温泉マークを含むJIS Z8210「案内用図記号」の改正について(案)に対する意見を提出しました。
(pdf文書はリンクからDLできます)
私達、母乳育児支援ネットワーク(BSNJapan)はWABA(母乳育児支援行動連盟)を日本で紹介し、日本での母乳育児を支援する活動を行うことを目的として2000年に設立された非営利団体です。 WABAの支援団体として登録されています。https://bonyuikuji.net/
今回の提案の5.1.32ベビーケアルームの図記号の提案に関し、母乳育児支援ネットワーク(BSN)では以下の三点が問題であると考えています。
(1) 男女ともが安全に調乳できる調乳室と女性が母乳を与えるための授乳室のニーズの違いが反映されていません
男性も育児に参加することがますます期待されている昨今、男性も調乳がしやすい調乳室や調乳設備が整備されることは、育児をしやすい社会に向けて必要なことです。しかし、母乳を安心してあげられる場所がないために外出を控えたり、やむなくトイレで授乳している母親が多いのも現実です。単に授乳ができる設備では、授乳期のお母さんのニーズに十分に応えることはできません。図記号でも、母親が安心して母乳を与えられる授乳室をわかりやすく表示するものが求められていますが、今回の図記号はその点があいまいです。
(2)国際的にも母乳育児の意義は再評価されています。
災害の多い日本では、赤ちゃんを安心して育てるための自助として母乳育児に注目が集まっており、母乳で育てることを尊重する社会が求められています。日本では、WHOが推奨する「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」(各国に粉ミルクメーカーの母乳よりも粉ミルクがいいと思わせるような販売促進を規制する法制度の整備を求めるもの)への対応が遅れているため、哺乳瓶が気軽に赤ちゃんの世話に関わるマークとして使われていますが、海外では粉ミルクを勧めるような表示は厳しく制限されている国もあります。粉ミルクを与えることと母乳を与えることを哺乳瓶で包括的に示すことは不適切だと考えます。
(3)検討委員会に子育ての代表者が入っていません
今回の外国人にも理解されやすい案内用の図記号を検討する委員会には現役の子育て世代を代表する委員に子育て支援を行っている団体の代表が入っていません。このマークについて検討段階で関係者に十分に意見聴取をした様子は議事録からは読み取れません。また視認性試験・理解度試験*1の対象には日本人(高齢者、障害者を含む)とされていますが、子育て中の人は含まれていません。当事者の声が十分に反映されていない今回の案には賛成できません。
母乳育児支援ネットワーク(BSN)からの提案
子育て中の母親が最も必要としているのは安心して母乳が与えられる授乳設備であること、また、今回の検討がオリンピック・パラリンピックの開催を契機として日本に来る外国人でもわかりやすい案内用図記号の検討であることを考えると、国際的に定着してきている下記のマークをお母さんが安心して母乳を与えられるスペースを示す図記号として採用していただくことを提案します。
雑誌Motheringの公募によるマーク JALCが提唱するマーク
海外では、雑誌Motheringで募集したお母さんと子どものマークを女性が安心して授乳できるスペースを示すものとして使おうという流れがあり、昨年の世界母乳育児週間*1のポスターにも使われました。また日本でも多くの専門家団体が母と子をモチーフとした授乳室のマークを提唱しています。このマークは日本未熟児新生児学会、日本母乳哺育学会、日本母乳の会、日本ラクテーション・コンサルタント協会、日本児童家庭文化協会にも全面的に支持されています。
お母さんが安心して赤ちゃんに母乳を与えられる場所がすぐにわかるような図記号が日本でも必要です。日本でもこのような図記号が普及するよう検討が必要です。
* 毎年8月1日から7日は世界母乳育児週間として、母乳育児の価値を尊重し、お母さんにやさしい社会をめざそうという目標を持って様々な取り組みが世界中で行われています。1992年からユニセフ、WHOと乳幼児栄養に関する支援を行う国際NGOが協働して実施しており、今年で26年目になります。