Q:雇用主が働くお母さんのために作ることのできる環境について具体的にまとめた案はありますか?
A:(エスコット)オーストラリアでの状況は以下のようです。
お母さんにやさしい職場運動
条件を満たしてくれた職場を表彰する
母乳育児をしているお母さんが復職することを歓迎するという職場の方針が必要
産休に入る前にそれを知らせる必要がある(仕事をするために母乳育児を辞めなくてすむ)
母乳育児をするお母さんのところにラクテーションコンサルタントを派遣する資金を援助する企業もある
搾乳する場所・冷蔵庫の提供、搾乳時間の保証(決まった時間ではなく個別に対応)
条件を満たしている企業はホワイトカラーの職場が多くブルーカラーでは少ない
残念ながら企業内保育所はオーストラリアでは少ない(託児所が満たすべき条件が厳しいため)
首都キャンベラの国会に託児所を作る試みがありましたが、交通量が多く空気が汚れているという理由で許可がおりませんでした。
復職する人を母乳育児をしているかどうかによって差別してはならない法律にかんがみて企業へ要求していってはどうでしょうか。
香港の公立の病院は、すべてBFHになるという方針を打ち出しました。
A:(シュー)ILOの女性保護条約(日本では批准されていない)という女性のためのルールがあり、これには母性保護も含まれています。母性の保護は先進国でも途上国でも重要です。
公式に働いている人・公式ではなく働いている人(漁師の妻など家業を助けている人)の両方をカバーする必要があります。
国と国との兼ね合いが重要です。
オーストラリア・アメリカでは労働組合が強く、国としての母性保護は確立されていません。
企業に対して6ヵ月しか働いていない人に産休・育休を与えるように要求するのは難しいかもしれないので、どんな人も保護を受けられるよう国が保障するべきです。
ノルウェー・スウェーデンでは国による母性保護が確立しているので、6ヵ月しか働いていなくても支援が受けられます。
オーストラリアでは4ヶ月の育休が認められており、法律としては制定されていません。
母性保護においては、時間、場所、子どもとの距離といった具体的な事項も大切です。
世界的には理想を追えますが、国の状況によっては妥協も必要です。
ユニセフなどには託児所がありません。
WABAなどの組織によりクリエイティブな方法を進めています。
病院という場所は、マザーフレンドリーとしては最初のステップとなります。
ベビーフレンドリー=マザーフレンドリーです。
マレーシアの病院で、赤ちゃんには優しいがお母さんには優しくない状況がありました。
雇用主→政府へ働きかけましょう。
Q:タスマニア母乳育児連合がもらった助成金のプロジェクトはとても良かったですね。日本では「母乳で育てられないお母さんがかわいそうなのでキャンペーンはしない方がよい」という考え方が根強いのですが、タスマニアのケースでそのような意見はなかったのでしょうか?
A:(エスコット)オーストラリア・タスマニアでも同じ事はありますが、段々少なくなってきました。
実際に母乳育児を「できない」お母さんはほんの少ししかいません。
オーストラリアでは、母乳育児しない事を選択しているお母さんの方が多く、これは医療職・周囲からのサポートがないためです。
キャンペーンに否定的な意見を言う人は母乳育児を支援していない人です。
私たちはお母さんたちにそのような思いをさせてはいけません。
「母乳育児がふつう(ノーマル)である」とずっと言い続けてきました。
BFH(赤ちゃんにやさしい病院)では母乳育児を強制しません。しかし、適切にケアされることによってほとんどのお母さんが母乳育児できます。
「母乳育児は権利である」と言い続けることによって否定的なコメントは減少してきました。
オーストラリアの病院では「母乳育児をしない」と選択した人は恥ずかしくてそれを言えないような状況で、病院にいる間は母乳育児をし、退院してから人工乳で育てているようです。
A:(アレイン)WHOは「98%のお母さんは母乳育児できる」と言っています。日本人だけが違うとは思えませんね。
たくさんの国が「母乳が足りない」ことを母乳育児支援しない言い訳にしています。
もし、お母さんが母乳育児できなかった為に後ろめたい思いをするとすれば、それは哺乳びんで授乳する(人工乳で育てる)文化の犠牲になっています。
後ろめたい気持ちになる原因(文化の犠牲になっているということ)を知るべきです。
また、人工乳で育てるということは良くない選択ということを知っている必要があります。
そのためには医療の専門職がそれを知っている必要があります。
A:(シュー)お母さんが実践することが大切です。
お母さんは不安なものですから、不安にさせない環境が大切になります。
私の友人である中国人の例では、中国人は乳房が小さく、周りにも完全母乳の人が少ないという状況で不安が大きかったようです。彼女は「母乳が足りなかったときのために哺乳びんを準備しておく」と話していました。
医療保健専門家の役割は非常に大切です。確信を持ってお母さんに接することです。
Q:IBFANへ質問です。母乳代用品販売促進の経路毎のコストを把握していますか?
A:(アレイン)企業がどれだけの利益を得ているかは、企業のトップシークレットなので誰にも分かりません。
母乳代用品関連商品は非常に利益率が高いと言われています。
1人の赤ちゃんにつき、年間に約5万円分の利益があるといわれています。
Q:大学に育児工学(ベビーマッサージで赤ちゃんの脳波がどう変わるか等)があります。自分の母乳育児の経験から、実際に母乳育児による影響を感じました。このようなテーマで研究をしたいと考えていますが、オーストラリアなど海外にそのような研究はありますか?今後どのような方向で研究を進めて行けばよいと思われますか?
A:(シュー)オキシトシンというホルモンの研究をしている人がいます。
オキシトシンの作用
・母乳分泌
・赤ちゃんが母乳を飲むと、赤ちゃんの体の中にもオキシトシンが分泌される→赤ちゃんを穏やかにする
※通訳者コメント※オキシトシンはお母さんの愛着行動を形成する作用もあり、愛情ホルモンとも呼ばれています。最新の研究により以下のことが分かっています。
・赤ちゃんが吸啜をして、口腔内の粘膜が刺激されるとオキシトシンが出る
・赤ちゃんのオキシトシンは食物の利用率(栄養の消化吸収)を高める
・赤ちゃんの脳の構造が両親の対応の仕方(ペアレンティング)によって変わっていく
A:(アレイン)オランダでは自宅出産が50%以上を占めています。
赤ちゃんが家庭で生まれることは母子密着を深めます。
温かく薄暗い状態で、生まれてすぐお母さんの胸に抱かれ、心臓の音を聞くなどボンディングによって母と子の自信が作られます。ヨーロッパではそのような(家庭分娩→ボンディング重視)傾向があります。
A:(エスコット)オキシトシンにはフェロモンを出す作用もあります。授乳中のお母さんは魅力的に感じられますね。
■ゲスト・スピーカーからのメッセージ
アネリス・アレイン氏 IBFAN
ここに参加している人々の多くは母乳育児支援をしている人たちでしょう
お母さんたちはどんどん代替わりをして新しくなっていきます
もし今、私たちが活動をやめたならば、そこから人工乳会社の情報が入ってしまいます
母乳育児支援活動は長期にわたって継続されることが必要です
スーザン・シュー氏 WABA
先は長いです
ABCという3つポイントがあります
A: Aware 何が起こっているか知らなくてはならない Angry 怒れ!!
B: Brave お母さんを助ける勇気
C:Comit 戦うことに自分をつぎ込む
残念ながら、本当にこのような話を聞かせたい相手はここにいらっしゃるような方々(母乳育児支援をしている人々)ではありません
ロズ・エスコット氏 IBLCE
今日のことを周囲の人に伝えてください
大なり小なりアイディアをもって行動してほしいです
文責:本セミナー情報発信チーム