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情報化時代の母乳育児  WABA2001

wbw2001calender  10th Anniversary

【訳注】このパンフレットではcommunicationという言葉がたくさん使われています。これは日本語のコミュニケーションだけでなく、情報や意思の伝達などさまざまな意味を持ちます。そのニュアンスが伝わるよう各項目で状況に応じて意味を補記しました。

乳育児には、子育てやライフスタイルに関するほかの多くの事柄と同じように、情報に基づいて決断する機械が必要です。とはいっても、私たちの「情報源」は年月を経て、根本的な変化と拡張を広げてきました。考えてもみてください!100年前には、たかが写真さえ「目新しいもの」だったのです。情報源が広がるにつれて、情報の質や、情報を提示する動機にも変化が生じました。もっとも、変化が常によいものだとは限りません。母乳育児を保護・推進・支援しようとする今日までの多くの戦いは、情報をいかに取捨選択するかをめぐるものだったのです。
そこで2001年の世界母乳育児週間において、WABAは母乳育児にまつわる知識と考え方と行動を形成するうえでの、情報や医師の伝達、つまり”コミュニケーション”の重要性に焦点を当てることにしました。それとともに、母乳育児の世界的なネットワークづくりや、効果的な”コミュニケーション”を駆使して母乳育児支援を推し進めてきた、WABAの栄えある10周年を祝します。

INDEX

今年の世界母乳育児週間の目標
1対1の”コミュニケーション”(心のふれあい)
情報の大量伝達(マス・コミュニケーション)の始まり
母乳育児の情報競争
母乳育児の保護と促進
「赤ちゃんにやさしい病院運動」(BFHI)
母乳育児のためになくてはならない情報
母乳育児を支える“コミュニケーション”(情報や意思の伝達)
論議を呼ぶ事柄を伝えるとき
行動のためのアイデア

今年の世界母乳育児週間の目標

・母乳育児を考えるうえで、これだけは絶対にはずせないという情報を提示すること。
・“コミュニケーション”のさまざまな形や方法と、それを活用して母乳育児を保護・推進・支援する効果的な手段を浮き彫りにすること。
・母乳育児にとってのハードルや脅威を伝え合うためのアイデアや経験を共有すること。
・母乳育児をするお母さんを支援する、より革新的で役立つ取り組みを提供し、後押しすること。

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1対1の“コミュニケーション”(心のふれあい)

人間は、誕生後すぐに心と心を通わせる、つまり“コミュニケーション”のすべを身につけます。母乳を飲ませるお母さんと、母乳を飲む赤ちゃんを考えてみましょう。見つめ合う目と目。表情。お母さんのやさしい指の感触や心和むにおい。赤ちゃんの力強い吸い方。生命の源である母乳。お母さんと赤ちゃんはそれらを通じて、“コミュニケーション”という美しいダンスを一緒に踊っているのです。この和やかなやりとりにより、お母さんと赤ちゃんの間には、信頼と愛情に満ちた関係が育まれます。
これまで、女性が母乳育児のことを学ぶ主な手段は、お母さんと周囲の人との直接的で個人的な人間関係に基づく“コミュニケーション”つまり情報や意思の伝達でした。赤ちゃんを産む前から、友人や家族を日常的に観察し、やがて赤ちゃんを産んでからは、家族や助産師の手ほどきを受けながら母乳育児のことを学ぶのです。直接、言葉や態度で応えてもらったり、認めてもらったり、問いかけてもらったりすることで、お母さんは学び、実践し、情報を知ったうえでの選択をすることができました。
けれども、過去1 世紀にわたる社会的・経済的な変動、そして“コミュニケーション”の変化は、母乳育児の伝承、学習、実践のあり方に影響を及ぼしたのです。各家庭が母乳育児に対してどんな姿勢をとり、どのような信念を持ち、どう決定するのかを決める情報源は多様化しています。その影響を受け、かつての緊密に結びついた親族を基盤とする小さな社会において成立していた、観察と口伝えによる“コミュニケーション”は、複雑なものになりました。

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情報の大量伝達(マス・コミュニケーション)の始まり

新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、インターネットなどの情報コミュニケーション技術は、政府や企業からの支援を受けて発達してきました。こうした技術が進歩し、身近になるにつれて、一般家庭もラジオを買い、テレビを買いました。そして、今ではコンピューターやインターネットの利用もできるようになりました。
このような社会の発展と科学技術によって、従来、家族や近所や地域の中での対人関係から得るもの
だった学びや社会的な影響は、中央集権的なマスメディアと、孤立した個人という関係から得るものへと変容させられてきました。こうした一方的な情報の大量伝達(マス・コミュニケーション)は容易に、人々の感じ方や実際の行動に影響を及ぼし、新たな流行や欲望や行動様式を生み出します。

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母乳育児の情報競争

乳業会社と弱体化する母乳育児文化
そもそもの最初から、乳業会社はやむことなく、人工乳などの乳児用飲食物への需要を掘りおこそうとしてきました。保健医療従事者、医療情報提供者、看護師のようなユニホームをまとった(企業派遣の)育児アドバイザー、販売員などを通じての対人的なふれあいにも多少はよりますが、これらの企業はそのほかのさまざまな戦略やメディアを駆使した、大規模かつ複雑なマーケティングによる販売促進を始めています。市販の乳児用飲食物は、今もなお、より便利で、「科学的」で、完璧な栄養を提供し、より高い社会的地位を表すものとして、販売促進されています。広告は “ふっくらした赤ちゃんを連れたおしゃれなママ”のイメージを駆使して、これらの乳児用飲食物を使えば、理想が手に入るはずという幻想を作り上げています。さらに最近では、人工的に作られた商品のほうが安全だというメッセージが盛り込まれるようになっています。この傾向は、環境汚染の影響を受けている地域や、HIV、AIDSの割合が高い地域においては特に強いといえます。

これまで母乳代用品の販売促進の主要な担い手として大きな役目を果たしてきたのは、保健医療従事者たちでした。出産と母乳育児がどんどん医療の対象となるにつれて、母乳代用品は周産期の一連の経過をいっそう構造化し、計画的にするための、科学的かつ無菌の手段として売り込まれるようになりました。残念なことに、「科学的な」栄養法は、出産と授乳の自然なプロセスについて限られた知識しか持たない男性の医師が支配する環境において、急速に一般的になっていきました。医療や保育の教科書や病院の日常業務の中で、乳児用人工乳がいかに勝っており、母乳がいかに劣っているかについての誤解を招くような情報が標準化され、過激な販売促進戦略がそれに追い打ちをかけました。

母乳代用品の販売促進は、20世紀の大多数の家庭に行きわたりました。古くは産業革命、新しくはサービス経済化の進展によって、経済的な圧力は、家族や友人のもとを離れ、母乳育児に対する伝統的な地域社会の支援との結びつきを後回しにして、家庭が職を求めて住まいを変えることを当たり前にしました。女性が有給の労働市場に参入するとともに、子どもと常に一緒にいる余力がなくなっていったのです。そして乳児期から母乳代用品に慣れさせることは、こうした経済活動を支える「選択肢」であるかのように伝えられました。

全体として、これらの変化は母乳育児や女性の直観的な知恵の価値を下げるものでした。かつて母乳育児文化を支えていた地域社会は加速度的に分断され、支える力を失ったのです。人工乳などの乳児用飲食物や哺乳びんなどの関連製品を赤ちゃんのために「最高のもの」とする過剰な販売促進活動により、お母さんたちの間には、自分の母乳の質や、赤ちゃんの成長や、自分自身の育児能力への迷いが生じるようになりました。お母さんは自信を喪失し母乳育児を早くにやめてしまい、赤ちゃんに栄養不良や下痢、そして時には死という、多くの場合は悲惨な結末がもたらされました。

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母乳育児の保護と促進

「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」
1939年、シンガポールではじめて、早期に母乳育児をやめるようなことにつながる、誤解を招くような宣伝活動と人工的な乳児用飲食物と乳児の死亡率に関連性があることが公にされました。続く数十年、非難と訴訟とボイコットの、そして多くの赤ちゃんの死を経て、ようやく1981年、世界保健総会によって「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」が採択されたのです。「国際規準」は母乳育児を推進・保護し、人工栄養に関係する製品の販売促進に用いられるマーケティングの慣行を規制することを目的としています。現在では、「国際規準」は55ヵ国(訳注:数字は2001年発行当時)を超える国でその全部、あるいは一部が法制化され、さらに多くの国で業界の自主的基準として履行されています。

「国際規準」は変化をもたらしました。けれども、まだ十分ではありません。多くの企業は、表面上は変化を装っていますが、依然として製品の販売を促進しています。乳児用食品国際行動ネットワーク(IBFAN)は、「国際規準」と、その後のWHOによる勧告を遵守しているかを監視し、違反を報告しています。違反がそこにある限り、IBFAN、政府、市民グループは母乳育児を保護することを目的とする法律の整備を求め、ネスレ製品の不買運動などの抗議行動に参加します。

参考文献・情報源

・Breaking the Rules, Stretching the Rules: Evidence of Violations of the International Code of Marketing of Breastmilk Substitutes and Subsequent Resolutions, 2001, IBFAN ICDC
・A series of 5 IBFAN pamphlets which report on marketing trends: the International Code, HIV and Breastfeeding; Labels; Hospitals & Clinics; Mothers; and the Internet, 2001, IBFAN ICDC
・State of the Code by Country: a Survey of Measures taken by Governments to Implement the Provisions of the International Code of Marketing of Breastmilk Substitutes, 2001, IBFAN ICDC
・State of the Code by Company: a Survey of Marketing Practices of Infant Food and Feeding Bottle Companies, compared to the Requirements of the International Code of Marketing of Breastmilk Substitutes, 2001, IBFAN ICDC

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「赤ちゃんにやさしい病院運動」(BFHI)
1992年にUNICEFとWHOが、病院が母乳育児を推進し支援するための一助となることを目的として着手した「赤ちゃんにやさしい病院」運動は、多くの国ですばらしい成功をおさめてきました。 現在では、世界各地に14,500(訳注:数字は2001年発行当時)を超える「赤ちゃんにやさしい病院」が存在します。「母乳育児を成功させるための10ヵ条」のほとんどはなんらかの形で、お母さん・赤ちゃん・医師・看護師・地域社会の間の適切な“コミュニケーション”(情報や意思の伝達)に関係しています。「赤ちゃんにやさしい」かどうかを決める基準の1つは、母乳代用品や哺乳びんや人工乳首の、無償もしくは低価格での提供を受けないという「国際規準」を守っていることです。

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母乳育児のためになくてはならない情報

お母さんの母乳の分泌がよくなるのを助けたかったら、まずは親切に、支援の気持ちを忘れずに。不安を取り除くお手伝いを。大丈夫、母乳で育てられますよと力づけましょう。  『母乳育児のお手伝い』フェリシティ・サヴェジ・キング

●赤ちゃんにとって、これ以上ない、最高の食べ物と飲み物。それは、「母乳だけ」です。 WHOとUNICEFはすべての乳児が、生後6ヵ月まで母乳だけを飲み*、2歳かそれ以上まで補完食とあわせて母乳を飲むことを推奨しています。
●特別な事情がない限り、女性はだれでも母乳で赤ちゃんを育てることができます。家族や友人や保健医療従事者や勤め先からの支援や援助を受けることは、お母さんの力になります。
●赤ちゃんは生後、できるだけ早いうちから母乳を飲み始めることが望ましいでしょう。赤ちゃんは欲しがるときに欲しがるだけ、母乳を飲ませてもらうべきです。
●ひんぱんに母乳を飲むのは普通のことで、赤ちゃんに満足感と安らぎをもたらすとともに、赤ちゃんが飲めば飲むほどより多くの母乳が作られます。赤ちゃんの月齢が上がるにつれて、徐々に、授乳の間隔が長くなっていきます。
●母乳育児は赤ちゃんの順調な成長を助け、病気を予防します。母乳以外の赤ちゃん用の飲食物には予防効果がなく、調乳や調理、食べさせ方や飲ませ方が適切でないと、病気の原因になるリスクもあります。
●赤ちゃんが生後6ヵ月に達したら、母乳以外のさまざまな食べ物も口にできるようになります。けれども、母乳は2歳以上、できることならそれ以上の期間、続けることが望ましいでしょう。
●家を離れて働くお母さんでも、就業時間中も搾乳したり、直接母乳を飲ませたりすることで、母乳育児を続けることができます。十分な出産休暇、母乳育児のための休憩時間や施設、職場近くの保育施設があると助かるでしょう。

注:「母乳だけで育てる」とは、乳児に対し、母乳以外の一切の飲み物や食べ物を与えないことを意味する。その際、乳児はひんぱんに、時間を制限することなく、母乳を飲めることが望ましい。
(出典:UNICEF: Facts for Life: Breastfeeding)

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母乳育児を支える“コミュニケーション”(情報や意思の伝達)

母乳育児で最も大切なコミュニケーションが、お母さん対他者、つまり赤ちゃんや家族や友人や保健医療従事者との個人的なかかわりによる情報や医師の伝達であることは、今も変わりありません。1対1の個人どうしであれ、グループ内であれ、母乳育児について話し、経験を分かち合うことは、お母さんがしっかりとした意識を持って決断を下すのに役立ちます。個人どうしよりも、はるかに強力なコミュニケーションの形も多くあります。テレビやラジオ、出版物、インターネットのような大量の情報伝達方法もそうです。多くの人に情報を伝えるために、ポスターやバッジやTシャツなどにさりげなくメッセージを書く方法もあれば、ゲームやコンテストやパレードやパーティーなどのように積極的に参加する方法もあります。手提げ袋や石けんや鉛筆やカップなどの、景品やおまけは、そこに込められた意味を、受け手が見るたびに思い出すという効用があります。有名人から、「普通の」お母さんやお父さん、おばあちゃん、保健医療従事者など、だれでもこうしたコミュニケーションの担い手になることができます。

このように、使う媒体、伝えたいこと、画像や映像、代弁者の組み合わせはさまざまですが、どんな場合でも、選択に注意が必要なことには変わりはありません。母乳育児を支援するためには、どのように情報を伝えるかのプラン作りが大切です。だれを対象とし、その相手が乳児栄養法のどのようなことを重要視するかを見極め、その人が納得できるメッセージを心に届ける必要があるのです。上に挙げたのは、最適な母乳育児のありかたを推進するために必要な、母乳育児のためになくてはならない情報の例です。これらの事柄についてのさらに詳しい情報は、「参考文献・情報源」で紹介しています。

臨機応変な対応をするための準備
コミュニケーションにおいては、「ダメージ・コントロール」がしばしば必要になります。例えば、母乳育児をけなしたり、攻撃するような話題がのぼったりしたときに、見逃さないよう、心の準備をしておくのです。 大切なのは、その話題の背景と、話題の発端となった報告や事件に通じておくことです。 そのうえで、調査、研究に基づく最新の情報を用いて、正確に、適切に、冷静に、母乳育児を擁護しましょう。メッセージを送る際は、それを届けようとする相手にふさわしい媒体を選びましょう。例えば、政策立案者に対しては記者会見という場が効果的ですし、一般人に対しては論説委員への投書という手段のほうが訴える力があるかもしれません。大切なのは、たとえ例外的なケースについて話をするときでも、大多数の家庭にとっては、母乳育児は最適であるという点を強調し続けることです。

特別な事情がある場合の“コミュニケーション” (情報の伝達)
私たちがメッセージを届けようとする受け手の中には、きっと特別なニーズや困難を抱えているために、私たちからの情報を受けとりにくい人たちがいるはずです。母国語以外の言語の読み書きが不自由なことが障害となって、文書化された資料が効果を発揮できないこともあるでしょう。言語の違い、翻訳者や多言語を操るスキルの不足は、個人対個人のコミュニケーションの妨げになり得ます。 視覚や聴覚に障害を持つお母さん、そのほかの身体的なハンディキャップを持つお母さんには、特別な便宜が必要でしょう。冊子によっては、点字で書かれたものが入手できます。 聴覚障害者向けの特別な電話サービスも役に立つでしょう。

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論議を呼ぶ事柄を伝えるとき2002_japan

論議を呼ぶような事柄のコミュニケーション(情報伝達)においては、結果として母乳育児に対してダメージが残らないように、注意深く、明確にすることが欠かせません。母乳育児に関する2つの難しい論点について、メッセージを伝えるときの具体例を挙げてみましょう。

母乳の汚染
ある地域において、人間に対する環境汚染の「負荷」の度合いを垣間見るには、汚染物質が蓄積される体脂肪を調べるのが適当とされています。母乳からはこの体脂肪を容易に得ることができるため、結果的に、母乳の汚染濃度はしばしば報告されることとなり、あたかも乳児に対する危険性が懸念されるから測定するかのような誤解が生じています。そのような報告が公表されると、母乳で赤ちゃんを育てている家族は不安になります。母乳育児を擁護する側としては、このような事態を見越して、検査機関や環境団体と協調し、さまざまな側面を含めたメッセージを作り出さなければなりません。

つまり、以下のようなメッセージです。

●毒素が食物連鎖の隅々にまで行きわたっており、母乳や人間以外の乳や乳児用人工乳もその例外ではないことを認める。
●(母乳で育てるかどうかにかかわらず)すべての赤ちゃんは、胎児期から環境汚染物質にさらされ、それが体に蓄積していることに言及する。
●何(母乳)から環境汚染の証拠(エビデンス)が見つかったかをやり玉にあげるのではなく、何が環境汚染を引き起こしているのかを見極める。
●人工的な母乳代用品(粉ミルクなど)に関係するリスクや、母乳で育てないことのリスクをはっきり述べる。
●母乳代用品を使うことに関心を向けるのではなく、有毒な工業製品を使わないですむ方法に関心を向ける。
●汚染物質の体への負荷を減らすために、脂肪の多い肉やレバー、汚染水域の魚の摂取を避けるように提案する。
出典:Penny Van Esterik: Risks. Rights and Regulations: Communicating about Risks and Infant Feeding.

母乳育児とHIV/エイズ
【訳注】この項の情報は、2001年発行当時の研究に基づいています。
HIVは確かに、HIVに感染した女性から生まれる乳児の約14%に、母乳を介して移行しますが、これは母乳以外のものも与えて育てられた場合の数字です。母乳を介してのHIV感染率は、赤ちゃんが母乳以外のものは、水さえもいっさい口にしていない期間内ではずっと低いという研究結果もあります。
乳幼児がHIVに感染し、抗レトロウイルス薬(ARV)を投与されない場合、ほぼ例外なく死につながります。けれども物資も、下水などの衛生設備も、清潔さも、医療も、常にあるとは限らない環境においては、赤ちゃんが人工栄養の結果、病気になり、亡くなる確率も高いのです。こちらのリスクは、アフリカを含め、多くの地域においてまだ正確には数値化されていません。そのため、保健医療従事者も、お母さんも、どちらのほうがより賢明な選択であるかが、わかりにくいのです。
一般論としては、国連の諸機関では、以下の2つの条件を満たしている場合のみ、母乳を乳児用人工乳で完全に置き換えることをすすめています。

(1)家族が少なくとも6ヵ月間、十分な量の人工乳を確実に入手できること。
(2)家族が人工乳を正確かつ衛生的に用意する、水、燃料、用品、技術、時間に恵まれていること。

そのほかの選択肢としては、しぼった母乳を熱処理したり、検査によってHIV陰性であることが判明している女性が乳母として母乳を飲ませたりすることなどがあります。

HIV/エイズについての注意点
●家族にとって、「無償かつ秘密厳守のHIVカウンセリングと検査(VCT)」が身近に存在することが必要です。
●赤ちゃんは、妊娠中や出産中にHIVに感染する可能性もあるため、区別がつきにくいのが難点ですが、母乳を介して感染する場合は特に、生後初期のリスクが高いといえるようです。赤ちゃんが、HIVに感染しているお母さんの母乳を介してHIVに感染するリスクは、たしかに、母乳を飲む限り続き
ます。ただし、このリスクは成長するにつれて減少するようですし、赤ちゃんが生後半年間、母乳以外のものを一切口にしない場合には、このリスクはいっそう低くなります。

●また、ほとんどのお母さんはHIVに感染していないか、感染の状態を知らないのですから、全体としては、母乳育児の保護、支援、推進を継続するべきです。実際、例えば2001年にアフリカで妊娠中の定期健診に通っていた女性のうち、VCTすら、受けられる環境にあったのは1%に満たなかったのです。
●「国際規準」や「赤ちゃんにやさしい病院運動」の条項は、たとえHIV/エイズの有病率の高い地域においてでも、継続的に実行されるべきなのです。
●赤ちゃんの感染を防ぐ最もよい方法は、お母さんたちを、性的パートナーからのHIV感染から保護することです。

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行動のためのアイデア

私たちが、それぞれの地域社会でできること
●このWABAパンフレットを自国の言語に訳し、情報を広めること。
●テレビ局や新聞・雑誌・ウェブサイトの編集責任者に手紙を書くこと。母乳育児のよい点を伝えてくれたことについての感謝の気持ちを伝え、内容が母乳育児を邪魔したり妨げたりしている場合はその点を指摘しましょう。
●友人に母乳育児の利点について話し、子どもを持つ男性には、母乳育児への支援を促すこと。
●友人たちと協力しあって、地元で母乳育児に関連する催しを計画したり、情報ブースを設置したりす
ること。
●母乳育児を応援するメッセージをステッカーやシールにして、車の後部ガラスに貼ること。
●母乳育児を描いた本やマンガやお話を読んだり聞いたり、人間以外の哺乳類がわが子に母乳を与える様子を観察したり、さまざまな機会を通じて、自分の子どもを母乳育児という文化になじませること。
●母乳育児を考えるうえで、絶対にはずせないメッセージをよく知ること。
●母乳育児とHIV/AIDSや環境汚染という問題について、常に、最新の情報に通じているようにすること。
●広告看板や公共交通機関に、母乳育児を応援するメッセージやイベント告知を掲示すること。
●地元の図書館にかけあって、蔵書のなかから(一般書も児童書も含め)母乳育児関連の本を展示してもらうこと。図書館でインターネットにアクセスすることが可能な場合には、母乳育児関連のウェブサイトのリストを掲示してもらってもいいでしょう。母乳育児読書クラブを設立するのも一案です。

マスメディアへの働きかけ
●ラジオやテレビの人気番組を監視しましょう。新生児は母乳で育てられるべきであること、正確な情報が描き出されているようにすることを提案しましょう。不正確な情報を見逃さないようにしましょう(それを糸口として、今後のニュースの話題やインタビューの間違った情報が正されていくかもしれません)。
●メッセージを伝えたり、より強めたりする媒介として歌を活用しましょう。地元のラジオ局から流したり、診療所で流したり、さまざまな教室や保育園や親子教室などでの歌の集いで活用したりしましょう。
●ラジオ・テレビ・インターネット向けにそれぞれ、子育て、母乳育児、乳児の栄養についての教育プログラムを作成しましょう。ホンジュラスでは、ラジオ局が母乳育児の9つのゴールデンルールについて、11のプログラムを流しました。そしてさらに、ラジオの特別番組や歌やお母さん向けの冊子や保健医療従事者向けの手引きや研修課程の修了証が用意されました。
●出版物や放送のストーリー用に、ジャーナリストに対し、素材やインタビューするべき人物や報道すべきイベント(ショーやダンスやコンテストなど)を紹介しましょう。こうしたジャーナリストと協働関係を築きあげましょう。
●ラジオやテレビの、視聴者が電話で参加できる番組やトーク番組、インターネットのチャットに参加しましょう。
●ラジオやテレビが政府の管理下にある場合は、メディアやしかるべき行政部門と草の根の地域グループとの協働を促しましょう。

インターネットの活用
●母乳育児に関する良質なウェブサイトのリストを作成し、インターネットが使用できる場所(図書館やネットカフェな ど)で配ったり、直接家庭に届けたりしましょう。
●電子メールによる母乳育児の「ホットライン」を設置し子どものいる人からの質問を受け付け、電話や対面によるカウンセリング、さらには専門医への紹介を受けられるようにしましょう。オーストラリア母乳育児協会(ABA)では、電子メール相談を始めたところ、すぐに世界中から問い合わせが寄せられたそうです。
●ウェブサイト上に母乳育児の研究のまとめや、診療所や病院で働く人のための母乳育児知識検定を設け、24時間アクセスできるようにしましょう。
●母乳育児関連の著作物や現状について、折にふれ、最新情報を送れるように、メールの配信リストを作りましょう。対象は、家庭、保健医療従事者、政策立案者です。
●インターネット上の重要な政策や研究についての文書を見つけて印刷し、インターネットを使える環境にない仲間に配りましょう。

地元の診療所や病院との協力
●世界母乳育児週間を祝う横断幕、看板、ポスターを掲示しましょう
●母乳育児関連の情報を、ロビーや軽食堂や待合室に展示しましょう。
●保健医療施設の看護師・医師・運営者・そのほかのスタッフのさまざまな会合で、その地元における母乳育児の割合、母乳で育てにくい原因、母乳育児を推進するための努力についての統計を提示し、お母さんたちへのさらなる援助や支援を促しましょう。
●保健医療従事者の間で、「週刊母乳育児新聞」を発足させましょう。発行後に、新聞の内容についてのテストをして、最優秀回答者を表彰しましょう。このような取り組みが母乳育児に関する「継続教育単位」と認められるよう申請しましょう。

母乳育児支援ネットワーク(BSNJAPAN)について

母乳育児支援ネットワーク(BSNJapan)はWABA(母乳育児支援行動連盟)を日本で紹介し、日本での母乳育児を支援する活動を行うことを目的として2000年に設立された非営利団体です。 WABAの支援団体として登録されており、母乳育児支援に関心のある方の参加と協力をお待ちしております。

BSNの理事会は医師や助産師などの保健医療専門家のみならず、社会福祉やメディア社会学、法律の専門家、および母乳育児支援団体の母親リーダーなどを含むメンバーで構成されており、母乳育児がしやすい社会をめざして活動を続けています。

BSNJapanはWABA(世界母乳育児行動連盟)の承認団体であり、乳児用食品国際行動ネットワーク(IBFAN)のメンバーグループでもあります。


最初は母乳だけ、その後も他の食べ物を補いながら母乳を与え続ける。金色のリボンは、 その「ゴールド スタンダード」、つまり理想のありようの象徴です。

WABA(世界母乳育児行動連盟)とユニセフが共同で提唱している「金色のリボン運動」に参加しています。

Facebook母と子の災害時の育児支援 共同特別委員会

災害時の母乳育児相談