投稿者: bsn-admin

INNOCENTI DECLARATION

INNOCENTI DECLARATION

On the Protection, Promotion and Support of Breastfeeding.

 

RECOGNISING THAT:

Breastfeeding is a unique process that:

Provides ideal nutrition for infants and contributes to their healthy growth and development Reduces incidence and severity of infectious diseases, thereby lowering infant morbidity and mortality Contributes to women’s health by reducing the risk of breast and ovarian cancer, and by increasing the spacing between pregnancies Provides social and economic benefits to the family and the nation Provides most women with a sense of satisfaction when successfully carried out

and that Recent Research has found that:

these benefits increase with increased exclusiveness of breastfeeding during the first six months of life, and thereafter with increased duration of breastfeeding with complementary foods, and programme intervention can result in positive changes in breastfeeding behaviour

WE THEREFORE DECLARE THAT:
●As a global goal for optimal maternal and child health and nutrition, all women should be enabled to practise exclusive breastfeeding and all infants should be fed exclusively on breastmilk from birth to 4-6 months of age. Thereafter, children should continue to be breastfed, while receiving appropriate and adequate complementary foods, for up to two years of age or beyond. This child-feeding ideal is to be achieved by creating an appropriate environment of awareness and support so that women can breastfeed in this manner.

●Attainment of this goal requires, in many countries, the reinforcement of a “breastfeeding culture” and its vigorous defence against incursions of a “bottle-feeding culture”. This requires commitment and advocacy for social mobilization, utilizing to the full the prestige and authority of acknowledged leaders of society in all walks of life.

●Efforts should be made to increase women’s confidence in their ability to breastfeed. Such empowerment involves the removal of constraints and influences that manipulate perceptions and behaviour towards breastfeeding, often by subtle and indirect means. This requires sensitivity, continued vigilance, and a responsive and comprehensive communications strategy involving all media and addressed to all levels of society. Furthermore, obstacles to breastfeeding within the health system, the workplace and the community must be eliminated.

●Measures should be taken to ensure that women are adequately nourished for their optimal health and that of their families. Furthermore, ensuring that all women also have access to family planning information and services allows them to sustain breastfeeding and avoid shortened birth intervals that may compromise their health and nutritional status, and that of their children.

●All governments should develop national breastfeeding policies and set appropriate national targets for the 1990s. They should establish a national system for monitoring the attainment of their targets, and they should develop indicators such as the prevalence of exclusively breastfed infants at discharge from maternity services, and the prevalence of exclusively breastfed infants at four months of age.

●National authorities are further urged to integrate their breastfeeding policies into their overall health and development policies. In so doing they should reinforce all actions that protect, promote and support breastfeeding within complementary programmes such as prenatal and perinatal care, nutrition, family planning services, and prevention and treatment of common maternal and childhood diseases. All healthcare staff should be trained in the skills necessary to implement these breastfeeding policies.
OPERATIONAL TARGETS

All governments by the year 1995 should have:

Appointed a national breastfeeding coordinator of appropriate authority, and established a multisectoral national breastfeeding committee composed of representatives from relevant government departments, non-governmental organizations, and health professional associations.

Ensured that every facility providing maternity services fully practises all ten of the Ten Steps to Successful Breastfeeding set out in the joint WHO/UNICEF statement “Protecting, promoting and supporting breastfeeding: the special role of maternity services”.

Taken action to give effect to the principles and aim of all Articles of the International Code of Marketing of Breast-Milk Substitutes and subsequent relevant World Health Assembly resolutions in their entirety; and enacted imaginative legislation protecting the breastfeeding rights of working women and established means for its enforcement

WE ALSO CALL UPON INTERNATIONAL ORGANIZATIONS TO:

Draw up action strategies for protecting, promoting and supporting breastfeeding, including global monitoring and evaluation of their strategies

Support national situation analyses and surveys and the development of national goals and targets for action; and

Encourage and support national authorities in planning, implementing, monitoring and evaluating their breastfeeding policies

The Innocenti Declaration was produced and adopted by participants at the WHO/UNICEF policymakers’ meeting on “Breastfeeding in the 1990s: A Global Initiative, co-sponsored by the United States Agency for International Development (A.I.D.) and the Swedish International Development Authority (SIDA), held at the Spedale degli Innocenti, Florence, Italy, on 30 July – 1 August 1990. The Declaration reflects the content of the original background document for the meeting and the views expressed in group and plenary sessions.

 

 

 

イノチェンティ宣言

「イノチェンティ宣言」(2005年改訂版)翻訳文 (2007.6)はNPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会>母乳育児情報>資料ダウンロード>2.WHO ユニセフ関連 からpdfがダウンロードできます。

「母乳育児の保護、推進、支援」に関するイノチェンティ宣言

私たちは、以下の理由から、

母乳育児はかけがえのない方法であると認識しています

● 乳児に理想的な栄養となり、乳児の健康な成長と発達に寄与する。

●感染症の発生率と重症化がおさえられ、乳児の罹病率と死亡率が低くなる。

●乳がんや卵巣がんの危険が減り、次の妊娠までの期間があくことで、女性の健康に寄与する。

●家庭と国家に社会的、経済的利益をもたらす。

●うまく成し遂げたときにはほとんどの女性が満足感を得る。

また、最近の研究によれば

生後6ヵ月間の母乳育児が完全であればあるほど、また、離乳食と並行して母乳育児を続ければ続けるほど、以上の恩恵はより大きくなり、さらに、母乳育児のためのプログラムが介入することによって、母乳育児の行動によりよい変化がもたらされることがわかっています。

それゆえ、私たちは宣言します

●母親と子どもが最適な健康と栄養を得るための世界規模の目標として、すべての女性が生後4-6ヵ月まで完全に母乳だけで乳児を育てることができるように、また、すべての乳児が4-6ヵ月までは完全に母乳だけを飲むことができるように推進しましょう。

その後は、子どもたちに適切で十分な食べ物を補いながら、2歳かそれ以上まで母乳育児を続けるようにしましょう。

母乳育児に対する社会の意識を高め、周囲の環境を整え、母乳育児をサポートすることによって、子どもの栄養に関するこうした理想は実現します。

●この目標を達成するためには、多くの国で「母乳育児文化」を強化し、「哺乳びんで授乳する文化」の侵略から精力的に防御する必要があります。

このためには生活のあらゆる面で、社会的に認められた指導者が、その特権と権威などもフルに使って社会変革に取り組み、擁護していくことが必要なのです。

●女性が自分も母乳育児をすることができるのだという自信が持てるように、変革していかなければなりません。

女性をエンパワーする(女性に力をつけさせる)ためには、母乳育児に対する見方や行動をわからないように、巧妙で間接的な方法を使って情報操作したり影響を与えたりするものを取り除くことが大切です。

そのためには常に気を配り、継続的に目を光らせて、あらゆるメディアを使って反応のよい、総合的なコミュニケーションの方法で社会のすみずみにまで発信していくことが必要です。

さらに、医療制度、職場、社会の中にある母乳育児の障害となるものを取り除かなければなりません。

● 女性が自分自身と家族の理想的な健康のために十分な栄養を摂れるように施策を講じましょう。

さらにすべての女性が家族計画の情報を得ることができるように、そして、母乳育児を続けることによって子どもを産む間隔が短くなるのを避けられるようにしましょう。

子どもを産む間隔が短くなると、女性やその子どもの健康や栄養状態を損なう可能性があるからです。

●すべての政府は国としての母乳育児の方針を立て、1990年代の間に国の適切な到達目標を決めるべきです(注:イノチェンティ宣言は1990年に承認されています)。

国は、到達目標に達することができるかどうか追跡するための国の制度を確立するべきです。

そして、産科医療施設から退院するときに完全に母乳だけを飲んでいる乳児はどのくらい、生後4ヵ月で完全に母乳だけを飲んでいる乳児はどのくらいといった指標を決めるべきでしょう。

● 政府当局にも働きかけて、総合的な健康と発達の方針の中に、母乳育児に関する方針を統合させるようにしましょう。

そうすることで、妊娠中、産後のケア、栄養、家族計画、よくある母親や子どもの病気の予防と治療といった、相互補完的なプログラムの中で、母乳育児を保護し、推進し、支援するすべての行動を強化していくべきです。

また、すべての保健医療スタッフは、こうした母乳育児の方針を実行するために必要なスキルを磨くトレーニングを受けるべきでしょう。

実践可能な目標

すべての政府が1995年までに、適切な専門家の中から国の母乳育児のコーディネーターを任命しておきましょう。

そして母乳育児に関連のある政府の部門、NGO(非政府団体)、保健医療の協会出身の代表者から構成されるさまざまな分野を生かした、国の母乳育児委員会を設立しておきましょう。

WHOとユニセフの共同声明「母乳育児の保護、推進、支援:母乳育児成功のために:産科医療施設の特別な役割」に述べられている「母乳育児を成功させるための10ヵ条」の10ヵ条すべてが、どの施設でも完全に実践できるようにしておきましょう。

「母乳代用品の販売流通に関する国際規準」と世界保健会議の決議案のすべての条項の原理と目的が達成されるよう行動を起こしましょう。

そして、働く女性が母乳育児を続ける権利を守る独創的な法律が成立し、施行されるための手段を講じておきましょう。

 

私たちはまた、国際的な団体に次のようなことをお願いします

母乳育児を保護し、推進し、支援するための行動戦略を練りましょう。

これはそれぞれの方策を世界規模で監視し評価することも含みます。

国の状況を分析し、調査をし、国の目標や行動の到達目標を定め、後押ししましょう。

母乳育児に関する国の方針を計画、実施、追跡、評価するように政府当局を奨励し、支持しましょう。

 

イノチェンティ宣言は、「1990年代の母乳育児:世界規模のイニシアチブ」に関してWHOとユニセフの方針作成者の会議で、参加者によって作成、承認されました。

この会議は、米国国際開発庁(A.I.D.)、スウェーデン国際発展オーソリティ(SIDA)が共同スポンサーとなり、1990年7月30日から8月1日にかけてイタリアのフローレンスのスペッダーレ・デリ・イノチェンティ(捨て子養育院)において開かれました。

(訳注:ここは、1419年にできた捨て子養育院です。その中にイノチェンティ・リサーチ・センターというユニセフの研究機関があります。

(http://www.unicef-icdc.org/aboutIRC/)

 

この宣言は、会議のために用意された文書、および分科会、全体会で出された考え方を反映しています。

 

2003年1月

翻訳:母乳育児支援ネットワーク

協力:日本ラクテーション・コンサルタント協会、ラ・レーチェ・リーグ日本

(金森あかね、瀬尾智子、本郷寛子、山崎陽美)

生後6ヵ月間は母乳だけでOK! 安全、安心、持続可能なゴールド・スタンダード WABA2004

Index
金色のリボン2004family_eng180
母乳だけで赤ちゃんを育てる…
なぜ、多くの赤ちゃんが母乳だけで育てられていないのでしょうか?
「ゴールド・スタンダード」を成し遂げましょう
こうすれば、母乳育児はうまくいきます
以下のようなことがあると、ゴールド・スタンダードを満たせません
仕事は母乳育児の障害にはなりません
気遣いのある環境
生後6ヵ月間も母乳だけで育てることなんてできるの?
行動のためのアイデア
特別な状況で「母乳だけで赤ちゃんを育てる」
参考文献
医療・保健従事者、地域やお母さんのサポートグループのための情報源―困ったときはこちらへ


金色のリボン

最初は母乳だけ、その後も他の食べ物を補いながら母乳を与え続ける。金色のリボンは、その「ゴールド・スタンダード」、つまり理想のありようの象徴です。

リボンの対の輪はそれぞれ、お母さんと子どもを示しています。そして真ん中の結び目は、それを支えるお父さん、家族、社会を表します。リボンの端はそれぞれ、生後6カ月以降赤ちゃんの成長に合わせて与える補完食と、母乳育児を続けることできょうだいの年がちょうどよく3~5歳離れることを示しています。

このリボンは、WABA(世界母乳育児行動連盟)とユニセフが共同で提唱している、人種や国境を超える世界的な運動の象徴なのです。誇りを持って金色のリボンを身につけ、このリボンの持つ多くの意味を皆に説明しましょう。

さらに詳しい情報をご希望の方は www.unicef.org/programme/breastfeeding/bow.htmやwww.waba.org.my/form2/goldenbow.htmを参照してください。

ちゃんが生まれてからの6ヵ月間、母乳だけで育てるのは、安全で、安心で、持続可能な育て方です。しかも、母乳育児が大切なのは、最初の6ヵ月に限られたことではありません。WHO(世界保健機関)とユニセフ (国連児童基金)では、適切な補完食(離乳食)を食べさせながら、母乳育児を2年以上続けることを勧めています[1]。このように育てると、赤ちゃんは本来の理想的な発達を遂げます。けれど、生後6ヵ月間母乳だけで赤ちゃんを育て、その後も母乳育児を続けるためには、母乳育児の大切さや実践方法を知ること、適切なサポートを受けることが必要です。

「生後6ヵ月間母乳を飲むことで、赤ちゃんはこの期間に通常必要としているすべてのものを摂取することができ、他の余分な飲み物も食べ物も必要ない」という点で、現在、専門家たちの意見は一致しています[2]、[3]。ここでいう「母乳だけで赤ちゃんを育てる」とは、赤ちゃんが、お母さんや乳母の乳房から直接飲む、あるいは搾乳されたもの以外は何も口にしないことを指します[4]。

多くの場合、いざやってみれば、生後6ヵ月間、母乳だけで育てることはとても楽なものです。赤ちゃんの食べ物や飲み物が足りているか、与えてよいものなのかなどと心をわずらわせる必要もなく、赤ちゃんに余分な食べ物や飲み物を与えるためにかかる手間も費用も省くことができるのですから。

残念なことに、多くの国では、「母乳だけで赤ちゃんを育てる」のは珍しいことになっています。そこで今年は、以下の3点を、誰もができるようにお手伝いすることを、世界母乳育児週間の目標とします。その3点とは、 1.「母乳だけで育てる」ことを理解すること。 2.その利点を信じること。 3.できる限り、お母さんがそうできるように支え、励ましていくことです。

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母乳だけで赤ちゃんを育てる…安全です

母乳は単なる食べ物以上のものです。母乳は生きています。多くの免疫物質を含み、赤ちゃんがまだ自分を守ることができない時期(注:自分で免疫を作り出すことがまだできない時期のこと)に、赤ちゃんを常に積極的に感染から守ってくれます[5]。生後数日間、お母さんは抗体を非常に多く含む初乳を通して、理想的な免疫を赤ちゃんに与えます。初乳の量は少ないですが、それが、この時期に赤ちゃんが必要とする量なのです。母乳だけで育てられた子どもは、より健康です。人工栄養や混合栄養で育てられた子どもは、下痢や肺炎、その他の感染症にかかる回数が多くなります[6]。

母乳だけで育てる…安心です

母乳には、赤ちゃんが生後6ヵ月間に必要とする適切な量のカロリー、タンパク質、ビタミンと他の栄養素[7]に加え、必要な水分のすべてが含まれています[8]。母乳は赤ちゃんにとって完璧な栄養となり、他のいかなる動物の「乳」や食べ物よりも容易に、そして完全に消化されます。母乳で育てられた赤ちゃんは、大きくなっても人工乳で育てられた赤ちゃんに比べて肥満になりにくいのです。またアレルギーになりにくく、知能テストの得点もより高いことが研究でわかっています[6]。

母乳だけで育てる…「持続可能」です

お母さんがどのような組み合わせで食材を食べても、栄養豊富な母乳は作られ続けます。どんなに質素な食べ物であっても大丈夫です。人工乳にかかる費用を心配する必要もありません。お母さんの食費が多少増えますが、わずかな出費ですみます。

母乳だけで育てる…お母さんにとっても重要です

母乳だけで育てていると、産後6ヵ月間は月経が再開しにくいので、早すぎる次の妊娠を防ぎます。そして、妊娠中に増加した余分な体重を落とすのを助けます。女性は母乳を与えることで乳がんと卵巣がんのリスクが減り、おそらく骨粗しょう症のリスクも減ります[6]。

世界的な運動戦略

2002年に、WHOとユニセフは、「乳幼児の栄養に関する世界的な運動戦略」[1]を発表しました。これは、政府その他の国家機関に対し、母乳育児を徹底するために必要な措置を求めています。つまり、すべての保健衛生及びその関係部局が、お母さんが生後6ヵ月までは母乳だけで赤ちゃんを育て、その後も2歳、あるいはそれ以降まで与え続けられるように、保護、推進、支援すること、そして、女性がその目標を達成するために家庭で、地域で、職場で必要とする支援を受けられるようにすることです。

 

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なぜ、多くの赤ちゃんが母乳だけで育てられていないのでしょうか?

●「母乳だけで育てる」とはどのようなことなのか、そして、いかにそれが重要なことであるか、お母さん、保健・医療の専門家、家族と地域住民が、理解していないからです。母乳だけで育てるために、どのようにしたら最もうまくいくか、どのように始めればいいのか、そして、お母さんが困ったときにどうしたらいいのかが、よく知られていないのです。そのため、お母さんに必要なアドバイスと支2004_bfhi援を提供することができません。
●生後6ヵ月の間母乳だけで育てることが可能であり、お母さんの母乳だけで足りるということ、つまり、誰でも十分な量の母乳が出るということを、お母さん自身も、保健・医療の専門家、家族と地域住民も信じていないからです。わずかな量でも、余分な食べ物や飲み物を足すことが、実際には赤ちゃんに害があるかもしれないことに気がついていません。
●赤ちゃんが生後6ヵ月になるより前に、自宅内外のどちらにせよ、仕事に戻る必要があるからです。
●企業の宣伝に、母乳だけよりも、人工乳を足したほうがいいというメッセージが含まれているからです。

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「ゴールド・スタンダード」を成し遂げましょう「生後6ヵ月までは母乳だけでOK!」を社会の常識に

お母さんが赤ちゃんを母乳だけで育てられるように、そして母乳以外のものを与えたくなるような誘惑や圧力に負けないようにするために、お母さんには「正確な知識」と「応援してくれる環境」が必要です。
「生後6ヵ月までは母乳だけでOK!」が社会の常識となっていれば、また、家族や地域社会や保健・医療従事者が正確な情報を持っていれば、母乳だけで育てることが可能となります。

こうすれば、母乳育児はうまくいきます

2004support ●お母さんと赤ちゃんが出産直後から肌と肌をふれあい、約1時間以内に最初の授乳を開始できるとき[10]。こうすると母乳産生が促され、赤ちゃんが初乳を飲むことができます。

●赤ちゃんが適切に乳房を深く口に含み、効果的にごくんごくんとゆっくり母乳を飲み込むことができるとき[11]。
●夜も昼も、赤ちゃんが欲しがるときにはいつでも母乳を飲めるとき。これは「自律授乳」もしくは「欲しがるときに欲しがるだけの授乳」と呼ばれます。そのためには、赤ちゃんがベッドやスリング(訳注:新生児から使えるハンモック風の抱っこひも)でお母さんのそばにいるのが一番です。
●常に、赤ちゃんが自分で、どちらかの、もしくは両方の乳房をどのくらいの時間吸うか決められるとき。
●赤ちゃんに、おしゃぶりが与えられていないとき。おしゃぶりを与えるとお母さんの乳房を吸う興味を失ってしまいます。

このような飲み方ができればたくさんの母乳が得られ、赤ちゃんはより満足してよく育つでしょう。赤ちゃんは1日に少なくとも6回おしっこをして、軟らかい便を何回もします。といっても、生後数週間してからは、便が毎日出なくても心配ありません。
このような母乳育児は、お母さんと赤ちゃんの心のきずなを深めます。そして、お母さんが子育てを楽しめるようになり、自尊感情(自分を大切に思える心)を高めます。

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以下のようなことがあると、ゴールド・スタンダードを満たせません

他の食べ物や飲み物が生後6ヵ月の間に与えられると、その分、母乳を飲めなくなってしまいますから、栄養的に「ゴールド・スタンダード」に及ばなくなります。赤ちゃんが吸う回数が減ると、母乳が乳房にとどまるため、乳房が張りすぎたり、はれたりしてしまうかもしれません。そして、母乳の出が悪くなり、お母さんは自分の母乳だけでは足りないと思うかもしれません。赤ちゃんは、母乳だけで育てる場合ほど成長せず、病気にかかりやすくなります。
同様に、適切に乳房を口に含んでいない赤ちゃんは、何回もおっぱいを飲んでいても満足していないかもしれません。そして、お母さんは母乳が足りないと誤解して、他の食べ物を与えるかもしれません。適切に含んでいればこのようなことは避けられ、さらには乳頭が痛くなったり、乳腺炎になったりせずにすみます。

仕事は母乳育児の障害にはなりません

すぐに職場に復帰する必要のない女性や、赤ちゃんとほとんど一緒にいることができる女性であれば、赤ちゃんが生後6ヵ月になるまで母乳だけで育てることは、さほど難しくないかもしれません。お母さんが出産の後、すぐに仕事に戻らなければならない場合は、より十分な準備と支援が必要です。留守中はしぼっておいた母乳を与えてもらおうと考えるお母さんもいるでしょう。搾乳に必要なのは大がかりな設備ではなく、プライバシーが守られ、便利に搾乳できるようなお母さんに優しい職場のあり方なのです。このような職場であれば、お母さんは自信を持って搾乳を続けられるでしょう。

気遣いのある環境

出産の前、最中、後、そして母乳育児中のお母さんは、サポートを受け、安心感を得ることが必要です。陣痛に付き添ってもらって励まされたり、分娩の渦中の緊張を和らげてもらったりすることで、出産直後からの母乳育児への準備ができるようになります[12]。保健・医療の専門家、家族や地域住民、お母さんどうしの支援グループは、お母さんの不安に耳を傾け、母乳だけで育てられる自信をお母さんがもてるようにするという方法で、力になることができます。また、家事や他の家族の世話に追われる重荷を減らす手助けを必要としていることもあるでしょう。

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生後6ヵ月間も母乳だけで育てることなんてできるの? もちろんできます!

2004mumこのことはこれまでにも、繰り返し実証されています。お母さんが母乳だけで育てる意義を理解し、そのためのサポートが得られれば、それは可能なのです。お母さんをサポートするグループでは、参加するお母さんが「母乳だけで赤ちゃんを育てる」ことができるようになるのを常に目の当たりにしています。

地域の人、ピアカウンセラー(相談に乗ってくれる仲間)、プライマリーケアのスタッフに力づけられたり、援助してもらったりすることで、より多くのお母さんが母乳だけで子育てができるようになっています。(訳注:プライマリーケア

とは、地域住民に最も近い「かかりつけ」の立場で、そのときどきで必要とされる医療・保健上のアドバイスやケアを提供すること)以下に、いくつかの事例を紹介します。

  ガンビアでは、親どうしのサポートグループのような「地域支援グループ」が、正確な情報を伝え、母乳育児サポートのための適切なスキルを使ってお母さんを援助するためのトレーニングを受けました。その結果、産後1時間以内に初めての授乳をするお母さんが増え、99.5%が生後4ヵ月間、母乳だけで赤ちゃんを育てるようになったのです。この率は、他の村ではわずか1.3%に過ぎませんでした。現在では、ガンビアの200以上の地域が、「赤ちゃんにやさしい地域」となっています。

Semega Janneh IJ et al, Health Policy and Planning, 2001(2) pages 199-205

 

  ガーナでは、さまざまな方法を使い、講習会や研修をおこなって、祖母、お父さん、メディアを含むより広い共同体に情報が提供されました。そして複数の母親どうしのサポートグループが生まれています。生後5ヵ月の時点で母乳だけで赤ちゃんを育てているお母さんの数は、2年間で44%から78%まで増加しました。

LINKAGES project Country Activities Report

www.linkagesproject.org/country/ghana.php

 

  ガーナでは、女性の経済活動を助けるために村内銀行が女性に少額ローンを設けました。その女性たちは、保健衛生と小児栄養の教育を受けました。母乳だけで赤ちゃんを育てる平均期間は1.7ヵ月から4.2ヵ月にまで延び、1歳の時点での子どもの栄養状態が改善されました。

MkNelly B and Dunford C. Freedom from Hunger Research Paper 4, 1998

 

  インドでは、保健衛生や栄養を担当する職員が工夫して、他のプライマリーケアの仕事の合間に、母乳育児について、お母さんにカウンセリングをおこなうようになりました。6ヵ月の時点で、カウンセリングを受けたお母さんでは42%が母乳だけで育てていましたが、受けなかったお母さんでは4%だけでした。

Nita Bhandari et al. The Lancet 2003; vol 361: pages 1418-23

 

  バングラデシュでは、地元のお母さんが、母乳育児をするためのピアカウンセラーとしてトレーニングを受けました。妊娠中から訪問を始め、産後5ヵ月まで合計15回の訪問をするピア・カウンセリング・プログラムです。カウンセリングを受けたお母さんは、授乳の開始が早まり、70%が生後5ヵ月間母乳だけで赤ちゃんを育てました。カウンセリングを受けなかったお母さんでは、同じ生後5ヵ月間、母乳だけで赤ちゃんを育てた割合がわずか6%でした。

Haider R et al. Lancet 2000; 356: 1643-1647

 

 メキシコでは、地元のお母さんが、家庭訪問して母乳育児の相談に乗れるようなトレーニングを受けました。家庭訪問を受けなかったお母さんで、母乳だけで赤ちゃんを育てたのは12%でした。一方、この数字は、3回の訪問を受けたお母さんでは50%に、6回の訪問を受けたお母さんでは67%に上がりました。

Ardythe Morrow et al. The Lancet 1999. Vol 353 pages 1226-31

 

 ベラルーシでは、16の「赤ちゃんにやさしい病院」で出産したお母さんの43%が、生後3ヵ月の時点で母乳だけで育てていましたが、そうでない15の病院では母乳だけのお母さんは6%しかいませんでした。Kramer MS, et al. Journal of the American Medical Association 2001; vol 285:pages 413-20

 

 ボリビア、ギニア、インド、ニカラグアでは、Save the Children やCAREといったNGOが医療・保健従事者やコミュニティ・ワーカー(地域で支援する人たち)をトレーニングすることで、祖母や父親、男性グループやお母さんどうしのサポートグループをも巻き込んで、地域の支援運動を展開しました。ギニアでは、母乳だけで赤ちゃんを育てる比率は11%から44%まで増加しました。インドでは41%から71%、ニカラグアでは10%から50%に増加しています。ボリビアでは、 ラパスの低所得地区における地域活動にサポートグループが加わると、下痢の罹患率は半分になり、生後6ヵ月未満の赤ちゃんが母乳だけで育てられる割合は75%以上にまで増えました

Save the Children final evaluation, Mandiana Prefecture, Guinea.CARE India, Nicaragua and Bolivia, Final Evaluation of Child Survival Projects, 2002 and 2003.

 

 フィリピンでは、働く女性でも母乳育児を続けられるような「赤ちゃんにやさしい」保育所が作られました。お母さんは、好きなときに立ち寄って授乳することもできるし、しぼった母乳を預けたり、乳母に授乳を頼んだりすることができます。生後6ヵ月以降の赤ちゃんのための固形の補完食は、地元の自然な材料から作られていました。

http://www.waba.org.my/whatwedo/womenandwork/wnwaboutus.htm

 

 ノルウェーとスウェーデンでは、母乳育児の割合はヨーロッパの他の地域よりはるかに高いです。 理由の1つは、保健衛生当局がお母さんの組織と相談しながら事業を進めているからです。当局はお母さんからの意見や評価によく耳を傾け、尊重し、理解を示すようにしています。

The breastfeeding investigation in year 2000. Eide I, et al. Report submittedto the Board of Health, Norway, May 2003.

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行動のためのアイデア

研究者のみなさんへ

母乳だけで赤ちゃんを育てること」が、どの程度実践されているか、そして日本では何が主な障害となっているのかを、簡単に評価してみてください。

政府関係者のみなさんへ

「世界的な運動戦略」と、「生後6ヵ月までは母乳だけでOK!」を政策と計画に組み込みましょう。

具体的には:

●保健・医療従事者のための母乳育児援助トレーニングを改善し、母乳育児に関連したグループのために講演や話し合いの場の手配を申し出ましょう。
●「母乳だけで赤ちゃんを育てること」を容易にする育児休業の立法に向けて活動しましょう。
●「母乳代用品の販売流通に関する国際規準(WHO規準)」を採択・施行するために活動しましょう。
●「母乳だけで赤ちゃんを育てること」について、全国あるいは一地方での実施率や、その調査研究があるかどうかを確認しましょう。
(このパンフレットに挙げた資料とインターネットを確認しましょう)2004action

保健・医療専門家のみなさんへ

●自分が現状を見つめなおし、最新の「知識・技能・心構え」を採り入れて、「母乳だけで赤ちゃんを育てること」を可能にするために必要なリーダーシップと技術的な支援を提供しましょう。あなたの病院が「赤ちゃんにやさしい」かどうか、「母乳育児を成功させるための10ヵ条」を実践しているかどうか、確認しましょう[10]。母乳代用品の製造業者、または販売業者からのポスターや”教材”を使用しないようにしましょう。
●あなたの職場の同僚には「世界的な運動戦略」の情報が届いているでしょうか?職場で「世界的な運動戦略」の実現をするためには、どうすればいいでしょうか?病棟のスタッフだけではなく、新生児特別治療室(Special Baby Care Units)や外来、さらには清掃員などお母さんと会話をして影響を与えそうな職員も含めた病院のスタッフと話し合いの機会を持ちましょう。
●近代的な教育を受けた助産師だけではなく、昔ながらの「お産婆さん」も、「母乳だけで赤ちゃんを育てること」や早期授乳のこと、授乳時の赤ちゃんの抱き方や乳房の含ませ方についての勉強会に招いたり最新情報に触れてもらったりしましょう。
●あなたが担当しているお母さんに、今母乳で育てているかどうか、上の子どものときはどうだったのか、つまり「母乳だけ」だったのか、混合栄養だったのか、人工栄養だったのかを尋ねてみましょう。そして、なぜそうなったのかをお母さんから教わりましょう。
●「赤ちゃんにやさしい病院」とそうでない病院の「母乳だけで赤ちゃんを育てる割合を比べましょう。
●出産前後の母親教室や外来で「母乳だけで赤ちゃんを育てること」について話し合いましょう。どのようにしたらできるようになるか、また、どのようにしたらもっと母乳が出るようになるか、 お母さんに説明しましょう。

赤ちゃんと離れて働くお母さんへ

●職場や地域で、妊娠している女性や授乳中の女性、あるいは、女性に限らず母乳育児に理解のある男性に連絡を取ってみましょう。自分の子育てや搾乳について、どのような選択をしたのか、うまくいったところや苦労したことなどの経験談を聞きましょう。
●人事担当者に対して、「母乳だけで赤ちゃんを育てること」という問題提起をし、授乳や搾乳のための休憩時間、職場内保育室、授乳室など、お母さんを外部から支援する方法について話し合いましょう。母乳育児の方針を確立しましょう。

地域のグループ、お母さんのサポートグループ、その他の団体へ

●自分たちの考えを、祖父母、赤ちゃんのお父さん、その他の男性に伝え、彼らの考えも聞いてみましょう。親どうし、祖父母どうしのサポートグループを育てましょう。支援するためのスキルを高めあい、お母さんが母乳だけで赤ちゃんを育てることができるように、よりよいサポートができるような方法を模索しましょう。
●近隣の、母乳育児相談などお母さんのケアをする場や保育園について、「母乳だけで赤ちゃんを育てる」ためにどのようにサポートしているかという観点から「採点」してみましょう。しっかりサポートしてくれる施設を公表しましょう。
●あなたのグループや「生後6ヵ月までは母乳だけでOK!」について、一般の認識を高めるキャンペーンや催し物を開催しましょう。「生後6ヵ月までは母乳だけでOK!」を推進するような楽しいプログラム(例えば、歌、寸劇、ダンス)を計画しましょう。
●生後6ヵ月間母乳だけで育てられた赤ちゃんのための卒業式を企画しましょう。きょうだい同時期の母乳育児であっても、生後6ヵ月間、母乳だけで子育てができた家族を、「生後6ヵ月までは母乳だけでOK!」の1つのモデルとして紹介しましょう。
●母乳代用品の広告がマスコミや地域の保健センターにないかどうか目を光らせましょう。これを規制する法律があるか調べましょう。
●赤ちゃんのお父さん、それ以外の家族、友人、地域から、どんなサポートを現実に受け、理想として求めているか、また、それが2004_1お母さんの選択にどのような影響を及ぼしたかを女性に尋ねましょう。
●インターネットを通じて情報を共有したり、メーリングリストを作ったりしましょう。

教育者と教師のみなさんへ

●医療、保健、生物学といった分野の教師に「生後6ヵ月までは母乳だけでOK!」について学んでもらえるようなきっかけをつくりましょう。その人たちにこのパンフレットを渡しましょう。
●学生、従業員、宗教団体、女性団体にも理解を呼びかけましょう。母乳育児を知ってもらうために、お母さんと赤ちゃんを伴って訪ねて母乳育児を見てもらい、「母乳だけで赤ちゃんを育てること」の価値と実用性を話し合いましょう。
●「生後6ヵ月までは母乳だけでOK!」を推進するポスターやちらしをデザインする際に、スタッフや学生を巻き込みましょう。そして、あなたの勤務先(大学、学校その他の教育機関)に展示したり、配布したりしましょう。

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 母乳だけで育てるには、まず、赤ちゃんが乳房をきちんと口に含んでいることが大切です

2004feed_closeup◆赤ちゃんの上唇側の乳輪は見えているが、下唇側では乳輪がより深く入った状態で見えにくい
◆赤ちゃんの口は大きく開いている
◆下唇が内側に巻き込まれていない
◆下あごが乳房に触れている

効果的に吸っているサイン
◆時々休みながら、ゆっくり深く吸う

授乳のときの適切な抱き方と赤ちゃんの位置
◆赤ちゃんの体はまっすぐ(曲げたり、ねじったりしていない)
◆赤ちゃんの顔が乳房に正面から向き合い、はじめは、赤ちゃんの鼻は、乳頭の先に触れている(目はお母さんの目を見上げている)
◆赤ちゃんの体はお母さんの体にぴったりくっついている
◆赤ちゃんの頭やお尻だけでなく全身が支えられている

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特別な状況で「母乳だけで赤ちゃんを育てる」

「母乳だけで赤ちゃんを育てること」とHIV

HIV陽性のお母さんが授乳した場合、10~20%の赤ちゃんは感染する可能性があります。しかし、そのためにお母さんが赤ちゃんに母乳を与えないという選択をしたとしても、赤ちゃんは人工栄養によるあらゆる危険にさらされることになります。それは、安全に人工乳を準備することが困難な場合、また、感染症の危険が高い場合、特に深刻です。

個別の状況に応じて、最適な乳児栄養の方法を決めるために、HIV陽性のお母さんはカウンセリングを必要とします。その後も、選択した方法を可能な限り安全に行うためには、熟練した支援が必要です。(13)

以下のような方法も、感染の危険を減らします。

●母乳だけを与えます。
●適切なテクニックを用いて授乳し、乳腺炎や乳頭痛を予防します。
●母乳育児を早めに切り上げます。持続可能で安全である代用栄養が経済的に、また現実として無理なく手に入るようになりしだい、そうでなくても生後6ヵ月ごろがいいでしょう。
お母さんが、自分がHIV陽性か陰性かがわからない場合は、「ゴールド・スタンダード」に沿って母乳育児をするのがいいでしょう。

低出生体重児(LBW:出生体重2500g未満)の場合でも、母乳だけで育てられると、発育も健康状態も、より良好になります。出生直後の数日間、赤ちゃんの状態が落ち着くまでは、母乳以外の栄養補助が必要かもしれません。(14)カルシウムやリン酸塩のようなサプリメント(栄養補助食品)は必要に応じて、母乳に合わせて与えることができます。胎内でお母さんからもらう貯蔵鉄が一般より少ないので、鉄分の補充が生後約8週目から必要かもしれません。

早産児のうち、8週間早く生まれた赤ちゃんは、乳房を吸うことができます。4週間早く生まれた赤ちゃんは、完全に乳房から栄養を取ることができます。大きな赤ちゃんと比べてより頻繁に、長い時間をかけて母乳を飲む必要があるかもしれません。赤ちゃんが乳房から直接飲むだけでは不十分な場合、お母さんが搾乳してその母乳をコップであげることもできます。(訳注:これをカップ・フィーディングといいます)搾乳とカップ・フィーディングを学んだお母さんが、他のお母さんに非常に上手に教えたり、助けたりすることもよくあります。

日光を浴びない赤ちゃんの場合は、ビタミンDを与えることで、クル病(ビタミンDの欠乏により骨が弱くなる病気)を予防する効果が得られるかもしれません。(3)

参考文献

1. WHO/UNICEF Global Strategy for Infant and Young Child Feeding. 2002
World Health Organization, Geneva
2. The optimal duration of exclusive breastfeeding: A systematic review.
2001 World Health Organization, Geneva WHO/FCH/CAH/01.23, and WHO/NHD/01.08
3. Butte NF, Lopez-Alarcon MG, Garza C. Nutritional adequacy of exclusive
breastfeeding for the term infant during the first 6 months of life. 2002
World Health Organization, Geneva
4. Indicators for assessing breastfeeding practices. World Health Organisation,
Geneva WHO/CDD/SER/91.14
5. Hanson LA, Human milk and host defence: immediate and long-term effects.
Acta Pediatrica 1999; 88:42-6
6. Leon-Cava, Natalia. Quantifying the benefits of breastfeeding: A summary
of the evidence. 2002 The LINKAGES Project, Academy for Educational Development
7. Prentice A. Constituents of human milk. Food and Nutrition Bulletin
1996; 17(4). 305-312
8. Martines J, Rae M, de Zoysa I. Breastfeeding in the first six months.
No need for extra fluids. British Medical Journal 1992 (304):1068-1069
9. Labbok M. The lactational amenorrhoea method (LAM). A postpartum introductory
family planning method with policy and programme implications. Advances
in Contraception, 1994, 10(2):93-109
10. Evidence for the Ten Steps to Successful Breastfeeding. Division of
Child Health and Development, World Health Organization WHO/CHD/98.9
11. Woolridge MW. The “anatomy” of infant sucking. Midwifery
1986, pages 164-171
12. Kroeger,M. Impact of birthing practices on breastfeeding: protecting
the mother and baby continuum. 2004 Jones and Bartlett
13. Coutsoudis A, Pillay K, Kuhn L. Spooner E, Tsai Wei-Yann and Coovadia
HM for the South African Vitamin A Study Group. Method of feeding and transmission
of HIV-1 from mothers to children by 15 months of age: prospective cohort
study from Durban, South Africa. AIDS 2001; 15:379-387
14. Hypoglycaemia of the newborn: A review of the literature. World Health
Organization, Division of Child Health and Development. WHO/CHD/97.1

医療・保健従事者、地域やお母さんのサポートグループのための情報源―困ったときはこちらへ

WHO/UNICEF Breastfeeding Counselling: a training course. WHO/CDR/93.3-6
World Health Organization training course materials and technical documents   and
LINKAGES ToT for mother support groups  (pdfファイル)
La Leche League International: useful information on many practical aspects
of breastfeeding      ラ・レーチェ・リーグ日本
Breastfeeding Women at Work
unicef_logo「母乳だけで赤ちゃんを育てること」に関する情報や支援をさらに詳しく知りたい方は、地域のユニセフ事務所や委員会にご連絡ください。詳細はユニセフのウェブサイトをご覧ください。<www.unisef.org/infobycountry/index.html>

その他母乳育児については、<www.unicef.org/nutrition/index_action.html>をご参照ください。

waba_logo世界母乳育児行動連盟(WABA)は、母乳育児を保護・推進・支援する個人と組織の世界的なネットワークです。WABAの活動は、「イノチェンティ宣言」、「すばらしい未来を作り出すための10のリンク(連結)」、「乳幼児の栄養に関する世界的な運動戦略」に基づいています。中心となる仲間は、国際乳児用食品行動ネットワーク(IBFAN)、ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル(LLLI)、国際ラクテーション・コンサルタント協会(ILCA)、Wellstart  Internationalウエル・スタート・インターナショナル、母乳育児医学アカデミー(ABM)、LINKAGES(アメリカの国際開発局の乳幼児栄養改善に関するプロジェクト)です。WABAは、ユニセフ(国連児童基金)の諮問資格を有し、また国連経済社会理事会(ECOSOC)の特殊協議資格を持つNGOです。2004babydrum

WABAはいかなる形でも、母乳代用品、関連する器具や母乳育児中の母親に対する商業的な食品、商業的な補完食(離乳食)を生産、販売流通する企業からの資金援助や寄贈はお断りしています。WABAは世界母乳週間の参加者全員が、この倫理上の立場に従い、これに敬意を払ってくださるようお願いしています。

このプロジェクトはオランダ外務省(DGIS)の資金提供とユニセフの支援を受けています。しかし、このパンフレットの内容は必ずしも両者の方針や見解を反映しているわけではありません。

「グローバル化」時代の母乳育児:平和と公正のために WABA2003

Index
「グローバル化」時代の母乳育児:平和と公正のために
wbw2003乗り越えるべき課題は何でしょう?
貿易協定
不適切な販売流通
非常事態における乳児の食べ物
環境
HIV/AIDS
遺伝子組み換え食品
だれが「WHO規準」を法制化してきたのでしょう?
「グローバル化」によって生み出されるチャンスとは?
行動するための手段
活動中の母乳育児運動
ネットワークと情報源
情報源


乳育児は、平和と公正のシンボルです。

母乳育児は自然に、普遍的に、平和に子どもを育てる方法なのです。不公正や暴力や戦争で世界が苦しめられているとき、母乳育児が平和の監視員になることができるのです。内なる平和や他の人との平和、環境との平和の。

アンウォー・フェーザル WABAとIBFANの共同設立者「ライト・ライブリフッド賞」受賞者

訳注「ライト・ライブリフッド賞」:「もう一つのノーベル賞」「暮らしのノーベル賞」ともいわれ、人権、平和、環境などで優れた市民活動に対して贈られる。

「グローバル化」とは、遠く離れた場所と場所との社会的なつながりが世界規模で強められること、と定義されてきました。例えば、地域で起こることが、何マイルも離れたできごとに影響を受けていることや、逆に、地域でのできごとが、何マイルも離れたところへ影響を与えるといったことを意味します。

ジュディス・リヒター 『企業に責任を問い続けて』

乳幼児を母乳で育て、母乳に加えて(半年から)適切な母乳を補う食べ物(離乳食)を与えることを保護し、推進し、支援することは、「グローバルな」母乳育児運動の目的です。

2003年の世界母乳育児週間(WBW)のテーマ――「グローバル化」時代の母乳育児:平和と公正のために―― は平和と公正のシンボルとして母乳育児を推進するにあたって、「グローバル化」の利点とそれによって引きおこされる障害について考えてみるよい機会を提供することでしょう。

全世界を通じた自由経済の流れと自由貿易の規制を一致させることを強調している言葉として、「グローバル化」という言葉は近年しばしば使用されています。大企業と金融市場に力を得て、「グローバル化」は最大限の利益を得る手段となりました。このような状況で、国家の主権者の利益に通商条約と多国籍企業の経済利益がしばしば先行する場所において、お母さんと子どものニーズはたやすく脅かされてしまいます。世界的な規制緩和と保健医療の民営化の広がりは人間よりも利益を優先させます。この状況では、母乳代用品の使用が一般的だとみなされることが広まり、母乳育児にやさしい実践は失われかねません。

しかしながら「グローバル化」は別の面を持っており、母乳育児の文化を強めたり、わが子を慈しみ育てるための、この根源的できわめて重要な行為(すなわち母乳育児)を保護したりするために使われることもできるのです。母乳育児のための私たちの活動は、よりよい世界を作り出すことをめざしています。つまり、お母さんと子どもにとっても、環境にとってもよりやさしく、公平ですべての人びとと平和に暮らせる世界をめざしているのです。インターネットや電子メールのお陰で私たちの組織と組織、企画と企画、連盟との連携、団体と団体といった行動のネットワークを即座に利用することができるようになったため、母乳育児の共同体が地球規模でつながるようになってきました。こうしたネットワークにより、お母さん、両親、女性グループ、保健医療従事者、さまざまな機関、環境保護のネットワークは母乳育児を通して乳幼児の健康がきちんと保護されるように、新しく創造的なやり方をみつけています。

このパンフレットには、あなたやあなたが行動を共にしているグループで世界母乳育児週間2003年の目標達成を可能にするための情報が含まれています。

それらは以下の通りです。

●母乳育児の実践に対する「グローバル化」の乗り越えるべき課題と(「グローバル化」による母乳育児推進の)チャンスを認識すること。
●母乳育児と(母乳を続けながら)適切な母乳を補う食べ物(離乳食)を与える重要性、および人工乳の健康に対するリスクを人びとに教えるために、「グローバルな」コミュニケーションの可能性を最大に生かすこと。
●「乳幼児の栄養に関するグローバルな運動戦略」を推進し、行動すること。
●「母乳代用品の販売流通に関する国際規準(「WHO規準」)と世界保健総会での関連決議」の弱体化を予防すること。
●世界中のすべての人びとの「グローバルな」公正、平和、健康のために奮闘し、公共の利益を求めるグループと連帯を築きあげること。
●「グローバルな」視野に立ちながら、母乳育児を保護、推進、支援するために、私たちの世界的な母乳育児の共同体のすべての部門を巻き込んで、それぞれの地域で活動すること。

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乗り越えるべき課題は何でしょう?

  自由貿易か公正貿易*か

訳注「公正貿易」とは、国際的な貿易をより平等にするためにおこなわれる、対話と透明性、敬意に基づく貿易のパートナーシップ。特に「南」の弱い立場にある生産者や労働者の権利を保障し、よりよい条件で取引することで、持続可能な開発を支える

 

●母乳育児を弱体化させる乳児用人工栄養製品の市場を規制する国内法の採用を、自由貿易は阻むべきではありません。
●母乳育児、その土地固有の食物、遺伝子操作された食品の原材料、乳児用食品のラベル、そして食品安全性の基準といった事柄についての国家の乳児栄養の政策を発展させ、施行することを政府が阻む口実に、貿易協定は使われるべきではありません。

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公共の医療や栄養のサービスの民営化

●世界的に公共の保健・医療ケアの財源は縮小されており、質の高いサービスを提供する力は弱まっています。このことは、特にお母さんと子どもたちに顕著です。
●政府は国民に対し、確実に保健・医療ケアを提供する責任を放棄しつつあります。
●企業が国連の威光を無差別に利用し、非倫理的な振る舞いから人びとの目をそらせ、そしてまた、国連機関との不適切な連携を通して、特に国連「グローバル・コンパクト」を通して、政策決定の役割を担うかもしれません。

訳注「グローバル・コンパクト」とは、グローバリゼーションの恩恵を、幸運な少数の人びとだけではなく、すべての人びとが享受できるように企業が行動することを支援するために設けられた国連主導のプロジェクト。1999年1月、アナン国連事務総長(当時)が提唱し、翌年2000年7月にニューヨークの国連本部で正式に発足し、すでに世界の数百の有力企業が参加しています。このプロジェクトに参加する企業は、国連が提唱する人権、労働基準、環境の3分野の合わせて9つの普遍的な原則を支持し、実践することを通じて、世界規模での持続可能な経済成長を実現する努力が求められます。

http://www.unic.or.jp/globalcomp/glo_01.htm(現在リンク切れ2013/06/18)

●「赤ちゃんにやさしい病院運動」のような母乳育児を推進する公衆衛生計画や運動は、もはや十分な支援を受けていません。
●民間の保健・医療ケアを買う余裕のある富める人と貧しい人の差が広がっています。これは、貧しい地域の女性と子どもに、特に影響を及ぼしています。

貿易協定

 赤ちゃんを含む消費者を保護する保健政策を国家が制定する場合、世界貿易機構の管理下での国家間の貿易協定は、時に障害と見えることがあります。 例えば、カナダの健康福祉局の代表者は「母乳代用品の販売流通に関する国際規準(WHO規準)」がアメリカと結んだ「北米自由貿易協定(NAFTA)」に取って代わられると忠告したことがあります。“人工乳メーカーが市場で完全に自由競争できる権利の拘束”というように、この「WHO規準」は理解されていたのです。

  このような観点は、しかしながら根拠のないものです。「国際規準(WHO規準)資料センター」によると、この「WHO 規準」とこれを実行するための各国の国内法は世界貿易機構やNAFTAのような地域の通商条約を侵害しません。貿易協定は「類似品」を製造するすべての企業に対して、平等な競争条件を提供することで、貿易上の障壁を取り除くことを目的とするものです。とりわけ、消費者の健康を守るために設定された、妥当な国際的な規準(例えば「WHO規準」)に従って、法律上成立可能な規制を、国が受け入れることは可能です。

カナダで用いられているような相対する議論の中で、2つの重要な事実が考慮されねばなりません。

●母乳は乳児用の人工乳や他の乳児用食品の「類似品」ではありません。
●政府は消費者の健康を保護するために通商協定を棚上げすることが可能です。

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不適切な販売流通

(外からの力で)適切に母乳を得られないために、毎日3000人から4000人の乳児が死亡しています。

故ジェームス・グラント UNICEF事務局長

 母乳代用品の販売流通に関する国際規準(WHO 規準)」「が承認された22年前から、めざましい進歩はありましたが、多くの製造業者は人工栄養の製品の宣伝攻勢を続けています。母乳代用品は“母乳と栄養は同じ”と宣伝されたり、ラベルに“より消化しやすい”、“栄養の専門家のおすすめ”、“今までよりもっと母乳に近づきました”などと大言壮語されています。無料の試供品が妊娠中の女性や赤ちゃんを産んだばかりのお母さんに医師の診療所で配られたり、製品の情報やクーポンが赤ちゃんを産んだばかりのお母さんに当たり前のように郵送されたりしています。

このようなやり方は特に途上国で破壊的な影響をもたらしています。例えば、人工乳の企業が、無料の乳児用人工乳を産科施設で当たり前のように配ることが、母乳育児を続ける期間を短くしてしまっています。これは、いろいろな意味で、赤ちゃんと家族の健康にひどい悪影響を与えます。

●新生児に哺乳びんを使用すると、乳頭混乱が生じ、乳房を吸うことができにくくなり、母乳育児がうまくいかなくなる可能性が高くなります。その赤ちゃんは、人工乳に頼ることになります。

●お母さんと赤ちゃんが退院すると、人工乳は無料ではありません。家に帰ると両親は人工乳を買わなければなりませんが、その出費は家族の収入の50%以上を占めます。その結果、赤ちゃん用の人工乳は多くの場合なるべく買わなくてもすむようにと過剰に薄められ、栄養不良の原因となるのです。

●人工乳に対する支出は家族全員に影響します。もともと貧しかったのがもっと貧しくなって、家族全員の栄養不良のリスクを高めます。

●哺乳びんで子どもを育てると、母乳がもたらす免疫面の恩恵もなく、しかも、安全とはいえない水を使って非衛生的に調乳することになります。だから哺乳びんで育てられた子どもは、母乳で育てられた子どもに比べると25倍も下痢やその他の疾患で死亡しやすいという結果になってしまうのです。

●毎年150万人の子どもが母乳育児されないために死亡していると、世界保健機関(WHO)は推定しています。

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非常事態における乳児の食べ物

21世紀の「グローバル化」された世界において、非常事態はよりいっそう珍しいことではなくなっています。 気候の変化によって洪水や砂漠化が起こったり、貧困や戦争が増えたりして、公民権を奪われるお母さんや子どもはますます増えていくでしょう。このような状況で、母乳育児は決定的に重要です。母乳育児は赤ちゃんの命を救います。母乳は完全無欠の栄養を赤ちゃんに与え、さらに、抗感染物質が、非常事態で流行する可能性がある下痢や呼吸器感染から赤ちゃんを守ります。それに反して、人工栄養はそのような状況では危険であり、栄養不良、疾病、乳児死亡のリスクを高めます。母乳育児をすることで、お母さんも子どもも慰められ、心の支えが得られます。ですから、母乳育児はいつでも保護していく必要があります。非常事態や人道的援助が必要とされる状況で、母乳育児に関してよくいわれる神話がありますが、それらの誤りを検証することが重要です。

神話1―ストレスは母乳を干上がらせる

極度のストレスや恐怖がお母さんの母乳の流れを少しの間止めることがあっても、その反応は通常、一時的なものです。母乳育児をすると、お母さんと子どもを落ち着かせ、実際に緊張を和らげるようなホルモンが産出されるという医学的根拠(エビデンス)が証明されつつあります。

神話2―栄養不良の母親は母乳育児ができない

非常事態では、食べ物は授乳中の母親に配られるべきです。なぜなら、赤ちゃんを母乳で育てるのに加えて、年長の子どもたちや子ども以外の家族を世話するために元気でいつづける必要があるからです。母体が深刻な栄養失調にかかっている場合のみ、母乳の産出が減ります。そのようなまれなケースでは、母体の栄養状況が改善するまで、乳児に母乳以外のものを補足的に与えてもいいでしょう。

神話3―下痢の赤ちゃんには水かお茶が必要

母乳で育てられていて、極度に下痢をしている赤ちゃんで、脱水の所見がある場合は、経口哺液が必要です。しかし、母乳育児は止めたり、減らしたりされるべきではありません。非常事態では水は多くの場合汚染されているので、注意が必要です。

神話4―一度母乳育児を止めてしまったら、再開できない

適切なリラクテーション(母乳復帰)の技術を用いれば、お母さんが母乳育児を再開することは可能です。母乳復帰をすれば、非常事態において、生命を救う栄養と免疫面での恩恵が得られます。

 資料:BFHI ニュース、ユニセフ 1999年9月/10月

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環境

炭坑に連れていくカナリアが死ぬと、炭坑自体が人体に致命的に汚染されていると知らせているのと同じく、母乳の中に汚染物質が発見されたということは、すべての人の体が化学物質で汚染されているという警告を私たちに告げているのです。

2002年11月 「子どもたちへの健康的な環境に向かって」から抜粋

 母乳育児は環境にやさしく、乳児に完全な最初の食べ物を与える、世界で最も貴重な「再生可能な自然資源」の1つです。けれども、他のほとんどの自然資源のように、母乳も化学物質で汚染されています。しかし母乳の汚染度が最高の地域であったとしても、人工乳に関連する健康へのリスクは全体としてより高いのです。毒物を心配している人びとは、鉛、アルミニウム、カルシウム、水銀のような重金属、農薬や化学肥料の残留化学物質、そして、ホルモンかく乱物質といったものすべてが人工乳の中に見つかってきていることを心にとめておくべきでしょう。加えて、(人工乳を作る)工場での汚染や細菌の汚染が原因で、市場から乳児用人工乳の欠陥品回収が定期的におこなわれています。

この貴重な資源を保護するために、他の残留有機汚染物質(POPs)と農薬の使用を減らす「グローバルな」運動を私たちは支持しなければなりません。この運動の見本として、残留有機汚染物質に関するストックホルム条約とILOの農業に関する安全衛生条約(第184号)があります。

 HIV/AIDS

「乳児の適切な栄養の実践」を推進するにあたって、乗り越えるべき課題はいくつかありますが、その中で最も難しい問題の1つが、HIV/AIDSの世界的流行です。 対応としては、例えばHIV陽性のお母さんの赤ちゃんのための、母乳銀行を増やすことといった実行可能な運動があげられます。加えて、いくつかの研究で示されていることですが、完全母乳で育てることで、人工乳で育てられた赤ちゃんの水準まで感染のリスクを減らすことができることもわかっています。

HIV感染がハイリスクであるいくつかの環境では、乳児が母乳で育てられていない場合、生後2ヵ月の間に感染症で死亡するリスクが6倍にもなることが、WHOの総説*で示されています。そのような乳児は、完全母乳の子どもより、14倍下痢で死亡しやすく、3倍急性呼吸器感染症で死亡しやすいのです。このような環境において、HIV感染を減らすために乳児の人工栄養を推進することは、乳児の罹病率、死亡率、栄養不良を結局増加させることになるかもしれません。

 *注:WHO 乳児死亡予防のための母乳育児の役割についての共同研究チーム

 

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遺伝子組み換え食品

 哺乳びんで育てられている赤ちゃんが遺伝子組換え乳児用人工乳を与えられた場合、遺伝子操作された食品の規制と試験体制が不十分なため栄養不足に陥る可能性があります。

英国遺伝子組換え食品に関する英国学士院ワーキンググループ

 多くの国の規制のゆるい表示法は、消費者が知らないところで企業が人工乳や他の乳児用食品に遺伝子組み換え有機物を使うことを許しています。挿入された遺伝子は植物の自然な成長や発達を妨げ、予想されたのと異なるように作用する可能性があります。その結果、遺伝子操作された食物には、人間の健康に害を及ぼす恐れのある予期しない影響が現れるかもしれません。ある生物から別の生物に毒性やアレルゲン(アレルギーを引きおこす抗原)が移る可能性もありますし、遺伝子組み換え食品を通じて抗生剤に耐性が生まれて抗生剤が効かなくなったり、遺伝子操作が食べ物の栄養価を下げたりする不安もあります。このようなリスクのため、乳児用食品は遺伝子組み換え生物を使わないようにしなければいけないのです。このような結果がすべて分かっているわけではないのに、遺伝子組み換え食品を人間の乳児に試みることは正しいことでしょうか?

 

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どの国が「WHO規準」を法制化してきたのでしょう?

包括的な法律、法令、法律的に強制力をもった政策として「母乳代用品の販売流通に関する国際規準(WHO規準)と世界保健総会の関連決議」の大部分を施行している国は、この地図のとおりです。

資料:IBFAN/国際規準(WHO規準)資料センター(ICDC)

wbw2003_2

「グローバル化」によって生み出されるチャンスとは?

「グローバルな」コミュニケーションの改善は、世界的な対話、ネットワーク、行動の機会を提供します。 21世紀において、実行可能な解決策を作り出しながら、人々を結びつけるために役に立つようなこれらのしくみを利用し、「グローバル化」に伴う課題を解決するために努力する方法を見つけ出す必要があります。世界的な母乳育児の活動家が共に活動することで国際的にも地域の共同体へも、よい影響を与えることができます。つまり、組織の中でも、個人的にも影響を与え、女性が母乳育児をおこない、子どもに理想的なケアをすることが可能になるのです。

 

行動のためのアイデア

●一般的な問題や課題に取り組む母乳育児の運動家の間で世界的な協力を増進しましょう。
●平和と公正のために働く市民団体組織の中で、母乳育児の重要性を強調しましょう。
●母乳育児を推進し保護する世界中の人々をつなぐ、効果的で、低コストの通信手段を利用しましょう。
●HIVの流行に直面し、乳児の栄養法の決定をしなければならないお母さんに正確な情報を提供するための独立した研究を、私たちが団体で求めることもできます。
●乳児栄養食品の表示法や販売流通を規制したり調整したりするための健全な政策を確立するよう、政府を説得するために世界的なネットワークを利用しましょう。

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行動のためのアイデア

「グローバル化」においては、いろいろな規則が優先されて健康目標は、ないがしろにされるかのように見えるかもしれませんが、よりよい世界のための平和と公正を勝ち取るために、(「グローバル化」の)手段と枠組みを使うことができるのです。過去20年の間に、母乳育児を支援するようなさまざまな法的手段、技術的資料、戦略やガイドラインが採用され、母乳育児の支援者が活動できるような地球規模でのネットワークが形成されました。「グローバル化」に直面しても、これらの文書は母乳育児の文化を創り出すために用いることができます。

「母乳代用品の販売流通に関する国際規準(WHO 規準)と世界保健総会の関連決議」(www.who.org)は人工食品製品の販売流通を規制し、母乳育児を妨げないために、乳児用食品会社や保健・医療制度や政府が最低限、守らなければならない条件を定めています。

やってみましょう! 医療従事者に「WHO規準」の重要性と、どのように実行するのかを教えてあげましょう。乳児食品の広告と宣伝を監視するのを手伝いましょう。政府がこれらの製品の販売流通を規制するように助けましょう。(3ページの地図を参照ください)

「赤ちゃんにやさしい病院運動」(www.unicef.org/programme/breastfeeding/baby.htm)を進めていけば、すべての産科施設は必ず地域の母乳育児支援の中心的存在となることでしょう。無料や低価格の母乳代用品を受け入れず、哺乳びんや乳首を使わず、 「母乳育児成功のための10ヵ条」を実行すれば、病院は“赤ちゃんにやさしい”と認定されることができます。

やってみましょう! 地域の病院や出産センターが“赤ちゃんにやさしい”と認定されるよう育て、力づけるために、国の母乳育児の連盟や組織と一緒に活動しましょう。医療従事者の養成や医療施設の認定に関しては国際ラクテーション・コンサルタント協会(ILCA)とともに協力して活動しましょう。

「乳幼児の栄養に関するグローバルな運動戦略」(www.who.org)は、政府に対し「WHO規準」を支持するように求めています。また、生後6ヵ月間母乳だけで赤ちゃんを育て、その後は安全で栄養豊富な、母乳を補う食事(離乳食)をあげながら2歳以上母乳育児を続けることを推進することで、栄養不良や太りすぎの問題に対処するように求めています。

やってみましょう! この「グローバルな運動戦略」の勧告の実施を保障するように地域や県の関係政府機関に手紙を書きましょう。完全母乳育児の割合を増すためにILCAの専門知識と資源を活用しましょう。

「子どもの権利条約」(www.unicef.org)は、歴史上最も普遍的に受け入れられている人権文書です。合衆国とソマリア、ティモールを除いた世界中の国で批准されています。

やってみましょう! 学校や支援団体を通じてお母さんと子どもに“子どもの権利”を教えましょう。「子どもの権利条約」の基本理念が擁護されるべきことを、当局に強く主張しましょう。

訳注 子どもの権利条約 (Convention of Rights of Children,CRC)

1989年国連総会において採択され、2003年7月現在192の国と地域が締結している。日本は1994年に批准。子どもの権利条約第24条では子どもには到達可能な最高水準の健康を享受する権利があること、社会構成員特に親子は子どもの健康および栄養の基礎的知識、母乳育児についての情報・教育にアクセスする機会が確保されるべきであるとされている。 www.unucef.or.jp/kemri/joyaku.htm

「ILOの母性保護条約」(ILO, www.ilo.org/)は働く女性の妊娠・出産・授乳に関する権利を、職場で保護するための具体的な勧告を含んでいます。

やってみましょう! 組合や企業のニュースレター、お母さんや保健・医療従事者や雇用主との対話を通じて、雇用主や組合の責任者、医療従事者やお母さんに「ILOの母性保護条約」について教えましょう

訳注 ILO(国際労働機関)の母性保護に関する第183号条約

2000年のILO総会で改正された女性保護に関する条約。改正点には、出産に伴う休暇を14週に引き上げること、出産に伴う休暇の後に元の職に復帰する権利を女性が有すること、女性が授乳中である場合の労働時間短縮とそれに対する相応の報酬を求める権利を認めることなどが含まれている。日本は改正案の採択を棄権し、条約の批准も行っていない。

「女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女性差別撤廃条約)」(www.un.org/womenwatch/daw) は、妊娠・出産・授乳に関して女性が自分で決定する権利(リプロダクティブ・ライツ)を確約する唯一の人権協定です。したがって、女性の妊娠・出産・授乳に関する権利を保護するための重要な手助けになります。

やってみましょう! 母乳育児中や妊娠中の差別から女性を保護することを政府に働きかける道具として、この条約を使いましょう。

「FAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス委員会)」(www.codexalimen-tarius.net/)は、乳児用食品も含めた食品の基準を定めるWHO/FAO の合同計画です。(注 FAO:国連食糧農業機関Food and Agriculture Organization of the United Nations)食品の公正な貿易を保障し、消費者の健康を保護するためのものです。しかしながら、この委員会は食品企業に強く影響されています。

やってみましょう! 「WHO規準と世界保健会議の関連決議」を乳児用人工乳と補完食(離乳食)の基準に組み込むようコーデックス委員会に参加する政府と非政府組織に働きかけましょう。

「ミレニアム開発目標」(www.undp.org/mdg)は「国連開発計画」(UNDP)の貧困削減と生活改善のための議題です。

 訳注「ミレニアム開発目標」(Millenium Development Goals, MDGs)は2000年の国連サミットで採択された極度の貧困を根絶するための行動計画。MDGsは、8つの目標からなり、貧困、飢餓、病気、非識字、環境悪化、女性差別などの課題に立ち向かうことを謳っている。

www.undp.or.jp/arborescence/index2.html

やってみましょう! 子どもの死亡率の減少、母親の健康状態の改善、ジェンダー(社会的な性別)の平等、女性への力づけ(エンパワー)により、多くの「ミレニアム開発目標」が達成できます。そのためには、母乳育児が重要な役割を果たすことについて、共同体や政治の責任者に教えましょう。

「母親が母親を支援するサポートグループ」(www.lalecheleague.org)は、お母さんが情報を分かち合い、支援するために協力するといった普遍的な方法です。

やってみましょう! 共同体で妊娠中の女性や新しいお母さんのための支援グループを組織しましょう。はじめて母親になった女性が地域の母親が母親を支援するサポートグループに連絡を取るのを手助けしましょう。

 

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 活動中の母乳育児運動 ネスレ ボイコット(不買運動)

「ネスレ ボイコット」は、計画された消費者運動の中で最も成功したものの1つです。ターゲットのネスレは、世界で最も大きな乳児用食品企業で、乳児用人工食品について言語道断の宣伝をしています。ネスレは恒常的に以下のことをおこなっています。

●お母さんに人工乳児用食品の情報を与えるのを推進し、母乳育児を阻止しています。
●医療機関に無料のサンプルや供給品を寄付しています。
●保健・医療従事者に自社製品を宣伝するよう仕向けています。
●母乳育児の利点と人工乳の危険性をラベルに明確に記載していません。いくつかのケースでは、ラベルはお母さんが理解できないような言葉で書かれています。

ネスレが「WHO規準」の軽視を続けているため、20ヵ国で、ネスレ製品の消費者不買運動が続いています。この不買運動はネスレが「WHO規準と世界保健総会の関連決議」を会社の方針でも、販売流通の現場でも、完全に遵守するまで続くでしょう。不買運動についての詳しい情報は、www.babymilkaction.org.まで。

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ネットワークと情報源

World Alliance for Breastfeeding Action

世界母乳育児行動連盟 (WABA) www.waba.org.my
International Baby Food Action Network
国際乳児用食品行動ネットワーク(IBFAN) www.ibfan.org
La Leche League International
ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル(LLLI) www.lalecheleague.org
ラ・レーチェ・リーグ日本(LLL日本) www.llljapan.org
International Lactation Consultant Association
国際ラクテーション・コンサルタント協会(ILCA) www.ilca.org
日本ラクテーション・コンサルタント協会(JALC) www.jalc-net.jp
Academy of Breastfeeding Medicine
母乳育児医学アカデミー(ABM)  www.bfmed.org

「企業との癒着のない国連を求める連盟」(www.corpwatch.org)は国際組織の集まりでIBFANも含まれています。この連盟は国連機関が、「母乳代用品の販売流通に関する国際規準(WHO規準)」といった、国連の目的や基本理念に反するような企業と手を組まないことを確実にするために結成されました。

「グローバル化に関する国際フォーラム」(www.ifg.org)は、60人の主要な活動家、学者、経済学者、研究者、ライターが新しい考え方や、共同活動、経済の「グローバル化」に対応した公共教育を促すために結成されたものです。

「ピープルズ・ヘルス」(大衆健康)運動(http://phmovement.org) は、健康は社会的、経済的、政治的課題でありすべての基本的人権の上位に置かれると信じています。

この運動は母乳育児文化を支援しています。お近くの「ピープルズ・ヘルス」(大衆健康)運動団体と連携するために、ウェブサイトを訪問しましょう。

この運動は、すべての人の健康に関するアラム・アタ宣言25周年を記念したものです。一緒に運動に参加しましょう。

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情報源

‘We the People’ or ‘We the Corporations’?, 『(仮題)私たちは市民か企業か?』Judith Richter, IBFAN/GIFA, 2003

Alternatives to Economic Globalisation (A Better World is Possible), 『(仮題)経済のグローバル化への代替手段 (よりよい世界は可能です)』The International Forum on Globalisation, Berrett-Koehler Publishers, Inc, November 2002

Holding Corporations Accountable: Corporate Conduct, International Codes and Citizen Action, 『(仮題)企業に責任を問い続けて:企業経営:国際規準と市民活動』Judith Richter, Zed Books, 2001

waba_logo世界母乳育児行動連盟(WABA)は、「イノチェンティ宣言」と「乳幼児の栄養に関するグローバルな運動戦略」に基づき、母乳育児を保護・推進・支援する個人、ネットワーク、さまざまな組織の「グローバルな」連盟です。中心となる仲間は、国際乳児用食品行動ネットワーク(IBFAN)、ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル(LLLI)、国際ラクテーション・コンサルタント協会(ILCA)、Wellstart Internationalウエル・スタート・インターナショナル、母乳育児医学アカデミー(ABM)です。

WABAはいかなる形でも、母乳代用品、関連する器具や補完食(離乳食)を生産する企業からの支援はお断りしています。WABAは世界母乳週間の参加者全員が、この倫理上の立場に従い、これに敬意を払ってくださるようお願いしています。

国際規準違反報告フォーム

母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」の違反を日本語で報告できます。乳児用食品国際行動ネットワーク(IBFAN)のメンバーグループである母乳育児支援ネットワークの有志が英語に訳してIBFANに届けます。

アイコンまたはこちらをクリックすると「国際規準」違反を報告できるフォームが開きます。ご協力をお願いいたします。

 

最初は母乳だけ、その後も他の食べ物を補いながら母乳を与え続ける。金色のリボンは、 その「ゴールド スタンダード」、つまり理想のありようの象徴です。

WABA(世界母乳育児行動連盟)とユニセフが共同で提唱している「金色のリボン運動」に参加しています。

Facebook 母と子の育児支援ネットワーク(災害時の母と子の育児支援 共同特別委員会)

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