カテゴリー: シンポジウム講演録

Day3 国際認定ラクテーション・コンサルタント(IBCLC)はいかに母親を支援するか

-ロズ・エスコット氏(IBLCE-ラクテーションコンサルタント資格試験国際評議会)

・IBLCEの活動の一番の目的は、お母さんと赤ちゃんを援助すること
・IBCLC(国際認定ラクテーションコンサルタント)の試験と受験資格について
・世界52カ国に13600名のIBCLCがいる。
・IBCLCはどのような場所で働いているのか?
ほとんどのIBCLCは病院で働いている。家庭訪問する者もいる。母乳育児に関連する道具についてアドバイスするIBCLCもいる。職員やほかの医療保健従事者の教育をしたり、大学で正式の科目として認定されたラクテーションについての講義をする者もいる。映画スターや有名人と一緒に仕事をするIBCLCもいる。最初の授乳が一番大切だと信じて陣痛室や分娩室で働くIBCLCもいる。早産児を出産した母親たちを援助する。病院の外来で母乳育児相談をする。赤ちゃんに対してあまり「やさしくない」病院で働くIBCLCもいる。社会的に恵まれない人々と共に働くIBCLC。母乳育児援助に対して国家から表彰されるIBCLCもいる。
メイドが授乳を含めて赤ちゃんの世話を全部しようとするような場合でも、母乳で育てるのを援助するIBCLC。生後6ヵ月まで完全母乳育児ができるように多胎児の母親に援助するIBCLC。
母親が仕事に復帰しなければならないときに、祖母が母乳復帰できるよう援助し成功したIBCLCもいる。(この祖母は閉経期が過ぎていたが、また母乳が出て孫を母乳育児することができた。これを聞いて私もまだまだと希望を持った。)
IBCLCは母乳銀行の設立や運営ができる。
母乳育児が子どもの生死を分けるような国で、母乳育児支援を試みているIBCLCもいる。
イラクでもIBCLCの試験が受けられるようになっている。
IBCLCは、病院に入院している年長の子どもにも母乳育児ができるように援助している。赤ちゃんが入院しなければならなくなったときには、お母さんも一緒に入院できるようにしたり、母乳を飲ませてあげられるような援助をしている。家庭の外で働く母親が母乳育児ができるようにIBCLCが援助している。
自分が働く病院が赤ちゃんに優しくなるように働いている。
オーストラリアのブリスベーンにある聖母病院には54人のIBCLCがいる。臨床に携わる助産師全員がIBCLCになることが要求され病院もその目標にむかって応援している。(病院が費用を負担している)
IBCLCと認定されることには以下のような人々にとって利益がある。
よりよい母乳育児支援を提供したい、施設内のやり方を改善したい、スタッフ教育・訓練したい保健施設等々。
■赤ちゃんにやさしい病院推進運動(BFHI)について(ロズ・エスコット)

赤ちゃんにやさしい病院推進運動とは、世界規模の、すべての赤ちゃんに人生の一番いいスタートをきってもらうための運動である。
母乳育児は赤ちゃんに優しい環境を作り出すことによって実現する。
赤ちゃんとお母さんに、産科施設がどうするべきかを知らせる運動。BFHIとは、人気のある運動。世界中でBFHIとは赤ちゃんの栄養に対して影響を与える産科の主義を変えていくものである。WHOとユニセフがしている運動の中でもっともエキサイティングな運動である。
WHOとユニセフが国の中に入り込むようなことのない運動でやってきました。オーストラリアのような先進国では、資金を集め、お金のない国へ援助するための組織になっている。先進国ではある団体を任命してBFHIを推進するようにユニセフが指名する。オーストラリアでは助産師会が任命されている。
BFHIのための審査員をどのように教育するか。いろんな種類の関係団体から(産婦人科会、助産師会、などなど)協力を得て、統合することが大切。
オーストラリアでも、BFHIについてたくさん誤解されていることがあるので、(母乳を強制するかのように)お母さん方に理解してもらうことも大切。

オーストラリアのあちこちで、2日間の教育コースがあり、BFHIになるためにどのようにスタッフを教育するかが教えられている。
10ヵ条の第2項を実践するために、18時間コースのようなものを教育している。
オーストラリアでは、オーストラリア助産師学校が主体となっている。
国内の諮問委員会は、産婦人科会、助産師、IBCLC,お母さんからの支援団体など、すべて年に2~3回ミーティングを行っている。
それぞれの州は、BFHIの認定委員会を持っていて、ローカルなコミュニティを作っている。
病院同士の相談の場でもある。この委員会は教育もし、(国際会議出席の航空券のための)資金集めの活動もする。タスマニアは、オーストラリアで最初の、すべての病院がBFHであるという州になりたいという目標を持っている。タスマニアの病院は全部で10箇所なので達成しやすい?
オーストラリアには33のBFHがある。日本には25のBFHがあり、お母さんにとってはよいことですね。
(オーストラリア中に流したCMのビデオを映写)トイレの便器に腰掛けて弁当を食べているサラリーマン。「あなたはトイレで食事したいと思いますか?どうして赤ちゃんはトイレで母乳を飲まなければならないの?」というメッセージ。

 

Day3 企業によるお母さんと赤ちゃんへの売り込み

―ヨン・ジュー・カン氏(IBFAN-乳児用食品国際行動ネットワーク)

■IBFANとは何か

-アネリス・アレイン氏(IBFAN-乳児用食品国際行動ネットワーク)

IBFANは、乳児用食品についての国際規準の理解を広め実施させる活動をしている、グローバルなネットワークです。資料「漫画でわかるWHO規準」ができたのは喜ばしいこと。
IBFANの役割は、主張をし、認識を育てていくこと。特に情報と技術を共有していくこと。ネスレボイコットは最大の行動であった。WHOの決議によって行動するのだが、政府の役人を訓練することも重要である。WHOのスタッフやユニセフに対しても行動していく。IBFANは、200近くのグループで構成されている。ネットワークに参加するための条件は、乳児用食品の会社から資金を得ていないことである。重要なことはネットワークの中でコミュニケーションをとっていくこと。
IBFANの7つ原理のうち、一番最初と最後が大切
1番は「どこにいても赤ちゃんは最高レベルの健康を得る権利がある。」7番は「人々は自分たちの健康を守っていくために国際的に手を結ぶことができる。」
IBFANは世界の国々で国際規準がどのように実施されているか、記録をとっている。日本は真ん中ぐらいである。
(大きな木の絵を提示)ネットワークを作るときは、木を育てるかのように、下から作ることが大切。頭でっかちにならないように、水はちゃんとあるのかが大切。組織においては頭でっかちになったものは弱い組織になってしまう。日本のネットワークがだんだん強くなっていくことを感じるのは大変うれしいことである。

■企業によるお母さんと赤ちゃんへの売り込み

―ヨン・ジュー・カン氏(IBFAN-乳児用食品国際行動ネットワーク)

母乳育児に関する事実
・母乳育児は生理的に自然なことで、好ましい方法である。
・ほとんどの女性が母乳を与えることができる
・医学的に母乳を与えないほうがいいケースはほとんどない
・母乳育児の利点 下痢胃腸炎などの予防、糖尿病のリスクが少ない、喘息などの予防などなど。

疑問
・人工乳では健康を害する恐れがあるのに、なぜ、母乳育児の割合は低いままなのか?
・なぜお母さんは母乳だけでなく、人工乳を与えてしまうのか?
・なぜ女性は自分が十分な母乳育児が出るだろうかと心配になるのか?
そしてさらに・・・
・医師や看護師はなぜお母さんに人工乳を足すことを勧めるのか?
・どうして赤ちゃんは病院でお母さんと離れ離れにされるのか?

母乳育児に対する障害
・自信がない
・十分な母乳が出ないのではないか
・ライフスタイルを変えたくない
そしてさらに
・専門家からも正確な情報でなく、誤解しやすい情報を得ていること
・母乳育児に関して誤解を生み出すような、人工乳を売るための情報

大きな問題は、反倫理的な母乳代用品の販売促進活動。
お母さんは、無意識のうちに、自分の母乳を人工乳に変えるようにという強い圧力をかけられている。
日本では明治乳業のような大きな会社が人工乳をつくっているが、ほかの国々にも輸出している。国際規準違反は、生後6ヵ月未満の乳児に勧めている乳児用食品が対象となる。
乳児用食品の市場は拡大してきている。2001年に約3兆4千億円。
おもなターゲットは人工乳を選択するお母さん。赤ちゃんはもっとも若く最も影響を受けやすい消費者。

400万人の赤ちゃんが、下痢、肺炎、はしかなど、予防できて、扱いやすい病気で死んでいる。そのような死の60%は栄養不良が原因で、母乳を与えていれば避けることができた。
貧困家庭の赤ちゃんは、母乳を与えることで、その何ヶ月かは貧困から免れることができる。赤ちゃんは人生において、より公正なスタートをきることができる。

また母乳育児支援プログラムによる経済的効果をみると、赤ちゃんひとりあたり、1435米ドルの医療費の節約になり、従業員の病欠が3日減る。(つまり発展途上国のみならず、日本のような先進国においても多くの節約ができる)
・人工乳で育てられているがために、予防可能な次のような病気の治療に毎年9億5千万米ドルがかかっている。中耳炎、呼吸器系の感染、胃腸炎など

国際規準がしていないこと
・国際規準は、乳児用食品、哺乳びん、人工乳首の商業的な販売を排除しない
・国際規準は、「選択の自由」を否定しない
国際規準がお母さんのためにすること
・販売促進活動をコントロールする
・母乳育児の促進・保護・支援

国際規準の実践(企業はすべてのレベルで国際規準を遵守するべき)
明治、森永、雪印らは、会議に出席して、国際規準を遵守することを約束している。しかし日本国内外で販売促進している。

市場の拡大
森永などは「よいお母さんになるための人工乳」といって妊婦や授乳婦が飲むための人工乳を販売しはじめている。商品名「Eお母さん」など。それは不必要で、お母さんを企業側に取り込む戦略であり母乳育児の害となる。

授乳パターンが変化する要因
信念、伝統
「近代的」な医療サービス、出産の医療化
医療保健専門職(人工乳の勉強はしても母乳育児は知らない)
国際規準と決議

文責:本セミナー情報発信チーム

Day3 パネルディスカッション

:今までの活動の中で、成功した例を紹介してください。男女共同参画にかかわることも教えてください。19p-discuss

:(アレイン)医師、弁護士、政府にかかわる人たちを変えることが大切です。
アルバニアの医師たちの例がおもしろいので紹介しましょう。とても貧しい国で、その病院では天井が落ちてしまったために、赤ちゃんをお母さんのもとに戻しました。その後、私が医師に教育したときに、医師たちは「思い出した」と言って、赤ちゃんの感染症が減ったなどの話をしてくれました。
母乳育児にあまりかかわっていなかった医師たちは変わりました。

A:(シュー)早産児の話です。病院に送られてきたとき、そこはBFH(赤ちゃんにやさしい病院)ではありませんでしたが、お母さんたちのサポートグループがあり、ほかのお母さんから助けを得ることができました。
5人のお母さんが出産後でした。インド系、マレーシア系、中国系、のお母さんたち。その子たちは今は健康にしています。
またアルガハンというグループは、スラムから連れて来られた7~8人のお母さんのいない子どもたちを母乳育児中のお母さんに預けました。

:(エスコット)日本にも成功した例はありますね。BFHでは98%の赤ちゃんが生後1週間母乳によって育てられています。
これから母乳育児をしようとしているお母さんに母乳育児の話をしてあげてください。

:先ほどのビデオ(オーストラリア中に流したCMのビデオ~トイレの便器に腰掛けて弁当を食べているサラリーマン。「あなたはトイレで食事したいと思いますか?どうして赤ちゃんはトイレで母乳を飲まなければならないの?」というメッセージ。トイレで食事している映像)はとてもショッキングでしたが、放送するにいたった経緯を教えてください。

:(エスコット)テレビ局の地域支援活動として2ヶ月間無償で放送されました。タスマニアとオーストラリア全土で放送。何度も、どんなものが効果的かを見直して作られたものです。
タスマニアの団体がファンドレイジングに成功し資金を得たので、何に使うか考えCMを作りました。
若い女性にインタビューをして、公共の場での母乳育児が彼女らによく思われていないことを知りました。制作も広告会社が無料でやってくれたのでお金が残り、そのお金でポスターやシールを作りました。

:医療職ではないお母さんたちが、病院での人工乳の作り方指導などを受けて、WHOコード違反を見つけたときに、具体的にどのようなことができるでしょうか?

:(アレイン)最初にするべきことは、サンプルなどを拒否すること。
それよりよいことは、BSN(母乳育児支援ネットワーク)に送ること。そうすれば報告書を作ることができます。

:(ジュー・カン)お母さん方のモニタリングはとても重要。サンプルを見つけたら、報告書を作れます。
中国では「赤ちゃんようこそ」という言葉をつけてはいけないことになっています。

:男性にできる母乳育児支援とは何でしょうか?

:(アレイン)お父さんはオムツを替えたり育児を手伝い、さらにコード違反モニタリングに協力できます。

:(ジュー・カン)国際規準にNGO団体や個人は企業に対してモニタリングできるということが記載されています。

:政策として取り入れた国では、母乳育児がどのように変わりましたか?

:(ジュー・カン)24カ国で法制化されました。
企業の行動を変えることができます。ブラジルでは規制が厳しく、かなり製品の表示方法が変わっています。

:(アレイン)アフリカでも多くの国で法制化されています。
企業がとても強かったのですが、われわれの活動によってそれを変えることができました。
草案はほとんど男性がいない女性ばかりのところで作り、法制化されました。

:(エスコット)赤ちゃんにやさしい病院では母乳育児率が10%から90%へと劇的に変化しました。

:(瀬尾)10ヵ条のすべてを守ったときには、非常に効果が現れます。

:(シュー)マレーシアには赤ちゃんにやさしい病院(BFH)が1万4千件以上あります。
中国でも今はBFHで赤ちゃんが生まれています。
マレーシアでは、公共の病院はすべてBFHになっています。マレーシアの国民は、インド系、マレーシア系、中国系の人種が多いのですが、中国系の人は「おっぱいが小さいから母乳があまり出ない」と思い込まされています。
1997年の会議において「母乳育児によって知能が高くなる」という話が出たので、中国系の人たちがみな母乳育児をし始めました。
昔は経済的だから母乳をあげるという目的でしたが、現在では、お母さんが高い教育を受けているほど、母乳育児を選択する傾向にあります。

:IBCLC(国際認定ラクトーションコンサルタント)として働いている人々について、どの国が国家資格としているのでしょうか?

:国家資格ではありません。

:52カ国にIBCLCがおり、ほとんどは看護師か助産師、保健師です。自分の分野で活躍している一方、IBCLCとして特別な仕事もしています。
これらのスタッフは、お母さんだけの支援ではなく他のスタッフの教育にも当たっています。

:母乳育児を人に勧めるときに、人工乳で育てているお母さんのことを考えると、母乳の利点を話すことをためらうことがあります。

:(アレイン)お母さんたちが犠牲者である、と言うことが大切です。
最初の段階で十分な情報がないまま選択できない状況があったわけで、そういった状況には怒りを感じるし、そのような状況が二度とないようにしたいと思います。
粉ミルクが大丈夫だというような間違った認識をしないようにさせなければいけません。母乳と粉ミルクを両方使うようなことは避けるべきです。

:(ジュー・カン)母乳と粉ミルクを混合で使うことは、母乳育児に対して悪い影響があるということが明記されています。
お母さんたちに情報を与えるのは企業の責任ではなく、ヘルスワーカーの責任です。

:(瀬尾)調乳指導は必要なお母さんだけにすればよいのです。

:(シュー)どこからどこまでが罪なのかを知らなければなりません。
企業が一番お母さんを誘うことに長けています。お母さんに母乳と代用品(粉ミルク)が同じように思わせています。
友達の話も用心して聞くべきです。
医師にもそういう人はいます。社会では医師から人工乳を勧められることもあります。われわれに対する挑戦です。

:(ティプ)保健センター自体も、BFHのようにお母さんを支える組織であってほしいです。

:(エスコット)母乳の情報は育児に際して重要な情報です。
禁煙の有害性はみんな知っていて誰も秘密にはしないでしょう。しかし、母乳の場合はどうですか? 保健従事者や他の人にも、このような情報を広めていくことはとても大切です。
日本のBFHで出産したお母さんたちの98%が母乳育児をしたことがあるのはとてもすばらしいことです。

:(高橋)「人工乳で育てているお母さんを傷つけないように」とする考えが、母乳で育てているお母さんをとても傷つけていることがあります。
WHOは2歳かそれ以上まで母乳を与えることを勧めているのに、母乳育児を続けると、母乳をあげているお母さんは非難され、傷つけられています。

:BFHには、助産院も認定されますか?
:(エスコット)イエス

:哺乳びんを持った人形やおもちゃがとても多いが、これはどうでしょうか?

:(アレイン)法律的におもちゃは規準の対象ではないが、ある国では人形の哺乳びんの中にたくさんの広告が入っていたこともあります。この広告を見て会社に苦情を言ったら、法律的に規準違反ではないが、会社に訴えることによってその会社は改めてくれました。

:(シュー)メディアを監視しているグループがあります。女性側のほうから、女性に失礼なことがあるときには宣伝をできるのです。消費者グループ、環境グループ、どちらも可能です。
宣伝に関しては日本にもあるでしょう。生後6ヵ月間母乳育児をするべきだと同意している国ならば言えます。

:(エスコット)人工乳で育った赤ちゃんはダメージを受けています。

:(アレイン)先ほどの罪悪感の件ですが、私たちは、「母乳によって赤ちゃんの頭がよくなる」ということをやめなければなりません。。母乳育児が基準なのであって、人工乳はそれより劣ると言わねばならないのです。
母乳育児がベストだと言い続けると、みな眠くなってしまう。人工乳で育った赤ちゃんは感染症にかかりやすいし、知能的な面でも劣ることが分かっています。
強くお勧めしたいのは、地下鉄などの広告に載せること。ブラジルでは「母乳で育った赤ちゃんは頭がよくなる」という広告を地下鉄に載せました。お父さんがたに影響がありました。
よその国の事情を見て、自国の変化を試みることができるでしょう。地下鉄の会社では、イメージを大事にしますから、おっぱいを出さずに赤ちゃんのかわいい写真を載せるのがいいかもしれません。

:(シュー)地域も、医師も、ポジティブに、いい方法がいっぱいあるのを使っていただきたい。ネガティブなイメージをなくしたいです。
母乳育児している絵や写真には大きなおっぱいばかりが使われている。小さなおっぱいも出されれば、小さなおっぱいの人の自信に繋がるでしょう。

文責:本セミナー情報発信チーム

Day3 最終アピール

「アジアの母乳育児支援ネット~女性のエンパワメントに向けて~」連続講座 

最終アピール
東京(日本) 2003年1月17日~19日
■主催:母乳育児支援ネットワーク

母乳育児支援ネットワークは2003年1月17日~19日にアジアの国際NGO(非政府組織)を招聘して、「アジアの母乳育児支援ネットワーク~女性のエンパワメントに向けて~」連続講座を開催しました。

世界中のお母さんが、十分な情報提供のもとに乳幼児の栄養や子育てに関して最善の選択ができること、それが真の意味での男女共同参画社会の実現につながります。そのような環境を整えるために、世界保健機関(WHO)の意思決定機関である世界保健総会(WHA)の趣旨を日本においても反映することができるようにと願って、このアピールを出します。

1. 日本では多くの女性が母乳で赤ちゃんを育てたいと願っています。世界保健機関(WHO)は、生後6ヵ月間は母乳だけで赤ちゃんを育てることを推奨しています。また、お母さんと赤ちゃんの双方のために、離乳食を始めたのちも2歳かそれ以上まで母乳育児を続けることを勧めています。しかし、この自然で当たり前のことが、日本においては困難になっています。そしてその原因が、女性自身の体質、努力、食生活、有職であるか否かといったことにあると一般的に思われているがゆえに、母乳育児がうまくいかなかった女性は自分自身を責めてしまいがちです。実際にはほとんどの女性は適切な情報と支援環境があれば、母乳育児を楽しんで続けることができるのです。子どもの権利条約では、赤ちゃんには母乳で育てられる権利があると謳われています。また、お母さんにとっても、母乳で育てるための情報や十分な支援を得る権利があります。

私たちの多くは、母乳育児がより望ましいことは知っていても、これまで、母乳育児に関する情報と母乳代用品(人工乳や哺乳びん)の両者において“情報量の不均衡”が起きていることに気づいていませんでした。親がどちらを選択するにしても、自信を持って正確な判断をするには、この“情報量の不均衡”を是正する必要があります。
2. 1994年の世界保健総会では、日本政府を含む参加の178ヵ国すべてが「母乳代用品の販売流通に関する国際規準(WHO規準)」を承認しました。さらに、総会は政府が母乳代用品の無料、または割引の配布を終わらせるための措置を保健システムに全面的に適用することを勧告する決議も採択しました。この決議は、生後6ヵ月間は母乳だけで赤ちゃんを育てることの重要性も強調しています。これに先立って日本では、1974年10月、厚生省児童家庭局母子衛生課から企業5社への指導があり、一時的に自粛した経緯があります。また1983年、厚生省児童家庭局母子衛生課は、再度業界への自粛を要請し、同時に「人工乳サンプル無償配布の問題点について」と題する提言文書を小児科雑誌に掲載し、医療機関関係者への協力を要請しましたが、現在も自粛されているとはいえません。

そこで、私たちは、
● 医学的な理由などで母乳代用品を本当に必要としている一部の人だけが適切に使用できるように、一般向けの宣伝や行き過ぎた販売攻勢を企業がやめることを要望します。
● 保健医療専門家の「母乳代用品の販売流通に関する国際規準」への理解も必要だと考えています。お母さんに十分な情報を提供して母乳育児支援をするためには、保健医療専門家も十分な情報と支援のためのスキルが必要です。女性が自信を持って母乳育児ができるように女性の立場になって援助ができる保健医療専門家の養成・教育や、国際的にも通用する認定を支援します。
● また、母乳で育てた経験のある母親が他の母親を援助する形の自助グループの持つ力を認識し、応援します。
● 多くの女性が母乳育児を続けることができ、楽しんで育児ができるような環境を整えるために、政府とともに母乳育児支援をしたいと思っています。子育て支援は、いろいろな形があります。母親どうしの助け合い、保健医療専門家、父親や祖父母も含めた家族、保育者、市民の草の根グループ、職場、地域福祉など、それぞれの手による母親への子育て支援はすべて重要です。役割の違いを認め合い、「お母さんと赤ちゃんの健康と幸せ」という同じ目的のために連帯したいと考えます。

3. 男女共同参画社会に向けて、母乳育児を推進することには多くの利点があります。母乳育児の持つよさを男女で認識することで、

1) 生殖・授乳の権利を大切に思う気持ちは男女で共有すべきものであること
2) 母乳育児は子どもだけではなく、親の権利でもあること
3) 母乳育児や子育ても社会全体が応援することが重要であること

に気づき、現代社会の課題を考えていくことができます。

また、国際労働機関(ILO)の条約が提示しているように、女性が母乳育児と労働を両立できるような環境作りをすることで、社会にも恩恵が与えられます。

● 女性は、母乳育児のための休暇や、授乳もしくは搾乳のための十分な機会が与えられれば、母乳育児を続けるために仕事をやめる必要がなくなります。女性に意欲と責任感が増し、生産性の高い労働力ともなります。
● 女性が健康で満足感を得て、雇用主に対して誠実に働けば、スタッフの回転率が低くなり、求人や再教育の費用が削減できます。
● 雇用主は、質の高いスタッフを将来雇用できるという意味でも、また一般市民の目という点でも、よい企業イメージを得られます。
● 母乳育児はお母さんにとっても子どもにとっても健康上の利点が非常に大きいので、予防可能な病気の医療費、医療保険費の削減にもつながります。
● 母乳育児はお母さんと子どもの間に密接な関係を築き、母乳育児に関連するホルモンは女性の全般的な性と生殖に関して健康によい影響を与えます。
● 人工栄養に必要な包装、流通、廃棄処理などを減らすことになるので、環境への害も減らすことになります。 お母さんが人工栄養にお金をかけない分、他の消費に回すことができるので、経済が活性化します。

4. 私たちはまた、国際社会の責任ある一員として、子育ての文化の多様性を重視する気持ちをアジアの他の国の人たちと共有していきたいと思います。特に、母乳代用品を扱っている日本の企業が自国においてだけではなく、他の国においても国際規準を守って節度を持った販売をし、アジアにおける母乳育児の文化を壊すようなことがない社会をめざします。
母乳育児支援ネットワーク <Breastfeeding Support Network of Japan, BSNJapan>は、1999年に結成され、いつでも、どこでも、どんな状況でも母乳育児に必要な情報や支援が得られる社会になることをめざして活動しているボランティア組織です。

母乳育児支援ネットワーク
URL  http://www.bonyuikuji.net/

最初は母乳だけ、その後も他の食べ物を補いながら母乳を与え続ける。金色のリボンは、 その「ゴールド スタンダード」、つまり理想のありようの象徴です。

WABA(世界母乳育児行動連盟)とユニセフが共同で提唱している「金色のリボン運動」に参加しています。

Facebook 母と子の育児支援ネットワーク(災害時の母と子の育児支援 共同特別委員会)

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