■国際規準の歴史
―アナリス・アレイン氏(IBFAN)
(アナリス氏はこんにちは!と日本語で挨拶をしてくれた。明日までにはもう少しうまくなるよう練習するとのこと・・・。)
母乳代用品の出現以来、母乳で育てられる赤ちゃんはみるみる減少していった。母乳代用品の販売促進と乳幼児の死亡率は比例関係にあるということがわかり、マーケティングの規準を設けることにした。1981年まで、母乳の利点についてはほとんどわかっていなかったが、それは企業による調査のみだったからである。
WHOコードの採択により、母乳育児は世界的に保護・推進される方向に向いてきた。
日本は採択を棄権したため、企業によっては規準を守る必要はないものと捉えているところもある。
国際企業ネスレのボイコットはいまだ続いている。
IBFANは、企業の販売する権利は認めているが、倫理にもとる活動は支持しない。
1981年5月21日 世界保健機構総会で「母乳代用品の販売流通に関する国際規準」が採択されたとき、世界198カ国ある中でアメリカだけが1票の反対票を投じた。
(世界は198カ国ある! 会場にこの数を質問されましたが、400?500?という感じでした)韓国、日本はアメリカに追随するかたちでそれに近い棄権をした。
皆さんの国日本がこの規準をどの程度守っている状況にあるかは、IBFANがつくっている国のスコアチャートでチェックできるので、みてください。
■入門国際規準
―ヨン・ジュー・カン氏(IBFAN)
(ヨン・ジュー・カンさんは母国語であいさつをしてくれました。帰国するまえまでに少し勉強したいそうです。今知っている日本語は「はい」のみらしい・・・。)
日本の育児雑誌を見てびっくりした。色々な製品の広告がある。
「母乳代用品」について、規準を作った側と企業側とでは解釈が違っている。
実際には規準は、生後6ヶ月未満の赤ちゃんに与えられるものは何であれ、乳製品以外でもすべて対象となる。シリアルやお茶なども含まれる。
生後6ヶ月以降の赤ちゃんにとっては、シリアルやご飯は離乳食であり、対象とならない。フォローアップミルクは、生後6ヶ月以降の赤ちゃんにもやはり母乳を与え続けるべきという観点から代用品と解釈するべきである。(企業側の解釈は異なる。)
哺乳びんや人工乳首も規準の適用対象にあたる。
日本の企業では、例えば明治乳業のエジプトでの広告には、「母乳とほとんど同じ」という記載がある。
また、規準があいまいな国では販促用ポスターやカレンダーなどが配布されたり、母親や医療者にサンプルが渡されたりしている。
病院の産婦人科病棟に掛け時計を寄贈し、企業の名前が多くのお母さんたちの目に付くようにしているところもある。台湾のとある病院では、各病室に時計を置くために買わなければならなかったが、産科病棟だけは買わなくて済んだ。森永、明治の時計が配られているから。
育児の電話相談窓口を設けているメーカーもあるが、どのようなアドバイスがなされているか想像はつくだろう。WHO規準では乳業会社が24時間相談を受けられるホットラインサービスをもうけて宣伝することも禁止している。
1人の赤ちゃんを人工乳で育てることによって企業では450ドル儲かるという算定がされている。
人工乳で育てると健康で丸々と太った赤ちゃんに育つと印象付けるような広報(カタログの挿絵)もなされているが、科学的な根拠も実態もない話である。むしろ人工乳で育てた場合の危険性について記載されるべきである。一方で母乳育児についての情報も載ってはいるが、読めないような小さな文字で書かれていて、内容について理解を得ようとしているものではない。
例えばマレーシアでは、WHO規準を採択後国内法で法規制しており、着実な成果が見られる。
日本の乳業メーカーは国内では無法状態の商法を営んでいるが、しっかりとした法制の下で圧力を加えられる国では、その法を守っている。
たとえば(人工乳の缶ラベルのスライド)多くの国のラベルには、「母乳の方が人工乳より優れている」と表示されている。
(イランの規準法制化前と法制化後の缶ラベルのスライド)法制化後は、赤ちゃんの写真もSNOWBRAND(雪印)の文字もなく、白い缶になっている。
国内ではなぜ同様の倫理規準をもって商売ができないのか・・・。
81年まで「フォローアップミルク」は存在しなかったが、「人工乳のみ規制対象となる」との企業側の法解釈により、「フォローアップミルク」が作り出された。
WHOは2001年まで離乳食を始める期間(完全母乳の期間)を生後4から6ヶ月としていた。(現在は生後6ヶ月)
この2ヶ月間での企業の利益には20億ドルの違いが出てくる。
規準についての重要な3つのポイント・・・
規準について話すときには、その後の勧告も含めて語りましょう。
規準はすべての国で適用されるもの。
規準はすべての母乳代用品に適用されるもの。
文責:本セミナー情報発信チーム