―ヨン・ジュー・カン氏(IBFAN-乳児用食品国際行動ネットワーク)
■IBFANとは何か
-アネリス・アレイン氏(IBFAN-乳児用食品国際行動ネットワーク)
IBFANは、乳児用食品についての国際規準の理解を広め実施させる活動をしている、グローバルなネットワークです。資料「漫画でわかるWHO規準」ができたのは喜ばしいこと。
IBFANの役割は、主張をし、認識を育てていくこと。特に情報と技術を共有していくこと。ネスレボイコットは最大の行動であった。WHOの決議によって行動するのだが、政府の役人を訓練することも重要である。WHOのスタッフやユニセフに対しても行動していく。IBFANは、200近くのグループで構成されている。ネットワークに参加するための条件は、乳児用食品の会社から資金を得ていないことである。重要なことはネットワークの中でコミュニケーションをとっていくこと。
IBFANの7つ原理のうち、一番最初と最後が大切
1番は「どこにいても赤ちゃんは最高レベルの健康を得る権利がある。」7番は「人々は自分たちの健康を守っていくために国際的に手を結ぶことができる。」
IBFANは世界の国々で国際規準がどのように実施されているか、記録をとっている。日本は真ん中ぐらいである。
(大きな木の絵を提示)ネットワークを作るときは、木を育てるかのように、下から作ることが大切。頭でっかちにならないように、水はちゃんとあるのかが大切。組織においては頭でっかちになったものは弱い組織になってしまう。日本のネットワークがだんだん強くなっていくことを感じるのは大変うれしいことである。
■企業によるお母さんと赤ちゃんへの売り込み
―ヨン・ジュー・カン氏(IBFAN-乳児用食品国際行動ネットワーク)
母乳育児に関する事実
・母乳育児は生理的に自然なことで、好ましい方法である。
・ほとんどの女性が母乳を与えることができる
・医学的に母乳を与えないほうがいいケースはほとんどない
・母乳育児の利点 下痢胃腸炎などの予防、糖尿病のリスクが少ない、喘息などの予防などなど。
疑問
・人工乳では健康を害する恐れがあるのに、なぜ、母乳育児の割合は低いままなのか?
・なぜお母さんは母乳だけでなく、人工乳を与えてしまうのか?
・なぜ女性は自分が十分な母乳育児が出るだろうかと心配になるのか?
そしてさらに・・・
・医師や看護師はなぜお母さんに人工乳を足すことを勧めるのか?
・どうして赤ちゃんは病院でお母さんと離れ離れにされるのか?
母乳育児に対する障害
・自信がない
・十分な母乳が出ないのではないか
・ライフスタイルを変えたくない
そしてさらに
・専門家からも正確な情報でなく、誤解しやすい情報を得ていること
・母乳育児に関して誤解を生み出すような、人工乳を売るための情報
大きな問題は、反倫理的な母乳代用品の販売促進活動。
お母さんは、無意識のうちに、自分の母乳を人工乳に変えるようにという強い圧力をかけられている。
日本では明治乳業のような大きな会社が人工乳をつくっているが、ほかの国々にも輸出している。国際規準違反は、生後6ヵ月未満の乳児に勧めている乳児用食品が対象となる。
乳児用食品の市場は拡大してきている。2001年に約3兆4千億円。
おもなターゲットは人工乳を選択するお母さん。赤ちゃんはもっとも若く最も影響を受けやすい消費者。
400万人の赤ちゃんが、下痢、肺炎、はしかなど、予防できて、扱いやすい病気で死んでいる。そのような死の60%は栄養不良が原因で、母乳を与えていれば避けることができた。
貧困家庭の赤ちゃんは、母乳を与えることで、その何ヶ月かは貧困から免れることができる。赤ちゃんは人生において、より公正なスタートをきることができる。
また母乳育児支援プログラムによる経済的効果をみると、赤ちゃんひとりあたり、1435米ドルの医療費の節約になり、従業員の病欠が3日減る。(つまり発展途上国のみならず、日本のような先進国においても多くの節約ができる)
・人工乳で育てられているがために、予防可能な次のような病気の治療に毎年9億5千万米ドルがかかっている。中耳炎、呼吸器系の感染、胃腸炎など
国際規準がしていないこと
・国際規準は、乳児用食品、哺乳びん、人工乳首の商業的な販売を排除しない
・国際規準は、「選択の自由」を否定しない
国際規準がお母さんのためにすること
・販売促進活動をコントロールする
・母乳育児の促進・保護・支援
国際規準の実践(企業はすべてのレベルで国際規準を遵守するべき)
明治、森永、雪印らは、会議に出席して、国際規準を遵守することを約束している。しかし日本国内外で販売促進している。
市場の拡大
森永などは「よいお母さんになるための人工乳」といって妊婦や授乳婦が飲むための人工乳を販売しはじめている。商品名「Eお母さん」など。それは不必要で、お母さんを企業側に取り込む戦略であり母乳育児の害となる。
授乳パターンが変化する要因
信念、伝統
「近代的」な医療サービス、出産の医療化
医療保健専門職(人工乳の勉強はしても母乳育児は知らない)
国際規準と決議
文責:本セミナー情報発信チーム