアの母乳育児支援ネットワーク~女性のエンパワメントに向けて~」連続講座を開催しました。

世界中のお母さんが、十分な情報提供のもとに乳幼児の栄養や子育てに関して最善の選択ができること、それが真の意味での男女共同参画社会の実現につながります。そのような環境を整えるために、世界保健機関(WHO)の意思決定機関である世界保健総会(WHA)の趣旨を日本においても反映することができるようにと願って、このアピールを出します。

1. 日本では多くの女性が母乳で赤ちゃんを育てたいと願っています。世界保健機関(WHO)は、生後6ヵ月間は母乳だけで赤ちゃんを育てることを推奨しています。また、お母さんと赤ちゃんの双方のために、離乳食を始めたのちも2歳かそれ以上まで母乳育児を続けることを勧めています。しかし、この自然で当たり前のことが、日本においては困難になっています。そしてその原因が、女性自身の体質、努力、食生活、有職であるか否かといったことにあると一般的に思われているがゆえに、母乳育児がうまくいかなかった女性は自分自身を責めてしまいがちです。実際にはほとんどの女性は適切な情報と支援環境があれば、母乳育児を楽しんで続けることができるのです。子どもの権利条約では、赤ちゃんには母乳で育てられる権利があると謳われています。また、お母さんにとっても、母乳で育てるための情報や十分な支援を得る権利があります。

私たちの多くは、母乳育児がより望ましいことは知っていても、これまで、母乳育児に関する情報と母乳代用品(人工乳や哺乳びん)の両者において“情報量の不均衡”が起きていることに気づいていませんでした。親がどちらを選択するにしても、自信を持って正確な判断をするには、この“情報量の不均衡”を是正する必要があります。
2. 1994年の世界保健総会では、日本政府を含む参加の178ヵ国すべてが「母乳代用品の販売流通に関する国際規準(WHO規準)」を承認しました。さらに、総会は政府が母乳代用品の無料、または割引の配布を終わらせるための措置を保健システムに全面的に適用することを勧告する決議も採択しました。この決議は、生後6ヵ月間は母乳だけで赤ちゃんを育てることの重要性も強調しています。これに先立って日本では、1974年10月、厚生省児童家庭局母子衛生課から企業5社への指導があり、一時的に自粛した経緯があります。また1983年、厚生省児童家庭局母子衛生課は、再度業界への自粛を要請し、同時に「人工乳サンプル無償配布の問題点について」と題する提言文書を小児科雑誌に掲載し、医療機関関係者への協力を要請しましたが、現在も自粛されているとはいえません。

そこで、私たちは、
● 医学的な理由などで母乳代用品を本当に必要としている一部の人だけが適切に使用できるように、一般向けの宣伝や行き過ぎた販売攻勢を企業がやめることを要望します。
● 保健医療専門家の「母乳代用品の販売流通に関する国際規準」への理解も必要だと考えています。お母さんに十分な情報を提供して母乳育児支援をするためには、保健医療専門家も十分な情報と支援のためのスキルが必要です。女性が自信を持って母乳育児ができるように女性の立場になって援助ができる保健医療専門家の養成・教育や、国際的にも通用する認定を支援します。
● また、母乳で育てた経験のある母親が他の母親を援助する形の自助グループの持つ力を認識し、応援します。
● 多くの女性が母乳育児を続けることができ、楽しんで育児ができるような環境を整えるために、政府とともに母乳育児支援をしたいと思っています。子育て支援は、いろいろな形があります。母親どうしの助け合い、保健医療専門家、父親や祖父母も含めた家族、保育者、市民の草の根グループ、職場、地域福祉など、それぞれの手による母親への子育て支援はすべて重要です。役割の違いを認め合い、「お母さんと赤ちゃんの健康と幸せ」という同じ目的のために連帯したいと考えます。

3. 男女共同参画社会に向けて、母乳育児を推進することには多くの利点があります。母乳育児の持つよさを男女で認識することで、

1) 生殖・授乳の権利を大切に思う気持ちは男女で共有すべきものであること
2) 母乳育児は子どもだけではなく、親の権利でもあること
3) 母乳育児や子育ても社会全体が応援することが重要であること

に気づき、現代社会の課題を考えていくことができます。

また、国際労働機関(ILO)の条約が提示しているように、女性が母乳育児と労働を両立できるような環境作りをすることで、社会にも恩恵が与えられます。

● 女性は、母乳育児のための休暇や、授乳もしくは搾乳のための十分な機会が与えられれば、母乳育児を続けるために仕事をやめる必要がなくなります。女性に意欲と責任感が増し、生産性の高い労働力ともなります。
● 女性が健康で満足感を得て、雇用主に対して誠実に働けば、スタッフの回転率が低くなり、求人や再教育の費用が削減できます。
● 雇用主は、質の高いスタッフを将来雇用できるという意味でも、また一般市民の目という点でも、よい企業イメージを得られます。
● 母乳育児はお母さんにとっても子どもにとっても健康上の利点が非常に大きいので、予防可能な病気の医療費、医療保険費の削減にもつながります。
● 母乳育児はお母さんと子どもの間に密接な関係を築き、母乳育児に関連するホルモンは女性の全般的な性と生殖に関して健康によい影響を与えます。
● 人工栄養に必要な包装、流通、廃棄処理などを減らすことになるので、環境への害も減らすことになります。 お母さんが人工栄養にお金をかけない分、他の消費に回すことができるので、経済が活性化します。

4. 私たちはまた、国際社会の責任ある一員として、子育ての文化の多様性を重視する気持ちをアジアの他の国の人たちと共有していきたいと思います。特に、母乳代用品を扱っている日本の企業が自国においてだけではなく、他の国においても国際規準を守って節度を持った販売をし、アジアにおける母乳育児の文化を壊すようなことがない社会をめざします。
母乳育児支援ネットワーク <Breastfeeding Support Network of Japan, BSNJapan>は、1999年に結成され、いつでも、どこでも、どんな状況でも母乳育児に必要な情報や支援が得られる社会になることをめざして活動しているボランティア組織です。

母乳育児支援ネットワーク
URL  http://www.bonyuikuji.net/

母乳育児支援ネットワーク(BSNJAPAN)について

母乳育児支援ネットワーク(BSNJapan)はWABA(母乳育児支援行動連盟)を日本で紹介し、日本での母乳育児を支援する活動を行うことを目的として2000年に設立された非営利団体です。 WABAの支援団体として登録されており、母乳育児支援に関心のある方の参加と協力をお待ちしております。

BSNの理事会は医師や助産師などの保健医療専門家のみならず、社会福祉やメディア社会学、法律の専門家、および母乳育児支援団体の母親リーダーなどを含むメンバーで構成されており、母乳育児がしやすい社会をめざして活動を続けています。

BSNJapanはWABA(世界母乳育児行動連盟)の承認団体であり、乳児用食品国際行動ネットワーク(IBFAN)のメンバーグループでもあります。


最初は母乳だけ、その後も他の食べ物を補いながら母乳を与え続ける。金色のリボンは、 その「ゴールド スタンダード」、つまり理想のありようの象徴です。

WABA(世界母乳育児行動連盟)とユニセフが共同で提唱している「金色のリボン運動」に参加しています。

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