カテゴリー: WABA(世界母乳育児行動連盟)

母乳育児は最高の投資 WABA1998

WABA’98

界中で、家族や地域社会や国家が子どもたちの健康を増進し福祉を推し進めようとしています。ところが残念なことに、栄養のある食べ物を買うお金がない、きれいな水が手に入らない、予防と治療の両面で医療が受けられないなどといった、経済的な理由のため、こうした努力はなかなか実りません。

その点、母乳育児はほとんど投資を必要としません。それでいて家族にも、雇用主にも、地域社会にも、健康保険制度にも、政府にも、莫大な利益をもたらすのです。

1998年の世界母乳育児週間では、国民の健康に対する最高の投資という側面から、母乳育児を保護・推進・支援するための行動を呼びかけます。今年の目標は以下の3つです。

 

●母乳育児の経済的な価値と人工乳の高いコストを広く知らしめること。
●公的に母乳育児を応援してもらうために、母乳育児の経済的な利点について具体的なデータを提供すること。
●各国政府が以下の2点について理解を深めるよう一翼を担うこと。
・あらゆる社会領域における母乳育児の経済的価値の真価。
・母乳育児推進プログラムへの支援費用を、国家の保健予算に計上する必要性。

INDEX
母乳育児の経済面での利点
母乳育児は最高の投資
母乳育児にかかる費用
人工栄養にかかる費用
母乳だけで育てること
母乳と経済
母乳育児でこんなに節約
行動のためのアイデア
節約だけではない母乳育児の価値

母乳育児の経済面での利点

母乳育児は社会のさまざまな場で経済面での利益をもたらします。

家庭で
●母乳代用品や、人工栄養法に使う器具の購入が不要なぶん、節約になる。
●子どもが病気にかかりにくくなるため、病院に通う回数が減り、医療費の節約になる。また、薬代や病気の子どもを看病する時間も節約できる。
●水を用意したり沸かしたり哺乳びんを洗浄したりといった準備にかける時間の節約になる。
●避妊具や生理用品にかけるお金の節約になる。
●働く時間を病気の子どもの看病に回さずにすむため、節約になる。

雇用主にとって
●乳幼児を持つ被雇用者の生産性が上がり、職場への愛着が増し、常習的な欠勤が減るために、節約となる。

国にとって
●市販の母乳代用品の購入と流通にかかるコストを節約できる(多くの国にとっては、輸入額の減少につながる)。
●母乳育児で予防することができる急性や慢性の疾患の医療費節約になる。
●プラスチック容器の生産や、母乳代用品とその容器の流通・廃棄を減らすことにより、環境破壊が避けられ、そのぶん、経済的な損失を防げる。

例えば、旧ユーゴスラビア出身の家族の場合、母乳育児をしないために、赤ちゃんが生まれて最初の6ヵ月間に母乳代用品を購入するための費用は、全収入の約70%にのぼります。現状では、生後4ヵ月の時点において、一部でも母乳を飲んでいる赤ちゃんはたったの30%にすぎません。この数字を70%に増やせたなら、年間4億4,900万米ドルも節約になり、毎年99,000件の呼吸器感染症、33,000件の中耳炎、123件の早期発症性の糖尿病、84件の小児ガン、152件の卵巣ガンをなくせることになります。産業先進国(開発国)においてすら、このように人工栄養のコストは高いものなのです。(1)

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母乳育児は最高の投資
人工的な乳児用食品を使わないことで家庭が節約できるのは、購入費だけではありません。必要な器具にかかる費用や、調理と後片付けに必要な燃料や時間も節約できるのです。

雇用者が母乳育児を支援する姿勢を持ち、そのニーズを満たす環境が整った職場では、働く人々の職場に対する愛着が増し、病気の子どもを看病するための欠勤も減ります。

貴重な外貨の流出を防ぎ、医療全般にかかる重い負担を減らすことのできる母乳育児の推進は、多くの国にとって、よい投資であるはずです。

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母乳育児にかかる費用

●母親がいつもより多く食べるための費用。
●働く母親への有給休業や職場内保育所といった適切な母性保護を与える費用。
●母乳育児教育を実施し、母親どうしのサポートグループのようなボランティアの母乳育児支援団体を維持する費用

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人工栄養法にかかる費用

人工栄養法(乳児に母乳代用品を飲ませること)は、施設・国家・政府・保健医療団体・家族に、莫大な金銭的負担を負わせます。

医療面での負担
乳児を生後1年間、人工栄養で育てた場合、母乳で育てるのに比べて、以下の傾向があるとされています。

●下痢が多くなる。
●呼吸器疾患が多くなる。
●髄膜炎が多くなる。
●中耳炎が多くなる。
●アレルギーが多くなる。
●慢性消化器系疾患、歯の問題や歯列矯正の問題が増える。
●糖尿病が増える。
●学習障害や発達遅滞の問題が多くなる。
●入院数が増える。
●多くの国では、水で薄めた人工乳、安全でない水、不衛生により、栄養失調が増えたり死亡率が高くなったりする。

家庭にかかる負担
家庭では、人工乳などの母乳代用品、哺乳びんやそれを殺菌するための器具、燃料費、下痢などの病気にかかる医療費がかさみます。

人工乳は、買いにいくにも、用意をするにも、飲ませるのにも、時間を要します。多くの発展途上国の地方では、毎日、水と薪を集めるために何時間も費やさなければなりません。例えば、生後3ヵ月の赤ちゃんは、調乳や煮沸のために1日3ℓ以上の水を必要とし、(その3ℓの)水を沸騰させるために200gの薪を必要とします。(2)

アルゼンチンでは、人工乳を買うために1ヵ月に50米ドル使いますが、このお金があれば、15㎏の肉、75㎏のオレンジ、あるいは50㎏の野菜を家族のために買うことができるのです。

企業にかかる負担
人工乳育ちの赤ちゃんは、母乳育ちの赤ちゃんに比べ、病気にかかる頻度がはるかに高く、かかった場合にもずっと長引きます。したがって、会社勤めの女性で母乳育児をしていない母親は、より欠勤が多くなります。それに対し、アメリカで企業が母乳育児を支援するプロジェクトに取り組んだところ、欠勤が27%減り、健康保険で支払う費用が36%削減されるという結果が出ました。(3)

国にかかる負担
輸入品の母乳代用品を使うと、貴重な外貨が減り、食の安全保障を脅かす恐れが出てきます。

パキスタンでは、人工乳の輸入に1982~83年に400万米ドル、1987~88年に850万ドル、1995年7月~1996年4月に430万米ドルを支払っています。(4)

ガーナの場合、もしも最適な母乳育児【訳注:生後6ヵ月間は母乳だけで、その後補完食を食べさせながら2歳まで母乳育児を続けること】がなされれば、産生される母乳の純利益は1億6500万ドルにもおよぶはずです。実際に「出せるはずだった母乳」だけでも、損失額は3300万米ドルにのぼっているのです。(5)

つまり、わざわざ外貨を支払って、より優れた品質のもの(母乳)を、より劣った製品(人工乳)と交換しているのです。同時に、人工栄養法は、森林の砂漠化をエスカレートさせ、ごみ問題を増やしています(このことは1997年のWABAパンフレット『母乳育児:自然のとる道』で述べたとおりです)。さらにいえば、数値として表すことは難しいのですが、子どもが身体的・知的な潜在能力を最大限に伸ばしきれないことによる人的資産の損失があります。

単純に家庭にかかる母乳代用品の費用を算出し、それに年間の出生数をかけるだけでは、
「母乳育児をしないこと」による国家の損出のすべては反映されませんが、それだけでも、
堅実な政策上の牽引力として活用することはできるはずです。

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母乳だけで育てること
生後6ヵ月間は、赤ちゃんの体重が順調に増加していれば、母乳以外のものを与える必要はありません。補完食(いわゆる離乳食)は生後6ヵ月以前に始めてはいけません(6)。(このような早期に固形の食べ物を口にしても)単に母乳の量が減ってしまうだけで、より良好な発達には結びつかないからです。(7)

現在用いられている乳児成長曲線のグラフは、多くは人工乳育ちの赤ちゃんの成長を基に作成されています。母乳育ちの赤ちゃんは、人工乳育ちの赤ちゃんと成長の度合いが違うのですが、それを知らない保健医療従事者が、必要がないのに人工乳をたすように指示することがよくあります。(8)

母乳だけで育てる期間が短いとどうなるでしょうか
●母乳のほかに何かを与えることで母乳を飲む量が減ってしまい、母乳の代わりに母乳よりも栄養価の劣るも
のを赤ちゃんに与えることになる。
●より月齢が小さく抵抗力のない時期に、不必要な汚染や感染に巻き込まれることになる。
●栄養失調や死亡に結びつく可能性がある。
●子どもの知的発達が阻害されるかもしれない。
●母乳育児による避妊の効果が低下し、きょうだいの年齢差が縮まることで、低出生体重児の生まれるリスクが高くなる。
●母親にとっては、気持ちが落ち着くホルモンであるオキシトシンが失われる。

早期の補足による商業製品への依存
乳児用食品会社(乳業会社)やそこから資金をもらって研究をしている科学者たちは、早くに母乳以外のものを赤ちゃんに与えることを促します。これが結局、多くの場合、高価な市販の人工乳やベビーフードへの依存に結びつくとわかっているからです。

このことを認識している「乳児用食品国際行動ネットワーク」(IBFAN)は、ほかの団体と合同で「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」に違反している乳児用食品・人工乳の販売促進をモニタリング(監視)しています。また、製造者が偽りの申告をしていないかどうかを監視しています。

多くの女性は、自身の母乳が母乳代用品よりもはるかに高品質であることを知りません。母乳代用品が母乳と同等、あるいはそれ以上によいものであるかのように、信じ込まされてきたのです。

女性が母乳で育てない理由で最も多いのは、「母乳が出ないから」というものです。実際には「母乳が出ない(と思う)こと」は、ひんぱんに授乳をすること、 そして、母親がわが子を母乳で育てる能力に自信を持つことで、たやすく乗り越えることができます。多くの場合は、乳児用食品会社(乳業会社)や、しっかりと研修を受けていない保健医療従事者から直接的あるいは間接的に混合栄養をすすめられて、母乳で育てる自分の能力への信頼が揺らいでしまうのです。

生後3ヶ月の赤ちゃんのために購入する母乳代用品は、最低賃金の何%を占めるか

1kgあたりの費用
(米ドル)
月にかかる費用
(米ドル)
最低賃金
(米ドル)
占める割合
ドイツ16.467.2411496%
ポーランド24.51100.4939426%
マレーシア7.4230.4214321%
フィリピン1145.1011926%
スロバキア8.3334.157943%
インドネシア6.7327.605550%
ニュージーランド8.7836.007645%

この情報は、次の方々からWABAに寄せられました。
Tui Bevin, AFS, PPPIM, Pro Vita, N. Clavano, K. Kostyra and YLKI
日本:1kgあたり31.96米ドル(2941円)月にかかる費用:127.84米ドル(11764円) 最低賃金:1093米ドル/月100640円 沖縄1時間629円 8時間×20日で計算) 賃金の11%を占める(2010年4月現在)【訳注】

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母乳と経済

 母乳育児は、女性ならではの社会への貢献の一つであり、そこにいかなる経済的な価値があろうとも、それだけで母乳の真価を語り尽くすことは到底できません。

母乳育児はお金には換えられない「かけがえのないもの」なのです。世界的にもまだまだ少ない「母乳だけで育てる」ことを応援するためには、まず、その重要性への認識を社会に浸透させることが大切です。愛や真の思いやりに値札を付けることはできないからです。ほとんどの女性にとって、母乳育児は自尊心と結びついているものです。

とはいえ、母乳を食糧の収支で考えてみることで、客観的な価値が上がることも、また、事実です(9)。母乳が、国家に対する食糧供給という観点から、実際にどれほどの貢献度を持っているかを目のあたりにすれば、まちがいなく強い印象を受けますし、権限のある政策立案者に、よりなじみやすい形で、母乳育児という行為の重要性を示すことができるでしょう。

母乳育児の経済的な価値
1992年における算出によれば、ノルウェーでは1992年、820万ℓの母乳が産生されました。これは、ノルウェーの病院【訳注:母乳銀行】が支払う対価に基づき、1ℓあたり50米ドルで計算すると、4億1,000万米ドルにも相当します。工場で生産された乳児用食品・人工乳の価値が国民総生産(GNP)に含まれているというのに、母乳のこうした価値は、GNPに含まれていません。だから、おかしなことに、母乳育児の率が上がると、GNPが減ってしまうことになるのです!(10)

アフリカでは、これまでの一部の国での概算例をとると、年間1人あたりの母乳の産生量は10㎏(8~17㎏の個人差がある)とされています。母乳の価値を1ℓあたりたった1ドルで計算したとしても、GNPに加えると、ジンバブエではGNPが1%上昇し、マリでは6%上昇することになります。(11)

オーストラリアで、年間産生される母乳の価値は、計算方法によっても違いますが、17億~27億豪ドルと計算されました。イノチェンティ宣言にある母乳育児目標が達成されれば、母乳の価値はさらに34億豪ドルまで上がるはずです。これは、国内総生産(GDP)【訳注:GNPから国外投資による利益を除いたもの】の3.1%、健康のための公共歳出の40%にも相当する額です。(9)

母乳育児推進による健康保険支出の節約
●赤ちゃんが生後6ヵ月間母乳で育てられると、1人ごとに、米国政府は福祉と保健医療にかかる費用を450~800米ドル減らせる。(12)

●米国では、人工栄養法が原因の可能性がある病気をお金に換算すると、乳児下痢症に年間2億9100万米ドル、RSウイルス感染症に2億2,500万米ドル、中耳炎に6億6,000万米ドル、インシュリン依存性糖尿病に1,000万~1億2,500万米ドル支払っていることになる。(13)

●オーストラリアで、生後3ヵ月まで母乳だけで育てている人を60%から80%増やすことができれば、中耳炎、インシュリン依存性糖尿病、胃腸疾患、湿疹だけに限っても、医療費を1,150万豪ドル節約することができる。(14)

●インドでは、母乳だけで育てることで、子ども1人あたり1年に1回だけでも下痢を予防できるとすると、それによって節約できるお金は、子どもの健康のための国家予算を超えることになる。インドでは母乳育児による授乳性無月経が、避妊法としていちばん使われるのだが、これは家族計画予算のほぼ半額を占めるほどの価値がある。(15)

残念なことに、多くの国では、乳児のいる家庭に無料もしくは補助金を出して人工乳を配給しており、それが母乳育児率の低下につながっています。米国の「女性、乳児、子どものための栄養プログラム」(WIC)では、母乳で育てている女性に配給する食糧の2倍の金額を母親1人あたりに支給する乳児用人工乳に費やしています。(13)

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母乳育児でこんなに節約

メキシコでは、病院を基盤にした母乳育児プロジェクトで子ども1人の命を救うために4米ドルしかかからない。これは、はしかワクチンや脱水症への経口療法のような介入よりもさらに経済効率がいい。(16)

たった1人の赤ちゃんが6ヵ月間母乳で育てられるだけでも、米国政府は福祉と医療にかけるお金を450~850米ドル節約できる。

イランでは、母乳だけで育てる率が1991年の10%から1996年には53%に上昇した。この期間、母乳代用品の輸入は5000万米ドル減らせた。(17)

オーストラリアでは、生後3ヵ月まで母乳だけで育てる率が60~80%増加すれば、1,150万豪ドルの節約になる。(14)

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行動のためのアイデア
●日本の母乳代用品の費用を計算し、その費用で家族のためにどのくらい食糧を買えるかを調べましょう。赤ちゃんは6ヵ月間に約22㎏の人工乳が必要です。生後1ヵ月で2.5㎏、生後2ヵ月目には1ヵ月に3.2㎏、それ以後は1ヵ月あたり4㎏の人工乳を必要とするのです。有名メーカーの人工乳が1㎏あたりいくらなのかを調べて、半年間人工栄養で育てたらいくらかかるのか計算してみましょう。ただし、ほかにもいろいろ費用がかかることも忘れずに!

●概算でいくと、(母乳育児をしないことで)ある一定期間にかかる医療費は、その時期に費やす人工乳の値段の2倍かかります。これを参考にすれば、家族にとって、あるいは国にとって、人工乳による実際の損失がどのくらいなのかをより正確に見積もることができるでしょう。

●人工栄養法にかかる費用について、地域の学習会で話し合ったり発表したりしましょう。

●職場の上司に、職場に母乳育児(支援)プログラムを導入することで得られる経済的な利益について伝えましょう。WABAから「お母さんにやさしい職場のための条件」のチラシを送ってもらったり、ウェブサイトからダウンロードしたりしましょう。

●テレビや新聞などのメディアを使い、「お母さんにやさしい職場賞」を作ったりして、母乳育児を応援している職場への注目を集めましょう。

●母性保護の法律、労働法、健康のためのプログラムを担当している政府の人たちに、このWABAのパンフレットを渡しましょう。

●母乳育児をしないことでかかる実際のコストについて、学校、女性団体、企業などで講演しましょう。

●母乳育児が自国にとって貴重な自然資源であることを人々に認識してもらいましょう。1人あたり1年間に費やす人工栄養法のコストを計算し、子どもの数を掛け、それを1人あたりのGNPと比べてみましょう。

●地方自治体や国の政府代表に、世界母乳育児週間について手紙を書き、政府の各省庁や役所で母乳育児を推進し、公務員への母乳育児支援を改善するように求めましょう。

●どのような方法をとれば、母乳育児を推進し、それによって病院・保健医療施設・家族計画プログラムにおける、あるいは家庭にかかる無駄な負担を省くことができるのか、具体的に提案しましょう。

●保健医療専門家に働きかけ、経済学者や統計学者、健康や食糧関連の統計に関係している人に対し、食糧供給、食糧や栄養の入手、食べ物の経済的価値の統計の中に母乳も含めて計算するように促してもらいましょう。

●母乳育児率が上がれば、病院のコストをいかに削減できるか示しましょう。点滴液、母乳代用品、哺乳びんの購入費用や、スタッフが赤ちゃんのケアに費やす時間を節約し、低出生体重児や新生児の入院期間を短縮したり投薬を抑えたりできることがわかってもらえるでしょう。

●母乳育児を支援し広めるためには、何をおいてもまず、母乳育児の根幹である「女性の権利」に沿った活動が求められます。そのうえで、経済的なメリットと、乳児用食品にかかる輸入コストや保健医療にかかるコストを減らすことで、必要な費用をいかに簡単にまかなうことができるかを示し、母乳育児を推進する活動を後押ししましょう。

情報源
1. Tolstoplatov B, et al. (1996). Cost of Infant Feeding in the Former Yugoslavia. International Child Health, vii(1);39-44.
2.Gilman RH and Skillikorn P(1985).Boiling of drinking water:can a fuel scarce community affort it?Bulletin of the World Health Organisation 63:157-163
3. Cohen R and Mrtek MD (1995). Comparison of Maternal Absenteeism and Illness Rates Among Breastfeeding and Formula Feeding Women in Two Corporations. American Medical Journal of Health Promotion 10(2):148.
4. Linkages, AED (1998). Ghana: suboptimal breast-feeding in infants. Washington, DC: Linkages, AED.
5. Network Newsletter of the Association for Rational use of Medication in Pakistan 5:1, March 1996, page 13.
6. American Academy of Pediatrics Working Group on Breastfeeding (1997). Pediat rics 100(6): 1035-9.
7. Cohen RJ, et al (1994). Effects of age of introduction of supplementary foods on infant milk intake, total energy intake and growth: a randomized intervention study in Honduras. Lancet 344: 288-93.
8. WHO Working group on Infant Growth (1994).An evaluation of Infant Growth. Geneva: WHO.
9. Smith JP and Ingham LH (1997). Unpublished manuscript on the economics of breastfeeding in Australia.
10. Oshaug A and Botten G (1994). Human milk in food supply statistics. Food Policy 19(5):479-482.
11. Hatby A and Oshaug A (1997). Human milk?an invisible food resource. Washington DC: International Food Policy Research Institute.
12. Tuttle CR and Dewey KG (1996). Potential cost savings for Medi-Cal, AFDS, Food Stamps and WIC programs associated with increasing breast-feeding among low-income Hmong women in California. J Amer Dietetic Assn 96:885-890.
13. Riordan JM (1997). The cost of not breastfeeding: a commentary. Journal of Human Lactation 13(2):93-97.
14. Drane D (1997). Breastfeeding and formula feeding: a preliminary economic analysis. Breastfeeding Review 5(1):7-15.
15. Gupta A and Rhode J (1993). Economic Value of Breast-feeding in India. Economic and Political Weekly, June 26, pp. 1390-3.
16. WELLSTART International (1996). Breastfeeding Promotion: A Cost Effective Intervention. Washington DC: WELLSTART EPB.
17. UNICEF (1998). State of the World’s Children. New York:UNICEF.

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節約だけではない母乳育児の価値

経済的なデータを出すことは、政策立案者に、母乳育児の大切さをわかってもらう機会になりますが、経済的な価値を強調するあまりに、母乳育児のよりすばらしい価値を低く見積もることになってはならないとWABAは考えています。母乳育児には確かに経済的な価値があり、それもまた人間としての幸福ではありますが、それよりはるかに大きな価値もあることを忘れてはなりません。母乳育児は赤ちゃんとのスキンシップになりますし、赤ちゃんとお母さんのきずなを確実に深めます。哺乳びんによる栄養法では、これを保証することはできないのです。

さらに、母乳の産生や食べ物としての価値を話し合うとき、自分が牛と比べられているかのように感じる女性もいるので、配慮が大切でしょう。

政策立案者は、母乳だけで育てることの大切さを知り、母親が支援を受けられるようにし、働く女性の便宜を図り、母乳育児が知らない間に阻害されないように、乳児用食品業界(乳業会社)を規制する制度を作らなければならないことを知る必要があります。

今年のWABAのパンフレットは、母乳育児の経済的な価値を提示し、経済的な利点を見直すきっかけ作りのために作成されました。けれどもWABAは、コストの節約のみが母乳育児の利点ではないし、中心的な利点ではないことを重視しています。

何といっても、お母さんと赤ちゃんには、母乳育児をする権利があります。女性が、母親業とほかの仕事のどちらかのみを選ぶ必要があるような状況は好ましくありません。社会のためにも、母乳育児を推進・支援するプログラムに資金を提供し、働く母親の授乳時間を労働時間として認める、さらにいえば、母乳育児に報酬を出すくらいのことがあってもいいのです。カナダのケベック州では、1995年以来、公的援助を受けている母親が母乳育児をしようとしている場合には、助成金を支給するプログラムがあります。

母乳で育てている母親は、「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」に書かれているように、母乳代用品の宣伝や推進から保護される必要があります。

母親には母乳で育てる権利があるし、赤ちゃんには母乳を飲む権利があります。母乳育児は、情報をたくさん持った人、お金持ちの人、幸運な人だけがかなえられる贅沢であってはならないのです。

母乳育児:いのちの教育 WABA1999

dollwbw99bWABA’99(人形写真:この出産と授乳人形はブラジルのRecife市にあるLactea and Origem社のデザインです)

界中で、乳幼児期における子どもの発達と家族内でのふれあいの大切さについての知識が向上し、より関心が寄せられるようになってきています。保育の質を高めることや、子どもの発達上のニーズに関する知識を教育システムや教育課程の中で教えていくことに、社会の関心が高まっているのです。ところが、人間の発達や家族生活の質にとって、母乳育児がいかに大切であるかについて考察されることはほとんどありません。

最近の研究によると、母乳育児が赤ちゃんの健康や栄養のため、また赤ちゃんが信頼や安心感をはぐくむために大切なだけではなく、脳wbw1999_2の発達や学習の基礎をつくるためにも重要であることがわかってきました。(p.3の図表とp.★の参考文献参照)例えば

●母乳中の特殊な脂肪酸は知能指数(IQ)を高め、よりよい視力の獲得に役立つ。 (Andraca I and Uaury R, 1995, p.★の参考文献参照)
●母乳で育てられた赤ちゃんは、これまで聴覚障害や学習の遅れを招くとされてきた耳の感染症にかかりにくい。
●母乳で育った子どものほうが、学業成績がよいという研究が複数ある。しかもこの結果は、子どもがかなり大きくなった中等教育が終わる時点で、社会階級や母親の教育程度や人種の違いといった影響を考慮に入れてもなお、変わらなかった。 そこで、今年の世界母乳育児週間は、母乳育児の大切さを教育システムに浸透させ、だれもが自然に学習できるようにする必要性をテーマにします。 強調すべきは、乳児は、生後6ヵ月間まで、母乳だけで育てられるべきだということです。そしてその後も、適切な補完食(離乳食)を食べつつ、2歳かそれ以上になるまで母乳を飲み続けるのが最適です。

wbw1999_3INDEX
「母乳育児:いのちの教育」がテーマの1999年世界母乳育児週間は次のような目標を掲げます
なぜ、母乳育児教育がそれほど必要なのでしょうか
あなたは母乳育児に優しい文化の中で暮らしていますか
乳児栄養法別にみた知能指数(IQ)
母乳育児の何について教えたらいいのでしょうか
教育の中に母乳育児を組み入れるための活動
母乳育児を推進するためにどのようにメディアに働きかけたらいいでしょうか
母乳育児にやさしい保育園のための10ヶ条
行動のためのアイデア
「猫は猫の赤ちゃんを産む」

「母乳育児:いのちの教育」がテーマの1999年世界母乳育児週間は次のような目標を掲げます。
●乳児の発達と成長のためのスタンダード(標準)として、母乳育児を保護・推進・支援することの重要性を社会全体に広めること
●公教育・私教育・年齢・性別の別なく、すべての教育に、母乳育児や適切な乳児栄養法に関する学習が組み込まれるよう促すこと
●専門機関、医学部やそのほかの教育機関、保健医療の職能団体、公立学校、私立学校、病院、コミュニティーセンターなどの教員や講師と協力して、母乳育児に関するカリキュラムを改善すること
●1999年の世界母乳育児週間の活動に、未就学児からティーンエージャーまでをも巻き込み、さまざまな年齢にあった教材を提供すること
●母乳育児の経験と実践を、子どもの発達のための教材や玩具に反映させるよう促すこと。

母乳育児は教育の好スタートを約束します

wbw1999_1乳育児は、母乳中の栄養と母と子のふれあいによって、子どもに最適な脳の発達を促します。

 

乳育児は、学習障害や視覚障害や発達不良を引き起こす可能性のある病気から赤ちゃんを守ります

wbw1999_7乳育児によって、母と子はひんぱんにふれあうことになります。そのため、赤ちゃんは自然と(母親の)言葉や、お手本となる社会的な行動や、(学習に)大切な刺激にさらされます。

乳育児はより視力を発達させ、視覚を研ぎ澄まさせます。それによって、将来読んだり学んだりする下地ができます

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「母乳育児:いのちの教育」がテーマの1999年世界母乳育児週間は次のような目標を掲げます。

● 乳児の発達と成長のためのスタンダード(標準)として、母乳育児を保護・推進・支援することの重要性を社会全体に広めること
● 公教育・私教育・年齢・性別の別なく、すべての教育に、母乳育児や適切な乳児栄養法に関する学習が組み込まれるよう促すこと。
● 専門機関、医学部やそのほかの教育機関、保健医療の職能団体、公立学校、私立学校、病院、コミュニティーセンターなどの教員や講師と協力して、母乳育児に関するカリキュラムを改善すること
● 1999年の世界母乳育児週間の活動に、未就学児からティーンエージャーまでをも巻き込み、さまざまな年齢にあった教材を提供すること
● 母乳育児の経験と実践を、子どもの発達のための教材や玩具に反映させるよう促すこと。

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なぜ、母乳育児教育がそれほど重要なのでしょうか

何をどう思い、どう感じるかということは、幼少期に、文化的・状況的・社会的影響によって形成されます。家族や友人や教師によって、何が好ましく、何が好ましくないのかという信念は左右されるのです。母乳育児に対して肯定的な態度を子どもがとれるようになるためには、小さいときから、なぜ母乳育児が母と子にとってよい選択なのか、なぜ母乳育児を支援しなければならないのかということを学べるようにする必要があります。

公教育や非公式な教育を通して、子どもや若者や大人が母乳育児についての正確な情報を身につける機会はたくさんあります。母乳育児についての情報は、科学、生物、家族研究、栄養学や家政学などの科目に容易に入れることができます。教師の工夫しだいで、数学、芸術、社会科、歴史、マーケティング、ビジネス、環境学、あるいは工学の中でさえ母乳育児を教えることができるでしょう。男性と女性の両方の態度が社会規範に影響を与えることを考えると、男の子にも女の子にも母乳育児について教えることが必要です。

ものごとを吟味して考えるスキルや、そのスキルを母乳育児の課題に応用することで、子どもも若者も大人も、さまざまな栄養法のメリット・デメリットを吟味し、自分自身の意見を持ち、十分な情報を得たうえで選択ができるようになります。学んでいくうちに、いかに人工栄養法(哺乳びんで育てること)の販売促進をする広告主からの有形無形の圧力を受けているか、どうしたら職業を持つ女性が母乳育児を続けることができるのか、また、母乳育児中の母親が社会や会社からどのような支援を必要としているのか、といったことがわかってきます。そのようなことを通して、それぞれの人生の中で、十分な情報をもとに決定ができるようになることでしょう。

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あなたは母乳育児にやさしい文化の中で暮らしていますか

母乳を飲ませようが、哺乳びんで授乳しようが、変わりはない、とされてはいませんか? 母乳育児は「もっとよいもの」を買う余裕がない場合や「働いていない女性」がすることだという風潮はありませんか?
● 保健医療専門家は母乳と乳児用人工乳はほとんど違いがないと教えられていませんか?
● 教科書や子どもの本に、母親や父親、もしくは看護師が、あたかも赤ちゃんを育てる自然な方法のようにして哺乳びんで人工乳を与えている写真やイラストが載っていませんか?
● 哺乳びんやおしゃぶりが赤ちゃんのシンボルマークのように使われていませんか。例えば、赤ちゃんの誕生祝いのカードや公共施設の授乳室などのマークはどうでしょうか?
● 母親が、人前での授乳を慎むべきだと言われたりしませんか?
● 赤ちゃんは、小さなころからひとりで部屋に寝かせるのがいいと、両親が思わされてはいませんか?
● 赤ちゃん人形は哺乳びんつきではないですか。当たり前のこととして、哺乳びんをすすめるような玩具はありませんか?
● 赤ちゃんと早い時期から離れることや、赤ちゃんを「自立させること」がいいとされていませんか?
そして、赤ちゃんが母親と離れやすくする手段として、哺乳びんやおしゃぶりがすすめられてはいませんか?

以上の問いの答えがほとんど「はい」だったら、あなたは「母乳育児を軽んじる文化」の中で暮らしていると考えられます。

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乳児栄養法別にみた知能指数(IQ)
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BF=母親の乳房から直接、母乳を飲んで育った子ども
BMF=(搾母乳を含む)母乳を飲んで育った子ども
FF=人工乳で育てられた子ども

(1)Morrow-Tlucak M, Haude RH, Ernhar CB, Breastfeeding and cognitive development in the first 2 years of life. SocSciMed 1988; 26:635-9
(2)Ferguson DM, Beautris AL, Silva PA, Breastfeeding and cognitive development in the first seven years of life, SocSciMed. 1982; 16:1705-08
(3)Lucas A, Morley R, Cole TJ, Lister G, Leeson-Payne C. Breastmilk and subsequent intelligence quotient in children born preterm, Lancet 1992;339:261-4
(4)Horwood LI, Fergusson DM, Breastfeeding and later cognitive and academic outcomes, Pediatrics 1998;101:p.e9
(5)Rive E, Agostoni C, Biasucci G, Trojan S, Luotti D, Fiori L, Giovannini M, Early breastfeeding is linked to higher intelligence quotient scores in dietary treated phenylketonuric children. Acta Paediatri 1996;85:56-8
(6)Rodgers B, Feeding in infancy and later ability and attainment: A longitudinal study. DevMedChild Neurolo. 1978;20:421-6

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母乳育児の何について教えたらいいのでしょうか

再び母乳育児を文化的に当たり前にするためには、教育システムの中に母乳育児についての基本的なメッセージを組み入れることが大切です。

例えば
●乳房から飲むというのは赤ちゃんにとってごく普通の食事方法で、母親と赤ちゃんは商業的な影響を受けずに母乳育児をする権利があります。
●母乳育児中の母親と赤ちゃんはどんなところでも歓迎されるべきです。母親と赤ちゃんは、学校、宗教施設、レストラン、公共交通機関、職場、友人宅でも、病院や買い物に行ったときでも、おっぱいを飲ませる/飲む権利があります。
●赤ちゃんを抱っこしてどこでも連れて行くことは、赤ちゃんに安心感とともに脳の発達を促す刺激を与えます。
●母親は働く必要があるかもしれませんが、特に生後1年間は、赤ちゃんには母親が必要です。
【訳注】このことで母親が働くことを否定するものではありません。母乳育児と働くことは両立できます。
●父親は直接おっぱいをあげることだけはできませんが、母親が赤ちゃんのためにするそのほかの世話のほとんどをすることができます。父親は赤ちゃんをゆらゆらあやしたり、話しかけたり、おむつをかえたり、お風呂に入れたり、遊んだり、寝かしつけたり、抱っこしたりできます。
●母乳育児は、赤ちゃんが大人の食事に慣れていく準備になります。母乳は成長していく子どものニーズに合うように変化していきます。
●赤ちゃんと一緒に寝るのは自然なことです。依存を助長する悪い習慣などではありません。
●人工乳やおしゃぶりのイメージは製品を売るために作りだされたイメージにすぎません。こうした製品は赤ちゃんにとって必需品ではありません

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教育の中に母乳育児を組み入れるための活動

●チリでは、「赤ちゃんにやさしい保育園」の10ヵ条を全国保育連盟(JUNJI)が作りました(★ページ参照)
●ペルーでは、CEPRENとPROANDESという団体がUNICEFと、地方の教師のための、乳児栄養法についての研修プログラムを作りました。この研修の成果はすでに現れており、教師が生徒に働きかけた地域の母親の間では、初乳を捨てずに与えるように変わってきたという報告があります。
●カナダの先住民の共同体で、地域の教師とピアカウンセラーは母乳育児クラスを作りました。そこでは、母乳育児についての「物語を話し聞かせる」ことによって、若者の間で母乳育児を肯定的にとらえて実践する人が増えるという成果がありました。
●プエルトリコでは、保健医療専門家は資格の更新の際に3単位の母乳育児教育のコースを取ることが必要とされています。
●アメリカ小児科学会は、医師が母乳育児支援のスキルを身につけられるように「外来小児科における母乳育児プログラム」を始めました。
●ニューヨーク州保健局では、幼稚園児から高校の最終学年までを対象とする「母乳育児:健康への第一歩」というモデル・カリキュラムを作りました。詳細は保健局のウェブサイトで読むことができます。http://www.health.state.ny.us/nysdoh/consumer/child/child.htm

●ブラジルでは、地域とORIGEM, AMIGAS DO PEITOなどの母親支援グループがラジオや劇場を使ったり、母乳育児人形*を製作したりして地域教育プログラムを開発しています。
【訳注】表紙(p.1)の人形のこと。
●ニカラグアでは、母乳育児中の教職員・学生・大学関係者・地域住民を支援するために「女性と赤ちゃんにやさしい大学運動」を6つの大学で始めて、母乳育児とそのやりかたや援助法を教育課程に組み込んでいます。
●フィリピンでは、ARUGAAN*が職場内保育所で、乳幼児初期の赤ちゃんへの刺激、母乳、自然で伝統的なフィリピンの食事(補完食)を与えるシステムを開発しました。母親の母乳育児を支援し、その土地でとれる野菜を積極的に使った食事(補完食)を保育所でも家庭でも推進することで、ARUGAANは栄養不良の被虐待/育児放棄児を非常に短期間のうちに回復させることに成功しました。
【訳注】母乳育児と伝統的な食事を重視する保育施設を運営するNGO
●アメリカでは、大学の単位が取得できる母乳育児教育コースは、通学制・通信制ともに大幅な増加を見せています。
●アメリカでは、ソーシャル・マーケティング【訳注:マーケティングの諸概念や技法を社会的な目標達成に役立てること】運動もおこなわれています。母乳育児を推進するために、1997~98年のアメリカWIC【訳注:低所得の女性と乳幼児のための栄養プログラム】の「愛情ある支援」キャンペーンが10の州で
実施されました。また、カナダ政府の「いつでもどこでも母乳育児」キャンペーンでは、ポスターやシールが作成され、政府広報 や公共交通機関での広告やパンフレットが製作されました。

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母乳育児を推進するためにどのようにメディアに働きかけたらいいでしょうか。

wbw1999_4●メディア向けに母乳育児と母乳がいかに子どもの発達を促すかについてのファクトシート(科学的知見に基づく概要書)を作りましょう。
●母乳育児を好意的に描いている広告主や企業に対して、激励の手紙を送る運動を組織しましょう。
●母乳育児が否定的に描かれたり、哺乳びんが授乳方法の第一選択肢であるかのように描かれていたりしたら、新聞やテレビや映画に対して抗議の手紙を送る運動を組織しましょう。
●メディアに母乳育児を支援している会社とそうでない会社についての情報を知らせましょう。
●テレビのプロデューサーに、アニメの中で母乳を飲んでいる赤ちゃんを描くようにお願いしましょう。
●子ども向けの本の作者に、本やお話の中でで母乳育児についてふれてもらうようにお願いしましょう。
●報道機関やIBFAN(乳幼児食品国際行動ネットワーク)に「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」や国内法・条例違反の事例を報告しましょう。Baby Milk Action(http://www.babymilkaction.org/)やIBFAN(http://www.ibfan.org/)にメールを書きましょう。

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母乳育児にやさしい保育園のための10ヵ条
チリの全国保育園連盟(JUNJI)が作った「母乳育児にやさしい保育園」のための10ヵ 条を守って「母乳育児にやさしい保育園運動」を盛り立てましょう。

1.託児所や保育園の年間計画に、例外なく、母乳育児についてのテーマを組み入れるようにしましょう。wbw1999_8
2.すべての職員が研修を受け、母乳育児を推進し支援する活動の即戦力になれるようにしましょう。
3.入園・入所している子どもの家族すべてに、母乳育児の利点を知らせましょう。
4.妊娠中の女性、授乳中の母親、そして母乳育児に関心のありそうな家族との教育的活動を活発にしましょう。
5.母乳育児について、子どもが参加できるような学習体験を促しましょう。
6.保育園や託児所で母乳育児が続けられるように支援しましょう。
7.赤ちゃんが6ヵ月までは母乳だけで育てられるように推進しましょう。
8.おしゃぶりを使わないようにしましょう。
9.教育関係者(親、教職員、管理者、保育者など)が協働して母乳育児支援グループを作るように推進しましょう。
10.保健所や地域の活動団体と協力して、母乳育児や乳児栄養に関する合同イベントを進めましょう。

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行動のためのアイデア

教師と親
●あなたの地域の教育委員会やカリキュラム開発にかかわっている担当者と連絡を取って、母乳育児が人間発達学、家庭生活学、社会学、心理学、歴史学、女性学、家政学、保健体育、科学、生物学などの科目に取り入れられるように提案してみましょう。
●上記の科目を教える教師の資格更新条件の中に、母乳育児についての学習を取り入れるように働きかけましょう。
●「母乳育児にやさしい保育園運動」を推進しましょう。(「母乳育児にやさしい保育園のための10ヵ条」を参照)

小学校(低学年)の教員
●図書館に母乳育児についての肯定的なイメージや実践を載せている本があるか確かめましょう。母乳育児について否定的な本を肯定的な良質の本と入れ替えましょう。
●子どもたちに母親や近所の人が母乳育児についてどんな体験をしたか聞いてくるように言いましょう。そして何を聞いてきたのかをクラスで話し合い、間違った情報については訂正しましょう。
●母乳の成分が何のためにあるのかが発見できるようなクイズを作ってみましょう。
●母乳育児についての子ども向けの塗り絵ノートを作成しましょう。母乳育児についての絵本や歌を作ってみましょう。WABAの「母乳育児:自然のとる道」(子ども用の絵本:未訳)を使ったり、母乳育児についての物語、歌、図画などのコンテストを開催したりしましょう。
●子どもたちに親や近所の人をインタビューするように言って、赤ちゃんが母乳以外の食べ物をいつ食べ始めたのかを聞いてきてもらいましょう。そして、クラスでその答えについて話し合い、母親が赤ちゃんにほかの食べ物をあげる時期やどんな食べ物をあげるのかが、人によって違っている理由を考えてみましょう。
●哺乳びんをすすめるような玩具、例えば哺乳びんやおしゃぶり付きの人形が教室にないか調べてみましょう。親や教師に、そのような玩具を母乳育児人形に替えたり、哺乳びんやおしゃぶりを子ども用のコップや皿、スプーンなどに替えたりするよう提案しましょう。
●保健室や家庭教育センターに、母乳育児についてのポスターやパンフレットなどの情報を置くようにしましょう。

小学校高学年や中学高校の教員や管理職
●カリキュラムを見直して適切な教科に母乳育児についての情報を組み入れる作業グループを作りましょう。例えば、母と子のイメージを考える授業、生殖についての理科の単元、乳児栄養についての家庭科の単元、母乳・人工乳論争や南北問題についての社会の授業、食の安全保障やエコロジーについての時事問題の授業、乳母という職業について歴史の単元など、さまざま考えられます。
●ニューヨーク州保健局が作成した、5歳(就学前)から18歳(高校卒業)までを通してのモデル・カリキュラムを採用したり、参考にしたりしましょう。
●10代で母親になった学生が、母乳で育てている赤ちゃんを学校に連れてきたり、学校で母乳をしぼったりできるような学校の方針を定めましょう。
●教職員が仕事を続けながら母乳育児もできるような学校の方針を定めましょう。

大学や専門教育に関わる教員
●乳児栄養法の実践について情報を得るための最新のアンケートや研究手法を紹介しましょう。
●人工乳の使用と母乳育児についてテレビでどのように表現されているかについて、学生に、モニタリングに挑戦してもらいましょう。その結果をマーケティングや英語、社会学、歴史学、法学などの講義で討論しましょう。
●学生にインターネットで母乳育児と人工栄養について調べさせて、その結果を話し合いましょう、
●母乳で赤ちゃんを育てている母親を赤ちゃん連れで教室に呼び、経験を語ってもらいましょう。
●構内に教職員や学生が使う託児所や搾乳室を設けましょう。
●学生に母乳育児に関連する課題でレポートや論文を書かせましょう。
*学生が実習先の地域の保健センターや教育実習先の学校で、母乳育児の重要性や適切な乳児栄養法について地域の人たちに啓発するように働きかけましょう。
●学生にそれぞれの母乳育児歴を発表してもらい、自分や自分の母親の母乳育児体験を分析させましょう。
●「女性と赤ちゃんにやさしい大学運動」を発展させましょう。(WABAのウェブサイト参照)
●すべての専門教育のカリキュラムに母乳育児を組み入れましょう。例えば、経済学、マーケティング、環境学、歴史学、経営学、社会学、文化人類学、女性学、心理学、ソーシャルワーク、微生物学、科学、教育学、法学、医学、芸術学など。

保健医療専門職
●医学部、看護学部、栄養学部などの保健医療専門家の教育機関で、母乳育児クリニックを作りましょう。
●同僚の教員、学部長や大学長などに、今のカリキュラムの教材の中で母乳育児について書かれた内容を見直したり、改善したりする必要があることに気がついてもらいましょう。
●厚生省や文部省の主要メンバーに、カリキュラムの変更の必要性に気づいてもらい、全国的な母乳育児プログラムと連動して、カリキュラム検討のための作業に早く取り組んでもらうように促しましょう。
●母乳育児についての良質な情報が載っている教科書を使いましょう。あるいは教科書を改訂して母乳育児の具体的なこつの情報や母乳育児援助法について載せるように要求しましょう。
●母乳育児推進や臨床的な母乳育児援助法に焦点をあてた集中的な実習の経験が持てるようなプログラムに参加したり、(そうしたプログラムがなければ)創設したりしましょう。
●保健医療に関する資格試験や業務基準に母乳育児支援法を取り入れましょう。
●自分の属している専門団体や、インターネット上の既存のネットワークを通して、自分たちの経験や教訓、模範になるような話や情報源が共有できるようにしましょう。

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「猫は猫の赤ちゃんを産む」

ニューヨーク州保健局によるすべての学年の子どもたちのために開発された活動の手引きからの抜粋

『母乳育児:健康への第一歩:すべての学年の子どもたちのための母乳育児教育の手引き』
ニューヨーク州保健局 1995年 http://www.health.state.ny.us/

生徒は他の分野の勉強をしながらも考えるスキルを養うことができます。5歳から18歳までの子どもの教育カリキュラムの一例です。

幼稚園児童(未就学児)
「猫は猫の赤ちゃんを産む」
この単元では子どもに、大人になった動物は同じ種類の動物の赤ちゃんを産むという考えを教えます。
また、動物のお母さんは、生まれてくる赤ちゃんの世話をするということがわかるようになっていきます。
第1課 生徒はお母さん鳥を探そうとしているひな鳥の話を聞きます。(関連科目:言葉、理科、家庭生活)
第2課 動物の親子合わせ遊びをしてもらいます。(理科、ことば、音楽、科学生活、図画)
第3課 動物が子に栄養をやったり世話をしたりする特別な方法について学びます。(ことば、図画、算数、家族生活、理科、保健体育)

小学校6年生
「影響は続いていく」
この単元の課題は、栄養の授業や、麻薬・アルコール・タバコ予防教育に続けて学習することを想定しています。健康や栄養の観点から、今自分がしていることが将来にも影響を与えるということを生徒が自覚できるように作成されています。
第1課「自分と赤ちゃんのために食べる」(図画、家政科、保健、栄養)
第2課、第3課、第5課「私の赤ちゃんに絶対に麻薬はあげない」(保健、理科、国語、図画)
第5課「母乳のほうがいい?」(国語、保健、理科)
第6課、第7課、第8課「気をつけよう」(理科、算数、保健、国語)

母乳育児:それはあなたの権利です!WABA2000

私たちはあなたの母乳で育てる権利を応援します  WABA2000

毎年、世界母乳育児行動連連盟 (World Alliance for Breastfeeding Action) では、母乳育児の保護、推進、支援のために重要なテーマを選んで世界母乳育児週間を提唱しています。今年の母乳育児週間は人権としての母乳育児に焦点をあてます。少なくとも生後6ヵ月間母乳だけを与え、その後は適切な離乳食を補いながら2歳かそれ以降まで、母乳育児を続けることで、子どもとその母親が、最適な健康状態を保持することができます。母親がこのような母乳育児をできる環境が必要といわれています。母乳で育てることは母親の権利であり、子どもの食事や健康や保護の権利を実現させることに大きな貢献をしています。

INDEX
WABA2000の目標
どうすれば、母乳育児が権利として認められるのでしょうか?
母乳で育てる権利は誰のものですか?
なぜ、母乳育児は権利であると強調することが大切なのですか?
母乳育児は個人の問題だから、政府ができることはないのではないでしょうか?
政府がすべきこと
自分の母乳育児の権利が妨げられたら?
母乳育児の権利を支援する条約
一般的な認識
販売流通に関する制度
母性の保護
働く母親の特別なニーズ
WABAの役割とイノチェンティ宣言
行動のためのアイデア

WABA2000の目標

●母乳育児は母と子の権利であるという意識を高める。
●世界における、又は国内に存在する、(あるいは存在すべき)正式な法的手段についての情報を提供する。
●この権利が、すべての国の家庭、地域、政府レベルで尊重され、守られ、行使されるように世論を促す。

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どうすれば母乳育児が権利として認められるのでしょうか

●女性と子どもは人権の主体であり、慈善事業の対象ではありません。
●母乳育児は、基本的人権、すなわち、食べることと健康であることの権利の1つです。
●母乳は、乳幼児にとって最良の食べ物です。赤ちゃんはへその緒を通して得る栄養分と抵抗力を引き続き母乳から得ることができます。母乳にはバランスのとれた栄養があり、予防接種と同じ働きにより、病気にかかりにくくする働きがあります。
●母乳育児は、よりよい子育てに欠かせないものであり、精神的発達と健康的な身体発育に貢献しています。
●母乳育児は、乳がん、卵巣がん、鉄分欠乏貧血、腰の骨折のリスクを軽減し、女性の健康を守っています。

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母乳で育てる権利は誰のものですか

すべての女性が、その子どもに母乳を与える権利をもっています。ほとんどの政府は、権利の実現のために、以下の国際的取り決めの一つ以上に関わっています。
●「子どもの権利条約」(CRC)
●「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(CESCR)
●「女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(CEDAW)
●「国際労働機関(ILO)の母性保護条約」
また関連したものに、母乳代用品の販売流通に関する国際規準(WHO規準)と、世界保健総会の関連決議」が、各国の法的規範となっています。あなたの権利は、このような国際的な条約、また国内の法律の保護のもとにあるのを自覚することが重要です。

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なぜ母乳育児は権利であると強調することが大事なのですか?

母乳育児はすべての母親の権利であり、すべての子どもが適切な食べ物を与えられ、最大限の健康を享受するために不可欠なものです。権利としての母乳育児には、次のような事柄が含まれます。
●子どもは、生まれた時から健康的な発達が保障されるために、十分な食べ物と栄養を与えられなければなりません。このことは、生後6ヵ月間の完全母乳育児(注1)と、その後2歳になるまでは、そしてそれ以降も、適切な食べ物とともに母乳を与えることを意味します。

(注1)生後半年以下の月齢で赤ちゃんに母乳以外の食べ物や飲み物が与えられていない状態を、その利点を調査する研究上の理由から特に「完全母乳育児」exclusive breastfeeding と呼びます。また、それに加えて、欲しがる時に欲しがるだけ与えること、そして、おしゃぶりなどの他の吸綴を満足させるものの使用もしていない状態を指すこともあります。

● 母乳育児を望んでいる母親が母乳で育てることを妨げられるべきではありません。
● 政府と社会全体は、母乳育児を望んでいる女性を妨げる要因をなくす責任があります。
● 女性は母乳育児をしていることを理由に差別されてはなりません。
● 女性は良質の産前のケアと、赤ちゃんとお母さんにやさしい医療施設を利用する権利があります。
● 女性は、自分たちが広告やその他のいかなる形の販売促進を通してでも、母乳代用品を使わなければならないような圧力にさらされることがないように要求すべきです。

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母乳育児は個人の問題だから政府ができることはないのではないでしょうか?

そんなことはありません。母乳育児に関わる決定は確かに母親がすべきことですが、政府が権利としての母乳育児を保護、推進、支援するためにすべきことはたくさんあります。

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政府がすべきこと

●女性と子どもには、食べることと健康であることについての権利がある、と定めている法律を認める。
●出産後、完全母乳育児(注1)を行うために、最低4ヵ月間、望ましくは6ヵ月間を産休とする。
●母親の復職のために、母乳育児のための休憩時間など、柔軟な労働時間を(法により)定める。
●働く母親が、職場で授乳や搾乳をしたり、適切な条件で母乳の保管ができるような施設を、職場に整備するように雇用者に求める。
●「ILOの母性保護に関する決議」第103号の内容をより広めるように支援する。
●すでにある権利についての認識を広めたり、その権利の遂行を支援したりする。
●公衆の場における女性の授乳の権利を保護する。
●母乳育児の利点についての正確な情報を保健・医療の関係者や妊娠中の女性へ提供し、妊娠中の女性が情報提供に基づく決定(インフォームド・ディシジョン)ができるようにする。
●医師、助産師、看護師を含めた医療関係者に、確かな母乳育児のマネジメント(援助方法)を含む、母乳育児の方法や保護、推進、支援についてのトレーニングを行う。
●「赤ちゃんにやさしい病院運動」の一部である、WHOとユニセフが発布した「母乳育児を成功させるための10ヵ条」を、すべての産科施設で行うよう促す。
●保健・医療の関係者や一般の人に対して、特に妊娠中の女性や産後すぐの女性への、母乳代用品、哺乳びん、人工乳首の販売促進を止めさせる。

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母乳育児は病気に対する予防になります
例えば・・・
・下痢を含む消化器系疾患
・肺炎を含む呼吸器系疾患
・耳の病気 (中耳炎)
・尿路感染症

自分の母乳育児の権利が妨げられたら?

国際協定を批准するすべての国は、定期的に、国民の権利が守られるために何をしているかを国連に報告しなければなりません。これらの報告は、国連人権高等弁務官事務所に送られ、政府代表を交えて公開での協定の監視委員会において討議されます。その政府が、母乳育児の権利の保護も尊重もしていない場合、義務違反となり、国内の組織により以下のような行動がとられるでしょう。
●義務を守るよう、政府に働きかける。
●その国の母乳育児の状況を国連委員会に知らせる。(注2)
●子どもの権利会議(CRC)の国内NGO連合団体に連絡する。
●メンバーのNGO団体に、母乳育児も彼らが擁護すべき権利として加えるように促す。
●女性が職場復帰後も授乳できるような法の制定を政府に働きかける。
●労働者団体や労働組合に対し、職場での母乳育児中の女性に対する差別の問題を、ILOに持ち込ませるよう働きかける。
●WHO規準の遵守を監視し、WHO規準違反が母と子の母乳育児の権利侵害であると政府に知らせる。

(注2) 母乳育児の権利に関して、最も参考になる国連委員会は「子どもの権利委員会」「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会」、「女性に対する差別撤廃委員会」です。委員会に関する詳しい情報と、どのように連絡をしたらよいかについては、国連人権高等弁務官事務所<http://www.unchr.ch/>にお尋ねください。
国連の人権に関する条約の内容については、http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken.html
「ILOの母性保護条約」第103号については、http://www.jichiro.gr.jp/psi-world/news-policy/polcy/maternity-protection/contents.htmが参考になります。
なお、「ILOの母性保護条約」における「母性保護」とは働く女性の妊娠・出産・授乳のための権利の保護を意味します。

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母乳育児の権利を支援する条約

 「子どもの権利条約」
子どもには最大限の健康的な状態を享受する権利があり、政府は、栄養のある食べ物を保障すべきであり、親子は栄養や母乳育児の利点についての情報を与えられるべきであると主張しています(第24条)。(192ヵ国が批准。日本は1994年に批准)

● 「経済的、社会的、及び文化的権利に関する国際規約」
「経済的、社会的、及び文化的権利に関する国際規約」は食べ物と健康の権利を支持しています。十分な食べ物を得る権利(第11条)についての一般コメント12の中で「(この権利を保障するために)多様な食習慣や母乳育児を含めた適切な消費や食事のパターンを維持し、採用し、強化するための施策が必要である」と述べています。(147ヵ国が批准。日本は1979年に批准)

 「女性に対するあらゆる形態の差別の撒廃に関する条約」
「女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」では、女性は妊娠と授乳(母乳育児)に関して適切なサービスを提供されるべきだと述べられています。(174ヵ国が批准。日本は1985年に批准)

 「lLOの母性保護条約」
「ILO(国際労働機構)の母性保護条約」第103号(2000年)では女性は最低限、出産前後14週の有給休暇と、職場復帰後の給料減額なしの授乳時間が与えられるべきだとしています。(改定前の第103号条約(1952年)を批准していたのは37ヵ国。未批准でもILO条約より働く母親に手厚い制度を持つ国もある。日本は未批准)

 「母乳代用品の販売流通に関する国際規準(WHO規準)」
「母乳代用品の販売流通に関する国際規準(WHO規準)」は母乳の代用品や哺乳びんや人工乳首の販売促進の方法を制限し、保健・医療の従事者の母乳育児を推進する責任を強調しています。(WHO規準は20ヵ国で国内法制化、42ヵ国で自発的な同意、46ヵ国で部分的法制化)

国際条約は批准されれば、その国での法的な義務と責任が生じてきますが、条約批准の後に政権党が批准時と違う党に変わったとしても、政府には条約を守る義務があります。宣言は(政府を)拘束するものではありませんが、少なくとも道徳的にはなんらかの影響をもたらすものと考えられています。これは、ある事柄に関する国際的な共通理解を示すものなのです。最終的に拘束力のある国際的な条約の採択に発展するか毛しれない運動とも考えられます。

 「イノチェンティ宣言
「イノチェンティ宣言」(1990年)と次のような会議での宣言は母乳育児の権利と関連があります。
*小児栄養に関する国際会議(1992年)
*人口・発展会議(1994年)
*第4回世界女性会議(1995年)
*世界食糧サミット(1996年)


人権とは何でしょうか?

人権とは、それがなくては人々が尊厳をもって生きることができないような基本的条件のことです。人権は決して奪うことのできないものです。人権を失うということは、人間であることをやめるのと同じです。人権は相互に依存しあっています。すべての人権は互いに補い合いながら人権全体の枠組みを構成しています。人権はすべての人が平等に、普遍的に、そして永続的に持っているものです。〔ヒューマンライツUSAよりの抜粋〕

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一般的な認識
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これらの権利の保護、尊重、推進、遂行のためには、母乳育児の重要性を社会的機能として捉え、公的資金によって支えられるべきだという一般的認識が必要です。すべての女性が、母乳育児を開始し継続できるように、十分な手助けがなければなりません。地域のすべての人々、特に小さい子どもに最高の栄養と健康を与えることは、すべての地域の責任です。女性は次のような場面で、母乳育児が地域社会にサポートされていると感じるでしょう。例えば、地域社会が公の場での授乳を歓迎しているとき、困難を克服する支援をされたとき、職場で授乳施設を提供されたとき、医療・保健施設が「赤ちゃんにやさしい」施設であるとき、そして医療・保健の専門家が母乳代用品販売促進に倫理的立場から反対し、母乳育児のために女性を支援するときです。

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販売流通に関する制度

法的整備が必要な場合があります。
「母乳代用品の販売流通に関する国際規準(WHO規準)と関連決議」が、世界保健総会において採択されています。実効性を持たせるには、各国での国際規準が生かされるような立法が必要です。以下がWHO規準の禁止事項です。
●母親への無料試供品の提供
●消費者一般に対する母乳代用品の宣伝
●医療・保健施設での売り込み
●人工乳で育てることを理想化するような言葉や写真
●企業のセールス員による母親へのアドバイスや売り込み

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母性の保護

「妊娠中の女性の保護」は、男女にとって機会と待遇における真の平等の必須条件である」ILO『職場での母性保護』 p51 (1997年)
働く女性にとって、母乳のみで子どもを育てるためには産後6ヵ月の有給の休暇が必要です。6ヵ月という期間はWHOの世界保健総会とユニセフによって推奨されています。復職後も、授乳や搾乳のための施設の利用や、有給の授乳時間が必要です。
しかしながら実際には女性は様々な職場環境にあり、母乳育児に対する障害も多様です。
例えば、年契約や終身契約で働く女性にとって、産休のみが正式に母乳育児できる手段である一方、農業や家業を手伝っていたり、インフォーマルな経済市場(労働者としての基本的な権利が無視された上、要で働いているために政府に把握されないような「非公式な」労働状況)で働く女性は、多くの国で法によっては保護されていません。

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働く母親の特別なニーズ

理論的には産休があったとしても、産休中の手当てがあまりに低かったり、産休により仕事や昇進の機会を失う恐れがあったりすると、取得できないでしょう。また、保育施設が職場にあっても安全で快適な通勤手段がなければ、小さい赤ちゃんのお母さんには利用できません。
これらのニーズが満たされるのはまれです。なぜなら、多くの国で社会全体における女性の地位が低く、女性のために活動する団体も不足しており、多くの国で働く女性のニーズの優先順位は下に押しやられています。
「ILOの母性保護条約」第103号は、
(1) 14週間の産休を与える。
(2) 通常所得の2/3以上の休業所得補償をする。
(3) 出産後の仕事は休暇前と同じレベルとする。
(4) 職場復帰後の解雇が妊娠・出産と無関係であることの挙証責任(証拠を提出する責任)を使用者(雇用者)に負わせるなどを定めています。また、授乳時間に関しては、1日に30分ずつ2回の授乳時間を取ることが認められ、授乳時間を取らない場合には、労働時間を短縮できるということが盛り込まれました。
(注3) 日本はこの改正案に対し、労働者側は賛成、政府と使用者側は反対しました。日本では現状では産休中の所得補償が少ないなど、批准には国内法の整備が必要ですが、日本政府や使用者(雇用者)側には早期に対応するつもりは全くないようです。世界的に見ても、改正前の母性保護条約ですら、加盟国175ヵ国中、批准は40ヵ国程度にとどまっています。

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WABAの役割とイノチェンティ宣言

WABAは、「イノチェンティ宣言」の4つ目の目標(働く女性の母乳育児の権利を保護する法律の制定)のための活動を強化することを目的の1つとして設立されました。「イノチェンティ宣言」は、1990年に多くの国の政策立案者によるWHOとユニセフの会議で採択され、世界保健総会で1991年に承認されました。「イノチェンティ宣言」はすべての政府に次のことを要請しています
(1) 国の母乳育児コーディネーターを任命し、省庁横断的な全国母乳育児支援委員会を結成する
(2) すべての産科サービス施設で、WHOとユニセフの共同宣言(BFHIの基本)にある「母乳育児の成功のための10ヵ条」を満たすサービスが行われるようにする
(3) 「母乳代用品の販売流通のに関する国際規準(WHO規準)とそれに関連する決議」を実行する。
(4) 働いている女性の母乳育児の権利を保護する法律を制定する

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行動のためのアイデア

私たちには、いつでも、どこでも、母乳を飲ませることができるという権利があります。その権利を守り、尊重し、どこでも気軽に母乳を飲ませることができるよう世の中に働きかけましょう。

国際条約などをどのように利用したらいいでしょうか

●このパンフレットを参考にして、目本で批准している国際的な条約や取り決めについて、関連するウエブサイトを見てみましょう。それを見ると、権利としての母乳育児を保護、尊重、推進、支援するために国としてしなければならない義務や法的な責任がわかり、日本での関連する法制度の状態についての情報を得ることができるでしょう。

●メディアや労働組合の発行物を通して、日本が賛同した国際的取り決めによって地域の中で、母乳育児の権利があるということにっいての意識を高めましょう。

●まだ批准や賛同していない国際的な取り決めがあれば、批准するように日本政府に対してロビー活動をおこなうグループを立ち上げましょう。

国内でグループができることはどんなことでしょうか

●母乳育児の全国的支援グループは、ネットワークを生かして、母乳育児に関心のある個人どうしを結びつけ、嘆願書やロビー活動などを通して、政府や雇用主などに共通の関心を伝えるネットワークとして活動するべきです。

●国際的な取り決めの中には国内のNGOによって監視されているものもあります。例えば、「子どもの権利条約NGO連絡事務所」に日本にもそのようなグループがないか尋ねてみたり、自分でそのようなグループを立ち上げたりしてもいいでしょう。
●国連人権高等弁務官事務所のウエブサイト<http://www.unhchr.oh/〉で日本の母乳育児に関する課題についてのレポートを手に入れるのもいいでしょう。

●(国内の法制度として)施行されなければ、条約や取り決めは何の意味も持ちません。監視グループを立ち上げて、関連する法律や人権侵害についてのレポートを発表しましょう。それをこれらの権利の実施状況について監視する国際的な委員会に送りましょう。例えば、母乳育児を支援するグループは、次のようなことに関して「子どもの権利条約」委員会に報告しましょう。母乳育児に関するデータやWHO規準の実施状況や企業の違反、「赤ちゃんにやさしい病院運動」の進展、産前・産後休業制度や育児休業制度の現状。母乳育児とWHO規準の実施が報告書で触れられていなければ、国連人権高等弁務官事務所にNGOレポートを送付し、母乳育児という母と子の健康にとって重要な事項について、政府が報告するのを忘れていることを知らせましょう。(国際乳児用食品行動ネットワークIBFANがこの手助けをしてくれます。<http://www.ibfan.org>)

●母乳育児と「イノチェンティ宣言」での目標を目本がどの程度評価しているかについての評価表を作ってみましょう。WABAの国際的参加型アクションリサーチ(Global Participatory Action Research: GLOPAR)の調査枠組みや方法があなたの調査や評価表の作成に役に立つでしょう。一般の関心を集めて、行動を呼び起こすために、結果を公表しましょう。

どのように地域で母乳育児を支援したらいいでしょうか

●はじめてお母さんになる女性を支えましょう。女性が母乳育児について役に立つ十分な情報を確実に得られ、産婦人科が医学的証拠(エビデンス)に基づいた間題解決型の手順や資料を使うように働きかけましょう。

●(自治体の長や厚生労働大臣、行政の)保健関連の部局、児童福祉関連の部局に世界母乳育児週間を宣言する声明を発表するように求めましょう。

●地域の専門家を集めて記者会見を開きましょう。メディアに世界母乳育児週間についてのサービスを無料で取り上げてもらったり、人工栄養の弊害について放送したり、掲載したりするよう求めましょう。

●政治家や宗教家や有名人に、母乳育児について発言してもらいましょう。

●「赤ちゃんにやさしい地域(baby friendly community)」になるための無料学習会や討論会を主催してみましょう。

●地域の店やレストランの窓にポスターを貼ってもらったり、母乳育児中の母親とその家族のためのお得な特別メニューを考えてもらったりして、世界母乳育児週間に参加してもらいましょう。

●商店街や駅、病院、医院、保健センター、地域センターで展示会を主催しましょう。母乳育児の利点と人工栄養の弊害について説明するようなマルチメディアな展示を利用してみましょう。

働くお母さんは何ができるでしょうか

●雇用上の立場が何であれ、働いている女性の母乳育児の権利が政府と雇用主によって確実に保障されるように働きかけましょう。
厚生労働省に「ILOの母性保護条約」の批准への国としての取り組みについて聞いてみましょう。

●職場で授乳や搾乳の時間を有給でとれるように活動しましょう。

●不安定な条件で働くような女性の母乳育児の権利を支援するための創造的な方法を考え出しましょう。WABAの「種をまこう (Seed Grant Program)」プログラムのような例を参考にしてください。

医療・保健・福祉の専門職は何ができるのでしょうか

●医療専門家に「赤ちゃんにやさしい病院運動」と、’一生涯にわたって健康に影響を与えつづける母乳育児の重要性について知らせましょう。専門職の全国的な集まりで展示ができないか聞いてみましょう。

●地域の病院がWHOの「赤ちゃんにやさしい病院」の基準に合うと指定されているか調べてみましょう。赤ちゃんにやさしい病院の全リストをメディアに送って、発表してもらいましょう。

●日本のWHOやユニセフの代表に、権利に基づいたプログラムを実施しているかどうか尋ねてみましょう。そして、協力しあえるところがないか考えてみましょう。

●父親に、母親学級や母乳育児学級に母親と一緒に出席するようこすすめましょう。

●WHOがすすめている「お母さんにやさしい出産」を含むような、出産に関する質の高い医療サービスや保健ケアサービスが女性に提供されるように支援しましょう。

「母乳代用品の販売流通に関する国際規準(WHO規準)と世界保健総会の関連決議」をどのように利用したらいいでしょうか

●厚生労働省がWHO規準を実行するために何をしているのか調べましょう。子どもの権利条約やその他の人権に関する取り決めで目本が果たすべき役割を実行するために、全面的な実施を促しましょう。

●保健・医療の専門職(小児科医、看護師、一般医師など)がWHO規準をよく知っており、WHO規準を評価しているか、また地域や国際的な保健ケア施設が実践の中にWHO規準を取り入れているかを調べてみましょう。

●WHO規準とWHOの世界保健総会の決定に違反している事例がないか監視し、あればそれを政府やNG0や違反している企業に報告しましょう。もちろん名前入りで。

●国内の監視データを使って、WHO規準の実施と母乳育児の推進についてメディアが取材するように促しましょう。

●国際乳児用食品行動ネットワーク(IBFAN)に連絡をとって、いっしょに活動できないか尋ねてみましょう。

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logowaba世界母乳育児行動連盟(WABA)は地球規模の組織や国のネットワークです。WABAは母乳育児がすべての子どもと母親の権利であることを信じ、この権利の保護、推進、支援を使命とし、「イノチェンティ宣言」にのっとって活動をしています。WABAはユニセフ(国際児童基金)と緊密な連携をとって活動をしています。

WABAはいかなる形でも、母乳代用品、関連する器具や補完食(離乳食)を生産する企業からの支援はお断りしています。世界母乳育児週間に関わるすべてのグループや個人がこのような倫理上の選択をするようお願いしています。

情報化時代の母乳育児  WABA2001

wbw2001calender  10th Anniversary

【訳注】このパンフレットではcommunicationという言葉がたくさん使われています。これは日本語のコミュニケーションだけでなく、情報や意思の伝達などさまざまな意味を持ちます。そのニュアンスが伝わるよう各項目で状況に応じて意味を補記しました。

乳育児には、子育てやライフスタイルに関するほかの多くの事柄と同じように、情報に基づいて決断する機械が必要です。とはいっても、私たちの「情報源」は年月を経て、根本的な変化と拡張を広げてきました。考えてもみてください!100年前には、たかが写真さえ「目新しいもの」だったのです。情報源が広がるにつれて、情報の質や、情報を提示する動機にも変化が生じました。もっとも、変化が常によいものだとは限りません。母乳育児を保護・推進・支援しようとする今日までの多くの戦いは、情報をいかに取捨選択するかをめぐるものだったのです。
そこで2001年の世界母乳育児週間において、WABAは母乳育児にまつわる知識と考え方と行動を形成するうえでの、情報や医師の伝達、つまり”コミュニケーション”の重要性に焦点を当てることにしました。それとともに、母乳育児の世界的なネットワークづくりや、効果的な”コミュニケーション”を駆使して母乳育児支援を推し進めてきた、WABAの栄えある10周年を祝します。

INDEX

今年の世界母乳育児週間の目標
1対1の”コミュニケーション”(心のふれあい)
情報の大量伝達(マス・コミュニケーション)の始まり
母乳育児の情報競争
母乳育児の保護と促進
「赤ちゃんにやさしい病院運動」(BFHI)
母乳育児のためになくてはならない情報
母乳育児を支える“コミュニケーション”(情報や意思の伝達)
論議を呼ぶ事柄を伝えるとき
行動のためのアイデア

今年の世界母乳育児週間の目標

・母乳育児を考えるうえで、これだけは絶対にはずせないという情報を提示すること。
・“コミュニケーション”のさまざまな形や方法と、それを活用して母乳育児を保護・推進・支援する効果的な手段を浮き彫りにすること。
・母乳育児にとってのハードルや脅威を伝え合うためのアイデアや経験を共有すること。
・母乳育児をするお母さんを支援する、より革新的で役立つ取り組みを提供し、後押しすること。

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1対1の“コミュニケーション”(心のふれあい)

人間は、誕生後すぐに心と心を通わせる、つまり“コミュニケーション”のすべを身につけます。母乳を飲ませるお母さんと、母乳を飲む赤ちゃんを考えてみましょう。見つめ合う目と目。表情。お母さんのやさしい指の感触や心和むにおい。赤ちゃんの力強い吸い方。生命の源である母乳。お母さんと赤ちゃんはそれらを通じて、“コミュニケーション”という美しいダンスを一緒に踊っているのです。この和やかなやりとりにより、お母さんと赤ちゃんの間には、信頼と愛情に満ちた関係が育まれます。
これまで、女性が母乳育児のことを学ぶ主な手段は、お母さんと周囲の人との直接的で個人的な人間関係に基づく“コミュニケーション”つまり情報や意思の伝達でした。赤ちゃんを産む前から、友人や家族を日常的に観察し、やがて赤ちゃんを産んでからは、家族や助産師の手ほどきを受けながら母乳育児のことを学ぶのです。直接、言葉や態度で応えてもらったり、認めてもらったり、問いかけてもらったりすることで、お母さんは学び、実践し、情報を知ったうえでの選択をすることができました。
けれども、過去1 世紀にわたる社会的・経済的な変動、そして“コミュニケーション”の変化は、母乳育児の伝承、学習、実践のあり方に影響を及ぼしたのです。各家庭が母乳育児に対してどんな姿勢をとり、どのような信念を持ち、どう決定するのかを決める情報源は多様化しています。その影響を受け、かつての緊密に結びついた親族を基盤とする小さな社会において成立していた、観察と口伝えによる“コミュニケーション”は、複雑なものになりました。

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情報の大量伝達(マス・コミュニケーション)の始まり

新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、インターネットなどの情報コミュニケーション技術は、政府や企業からの支援を受けて発達してきました。こうした技術が進歩し、身近になるにつれて、一般家庭もラジオを買い、テレビを買いました。そして、今ではコンピューターやインターネットの利用もできるようになりました。
このような社会の発展と科学技術によって、従来、家族や近所や地域の中での対人関係から得るもの
だった学びや社会的な影響は、中央集権的なマスメディアと、孤立した個人という関係から得るものへと変容させられてきました。こうした一方的な情報の大量伝達(マス・コミュニケーション)は容易に、人々の感じ方や実際の行動に影響を及ぼし、新たな流行や欲望や行動様式を生み出します。

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母乳育児の情報競争

乳業会社と弱体化する母乳育児文化
そもそもの最初から、乳業会社はやむことなく、人工乳などの乳児用飲食物への需要を掘りおこそうとしてきました。保健医療従事者、医療情報提供者、看護師のようなユニホームをまとった(企業派遣の)育児アドバイザー、販売員などを通じての対人的なふれあいにも多少はよりますが、これらの企業はそのほかのさまざまな戦略やメディアを駆使した、大規模かつ複雑なマーケティングによる販売促進を始めています。市販の乳児用飲食物は、今もなお、より便利で、「科学的」で、完璧な栄養を提供し、より高い社会的地位を表すものとして、販売促進されています。広告は “ふっくらした赤ちゃんを連れたおしゃれなママ”のイメージを駆使して、これらの乳児用飲食物を使えば、理想が手に入るはずという幻想を作り上げています。さらに最近では、人工的に作られた商品のほうが安全だというメッセージが盛り込まれるようになっています。この傾向は、環境汚染の影響を受けている地域や、HIV、AIDSの割合が高い地域においては特に強いといえます。

これまで母乳代用品の販売促進の主要な担い手として大きな役目を果たしてきたのは、保健医療従事者たちでした。出産と母乳育児がどんどん医療の対象となるにつれて、母乳代用品は周産期の一連の経過をいっそう構造化し、計画的にするための、科学的かつ無菌の手段として売り込まれるようになりました。残念なことに、「科学的な」栄養法は、出産と授乳の自然なプロセスについて限られた知識しか持たない男性の医師が支配する環境において、急速に一般的になっていきました。医療や保育の教科書や病院の日常業務の中で、乳児用人工乳がいかに勝っており、母乳がいかに劣っているかについての誤解を招くような情報が標準化され、過激な販売促進戦略がそれに追い打ちをかけました。

母乳代用品の販売促進は、20世紀の大多数の家庭に行きわたりました。古くは産業革命、新しくはサービス経済化の進展によって、経済的な圧力は、家族や友人のもとを離れ、母乳育児に対する伝統的な地域社会の支援との結びつきを後回しにして、家庭が職を求めて住まいを変えることを当たり前にしました。女性が有給の労働市場に参入するとともに、子どもと常に一緒にいる余力がなくなっていったのです。そして乳児期から母乳代用品に慣れさせることは、こうした経済活動を支える「選択肢」であるかのように伝えられました。

全体として、これらの変化は母乳育児や女性の直観的な知恵の価値を下げるものでした。かつて母乳育児文化を支えていた地域社会は加速度的に分断され、支える力を失ったのです。人工乳などの乳児用飲食物や哺乳びんなどの関連製品を赤ちゃんのために「最高のもの」とする過剰な販売促進活動により、お母さんたちの間には、自分の母乳の質や、赤ちゃんの成長や、自分自身の育児能力への迷いが生じるようになりました。お母さんは自信を喪失し母乳育児を早くにやめてしまい、赤ちゃんに栄養不良や下痢、そして時には死という、多くの場合は悲惨な結末がもたらされました。

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母乳育児の保護と促進

「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」
1939年、シンガポールではじめて、早期に母乳育児をやめるようなことにつながる、誤解を招くような宣伝活動と人工的な乳児用飲食物と乳児の死亡率に関連性があることが公にされました。続く数十年、非難と訴訟とボイコットの、そして多くの赤ちゃんの死を経て、ようやく1981年、世界保健総会によって「母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」が採択されたのです。「国際規準」は母乳育児を推進・保護し、人工栄養に関係する製品の販売促進に用いられるマーケティングの慣行を規制することを目的としています。現在では、「国際規準」は55ヵ国(訳注:数字は2001年発行当時)を超える国でその全部、あるいは一部が法制化され、さらに多くの国で業界の自主的基準として履行されています。

「国際規準」は変化をもたらしました。けれども、まだ十分ではありません。多くの企業は、表面上は変化を装っていますが、依然として製品の販売を促進しています。乳児用食品国際行動ネットワーク(IBFAN)は、「国際規準」と、その後のWHOによる勧告を遵守しているかを監視し、違反を報告しています。違反がそこにある限り、IBFAN、政府、市民グループは母乳育児を保護することを目的とする法律の整備を求め、ネスレ製品の不買運動などの抗議行動に参加します。

参考文献・情報源

・Breaking the Rules, Stretching the Rules: Evidence of Violations of the International Code of Marketing of Breastmilk Substitutes and Subsequent Resolutions, 2001, IBFAN ICDC
・A series of 5 IBFAN pamphlets which report on marketing trends: the International Code, HIV and Breastfeeding; Labels; Hospitals & Clinics; Mothers; and the Internet, 2001, IBFAN ICDC
・State of the Code by Country: a Survey of Measures taken by Governments to Implement the Provisions of the International Code of Marketing of Breastmilk Substitutes, 2001, IBFAN ICDC
・State of the Code by Company: a Survey of Marketing Practices of Infant Food and Feeding Bottle Companies, compared to the Requirements of the International Code of Marketing of Breastmilk Substitutes, 2001, IBFAN ICDC

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「赤ちゃんにやさしい病院運動」(BFHI)
1992年にUNICEFとWHOが、病院が母乳育児を推進し支援するための一助となることを目的として着手した「赤ちゃんにやさしい病院」運動は、多くの国ですばらしい成功をおさめてきました。 現在では、世界各地に14,500(訳注:数字は2001年発行当時)を超える「赤ちゃんにやさしい病院」が存在します。「母乳育児を成功させるための10ヵ条」のほとんどはなんらかの形で、お母さん・赤ちゃん・医師・看護師・地域社会の間の適切な“コミュニケーション”(情報や意思の伝達)に関係しています。「赤ちゃんにやさしい」かどうかを決める基準の1つは、母乳代用品や哺乳びんや人工乳首の、無償もしくは低価格での提供を受けないという「国際規準」を守っていることです。

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母乳育児のためになくてはならない情報

お母さんの母乳の分泌がよくなるのを助けたかったら、まずは親切に、支援の気持ちを忘れずに。不安を取り除くお手伝いを。大丈夫、母乳で育てられますよと力づけましょう。  『母乳育児のお手伝い』フェリシティ・サヴェジ・キング

●赤ちゃんにとって、これ以上ない、最高の食べ物と飲み物。それは、「母乳だけ」です。 WHOとUNICEFはすべての乳児が、生後6ヵ月まで母乳だけを飲み*、2歳かそれ以上まで補完食とあわせて母乳を飲むことを推奨しています。
●特別な事情がない限り、女性はだれでも母乳で赤ちゃんを育てることができます。家族や友人や保健医療従事者や勤め先からの支援や援助を受けることは、お母さんの力になります。
●赤ちゃんは生後、できるだけ早いうちから母乳を飲み始めることが望ましいでしょう。赤ちゃんは欲しがるときに欲しがるだけ、母乳を飲ませてもらうべきです。
●ひんぱんに母乳を飲むのは普通のことで、赤ちゃんに満足感と安らぎをもたらすとともに、赤ちゃんが飲めば飲むほどより多くの母乳が作られます。赤ちゃんの月齢が上がるにつれて、徐々に、授乳の間隔が長くなっていきます。
●母乳育児は赤ちゃんの順調な成長を助け、病気を予防します。母乳以外の赤ちゃん用の飲食物には予防効果がなく、調乳や調理、食べさせ方や飲ませ方が適切でないと、病気の原因になるリスクもあります。
●赤ちゃんが生後6ヵ月に達したら、母乳以外のさまざまな食べ物も口にできるようになります。けれども、母乳は2歳以上、できることならそれ以上の期間、続けることが望ましいでしょう。
●家を離れて働くお母さんでも、就業時間中も搾乳したり、直接母乳を飲ませたりすることで、母乳育児を続けることができます。十分な出産休暇、母乳育児のための休憩時間や施設、職場近くの保育施設があると助かるでしょう。

注:「母乳だけで育てる」とは、乳児に対し、母乳以外の一切の飲み物や食べ物を与えないことを意味する。その際、乳児はひんぱんに、時間を制限することなく、母乳を飲めることが望ましい。
(出典:UNICEF: Facts for Life: Breastfeeding)

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母乳育児を支える“コミュニケーション”(情報や意思の伝達)

母乳育児で最も大切なコミュニケーションが、お母さん対他者、つまり赤ちゃんや家族や友人や保健医療従事者との個人的なかかわりによる情報や医師の伝達であることは、今も変わりありません。1対1の個人どうしであれ、グループ内であれ、母乳育児について話し、経験を分かち合うことは、お母さんがしっかりとした意識を持って決断を下すのに役立ちます。個人どうしよりも、はるかに強力なコミュニケーションの形も多くあります。テレビやラジオ、出版物、インターネットのような大量の情報伝達方法もそうです。多くの人に情報を伝えるために、ポスターやバッジやTシャツなどにさりげなくメッセージを書く方法もあれば、ゲームやコンテストやパレードやパーティーなどのように積極的に参加する方法もあります。手提げ袋や石けんや鉛筆やカップなどの、景品やおまけは、そこに込められた意味を、受け手が見るたびに思い出すという効用があります。有名人から、「普通の」お母さんやお父さん、おばあちゃん、保健医療従事者など、だれでもこうしたコミュニケーションの担い手になることができます。

このように、使う媒体、伝えたいこと、画像や映像、代弁者の組み合わせはさまざまですが、どんな場合でも、選択に注意が必要なことには変わりはありません。母乳育児を支援するためには、どのように情報を伝えるかのプラン作りが大切です。だれを対象とし、その相手が乳児栄養法のどのようなことを重要視するかを見極め、その人が納得できるメッセージを心に届ける必要があるのです。上に挙げたのは、最適な母乳育児のありかたを推進するために必要な、母乳育児のためになくてはならない情報の例です。これらの事柄についてのさらに詳しい情報は、「参考文献・情報源」で紹介しています。

臨機応変な対応をするための準備
コミュニケーションにおいては、「ダメージ・コントロール」がしばしば必要になります。例えば、母乳育児をけなしたり、攻撃するような話題がのぼったりしたときに、見逃さないよう、心の準備をしておくのです。 大切なのは、その話題の背景と、話題の発端となった報告や事件に通じておくことです。 そのうえで、調査、研究に基づく最新の情報を用いて、正確に、適切に、冷静に、母乳育児を擁護しましょう。メッセージを送る際は、それを届けようとする相手にふさわしい媒体を選びましょう。例えば、政策立案者に対しては記者会見という場が効果的ですし、一般人に対しては論説委員への投書という手段のほうが訴える力があるかもしれません。大切なのは、たとえ例外的なケースについて話をするときでも、大多数の家庭にとっては、母乳育児は最適であるという点を強調し続けることです。

特別な事情がある場合の“コミュニケーション” (情報の伝達)
私たちがメッセージを届けようとする受け手の中には、きっと特別なニーズや困難を抱えているために、私たちからの情報を受けとりにくい人たちがいるはずです。母国語以外の言語の読み書きが不自由なことが障害となって、文書化された資料が効果を発揮できないこともあるでしょう。言語の違い、翻訳者や多言語を操るスキルの不足は、個人対個人のコミュニケーションの妨げになり得ます。 視覚や聴覚に障害を持つお母さん、そのほかの身体的なハンディキャップを持つお母さんには、特別な便宜が必要でしょう。冊子によっては、点字で書かれたものが入手できます。 聴覚障害者向けの特別な電話サービスも役に立つでしょう。

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論議を呼ぶ事柄を伝えるとき2002_japan

論議を呼ぶような事柄のコミュニケーション(情報伝達)においては、結果として母乳育児に対してダメージが残らないように、注意深く、明確にすることが欠かせません。母乳育児に関する2つの難しい論点について、メッセージを伝えるときの具体例を挙げてみましょう。

母乳の汚染
ある地域において、人間に対する環境汚染の「負荷」の度合いを垣間見るには、汚染物質が蓄積される体脂肪を調べるのが適当とされています。母乳からはこの体脂肪を容易に得ることができるため、結果的に、母乳の汚染濃度はしばしば報告されることとなり、あたかも乳児に対する危険性が懸念されるから測定するかのような誤解が生じています。そのような報告が公表されると、母乳で赤ちゃんを育てている家族は不安になります。母乳育児を擁護する側としては、このような事態を見越して、検査機関や環境団体と協調し、さまざまな側面を含めたメッセージを作り出さなければなりません。

つまり、以下のようなメッセージです。

●毒素が食物連鎖の隅々にまで行きわたっており、母乳や人間以外の乳や乳児用人工乳もその例外ではないことを認める。
●(母乳で育てるかどうかにかかわらず)すべての赤ちゃんは、胎児期から環境汚染物質にさらされ、それが体に蓄積していることに言及する。
●何(母乳)から環境汚染の証拠(エビデンス)が見つかったかをやり玉にあげるのではなく、何が環境汚染を引き起こしているのかを見極める。
●人工的な母乳代用品(粉ミルクなど)に関係するリスクや、母乳で育てないことのリスクをはっきり述べる。
●母乳代用品を使うことに関心を向けるのではなく、有毒な工業製品を使わないですむ方法に関心を向ける。
●汚染物質の体への負荷を減らすために、脂肪の多い肉やレバー、汚染水域の魚の摂取を避けるように提案する。
出典:Penny Van Esterik: Risks. Rights and Regulations: Communicating about Risks and Infant Feeding.

母乳育児とHIV/エイズ
【訳注】この項の情報は、2001年発行当時の研究に基づいています。
HIVは確かに、HIVに感染した女性から生まれる乳児の約14%に、母乳を介して移行しますが、これは母乳以外のものも与えて育てられた場合の数字です。母乳を介してのHIV感染率は、赤ちゃんが母乳以外のものは、水さえもいっさい口にしていない期間内ではずっと低いという研究結果もあります。
乳幼児がHIVに感染し、抗レトロウイルス薬(ARV)を投与されない場合、ほぼ例外なく死につながります。けれども物資も、下水などの衛生設備も、清潔さも、医療も、常にあるとは限らない環境においては、赤ちゃんが人工栄養の結果、病気になり、亡くなる確率も高いのです。こちらのリスクは、アフリカを含め、多くの地域においてまだ正確には数値化されていません。そのため、保健医療従事者も、お母さんも、どちらのほうがより賢明な選択であるかが、わかりにくいのです。
一般論としては、国連の諸機関では、以下の2つの条件を満たしている場合のみ、母乳を乳児用人工乳で完全に置き換えることをすすめています。

(1)家族が少なくとも6ヵ月間、十分な量の人工乳を確実に入手できること。
(2)家族が人工乳を正確かつ衛生的に用意する、水、燃料、用品、技術、時間に恵まれていること。

そのほかの選択肢としては、しぼった母乳を熱処理したり、検査によってHIV陰性であることが判明している女性が乳母として母乳を飲ませたりすることなどがあります。

HIV/エイズについての注意点
●家族にとって、「無償かつ秘密厳守のHIVカウンセリングと検査(VCT)」が身近に存在することが必要です。
●赤ちゃんは、妊娠中や出産中にHIVに感染する可能性もあるため、区別がつきにくいのが難点ですが、母乳を介して感染する場合は特に、生後初期のリスクが高いといえるようです。赤ちゃんが、HIVに感染しているお母さんの母乳を介してHIVに感染するリスクは、たしかに、母乳を飲む限り続き
ます。ただし、このリスクは成長するにつれて減少するようですし、赤ちゃんが生後半年間、母乳以外のものを一切口にしない場合には、このリスクはいっそう低くなります。

●また、ほとんどのお母さんはHIVに感染していないか、感染の状態を知らないのですから、全体としては、母乳育児の保護、支援、推進を継続するべきです。実際、例えば2001年にアフリカで妊娠中の定期健診に通っていた女性のうち、VCTすら、受けられる環境にあったのは1%に満たなかったのです。
●「国際規準」や「赤ちゃんにやさしい病院運動」の条項は、たとえHIV/エイズの有病率の高い地域においてでも、継続的に実行されるべきなのです。
●赤ちゃんの感染を防ぐ最もよい方法は、お母さんたちを、性的パートナーからのHIV感染から保護することです。

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行動のためのアイデア

私たちが、それぞれの地域社会でできること
●このWABAパンフレットを自国の言語に訳し、情報を広めること。
●テレビ局や新聞・雑誌・ウェブサイトの編集責任者に手紙を書くこと。母乳育児のよい点を伝えてくれたことについての感謝の気持ちを伝え、内容が母乳育児を邪魔したり妨げたりしている場合はその点を指摘しましょう。
●友人に母乳育児の利点について話し、子どもを持つ男性には、母乳育児への支援を促すこと。
●友人たちと協力しあって、地元で母乳育児に関連する催しを計画したり、情報ブースを設置したりす
ること。
●母乳育児を応援するメッセージをステッカーやシールにして、車の後部ガラスに貼ること。
●母乳育児を描いた本やマンガやお話を読んだり聞いたり、人間以外の哺乳類がわが子に母乳を与える様子を観察したり、さまざまな機会を通じて、自分の子どもを母乳育児という文化になじませること。
●母乳育児を考えるうえで、絶対にはずせないメッセージをよく知ること。
●母乳育児とHIV/AIDSや環境汚染という問題について、常に、最新の情報に通じているようにすること。
●広告看板や公共交通機関に、母乳育児を応援するメッセージやイベント告知を掲示すること。
●地元の図書館にかけあって、蔵書のなかから(一般書も児童書も含め)母乳育児関連の本を展示してもらうこと。図書館でインターネットにアクセスすることが可能な場合には、母乳育児関連のウェブサイトのリストを掲示してもらってもいいでしょう。母乳育児読書クラブを設立するのも一案です。

マスメディアへの働きかけ
●ラジオやテレビの人気番組を監視しましょう。新生児は母乳で育てられるべきであること、正確な情報が描き出されているようにすることを提案しましょう。不正確な情報を見逃さないようにしましょう(それを糸口として、今後のニュースの話題やインタビューの間違った情報が正されていくかもしれません)。
●メッセージを伝えたり、より強めたりする媒介として歌を活用しましょう。地元のラジオ局から流したり、診療所で流したり、さまざまな教室や保育園や親子教室などでの歌の集いで活用したりしましょう。
●ラジオ・テレビ・インターネット向けにそれぞれ、子育て、母乳育児、乳児の栄養についての教育プログラムを作成しましょう。ホンジュラスでは、ラジオ局が母乳育児の9つのゴールデンルールについて、11のプログラムを流しました。そしてさらに、ラジオの特別番組や歌やお母さん向けの冊子や保健医療従事者向けの手引きや研修課程の修了証が用意されました。
●出版物や放送のストーリー用に、ジャーナリストに対し、素材やインタビューするべき人物や報道すべきイベント(ショーやダンスやコンテストなど)を紹介しましょう。こうしたジャーナリストと協働関係を築きあげましょう。
●ラジオやテレビの、視聴者が電話で参加できる番組やトーク番組、インターネットのチャットに参加しましょう。
●ラジオやテレビが政府の管理下にある場合は、メディアやしかるべき行政部門と草の根の地域グループとの協働を促しましょう。

インターネットの活用
●母乳育児に関する良質なウェブサイトのリストを作成し、インターネットが使用できる場所(図書館やネットカフェな ど)で配ったり、直接家庭に届けたりしましょう。
●電子メールによる母乳育児の「ホットライン」を設置し子どものいる人からの質問を受け付け、電話や対面によるカウンセリング、さらには専門医への紹介を受けられるようにしましょう。オーストラリア母乳育児協会(ABA)では、電子メール相談を始めたところ、すぐに世界中から問い合わせが寄せられたそうです。
●ウェブサイト上に母乳育児の研究のまとめや、診療所や病院で働く人のための母乳育児知識検定を設け、24時間アクセスできるようにしましょう。
●母乳育児関連の著作物や現状について、折にふれ、最新情報を送れるように、メールの配信リストを作りましょう。対象は、家庭、保健医療従事者、政策立案者です。
●インターネット上の重要な政策や研究についての文書を見つけて印刷し、インターネットを使える環境にない仲間に配りましょう。

地元の診療所や病院との協力
●世界母乳育児週間を祝う横断幕、看板、ポスターを掲示しましょう
●母乳育児関連の情報を、ロビーや軽食堂や待合室に展示しましょう。
●保健医療施設の看護師・医師・運営者・そのほかのスタッフのさまざまな会合で、その地元における母乳育児の割合、母乳で育てにくい原因、母乳育児を推進するための努力についての統計を提示し、お母さんたちへのさらなる援助や支援を促しましょう。
●保健医療従事者の間で、「週刊母乳育児新聞」を発足させましょう。発行後に、新聞の内容についてのテストをして、最優秀回答者を表彰しましょう。このような取り組みが母乳育児に関する「継続教育単位」と認められるよう申請しましょう。

国際規準違反報告フォーム

母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」の違反を日本語で報告できます。乳児用食品国際行動ネットワーク(IBFAN)のメンバーグループである母乳育児支援ネットワークの有志が英語に訳してIBFANに届けます。

アイコンまたはこちらをクリックすると「国際規準」違反を報告できるフォームが開きます。ご協力をお願いいたします。

 

最初は母乳だけ、その後も他の食べ物を補いながら母乳を与え続ける。金色のリボンは、 その「ゴールド スタンダード」、つまり理想のありようの象徴です。

WABA(世界母乳育児行動連盟)とユニセフが共同で提唱している「金色のリボン運動」に参加しています。

Facebook 母と子の育児支援ネットワーク(災害時の母と子の育児支援 共同特別委員会)

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