投稿者: bsn-admin

Day2 質疑応答

:アネリス・アレインさんに質問です。安全な食品をとうたっている関東のコープが1年くらい前から乳児用食品を販売し始めましたが、「生後2ヵ月から」など低月齢からあげられると表示してあります。抗議したら担当者が来て話し合い、こちらからいろいろ情報提供しました。「1都5県の生協でまとまってるので単独の判断はできないが、議題として出してみます」ということでその後何の連絡もありません。こうした場合のよい戦略はないものでしょうか。

:(アレイン)だいたいそうだが、品質は良いのだけどラベリングが間違っています。
デジタルカメラをみんなが持って確証をもとめ、コープや企業に恥ずかしい思いをさせる。そしてWHOやUNICEF、会社、メディアに対して投書をして伝えていくことが必要です。
:モニタリングしている方が企業やほかから何らかの圧力がかかったことはありますか?それらをどう解決しましたか。

:(ジュー・カン)いくつかそういう例はありました。
有名なケースはネスレの雇用者が内部告発した時です。雇用主からその発言を撤回しなければ解雇するという圧力を受けましたが断ったので、会社を辞めるだけでなく国を去らざるを得なくなりました。
これはパキスタンでしたが、こうした例は特殊で、モニターは匿名性を守られるので通常は問題ありません。匿名ですることを勧めます。
パキスタンは2002年9月に規制法ができました。法制化に11年かかりましたが、このサイアマダサさん?の事件後2年で法律ができたのです。

:(エスコット)オーストラリアでモニターをしていますが、オーストラリアの企業はあまり賢くなく(!)、言われたとおり資料を出してくれます。
:ラベルに描かれている絵についてです。赤ちゃんの絵でなく、かわいい花や女の子男の子の絵は違反ではないのでしょうか?

:(ジュー・カン)とてもいい質問ですね。缶を魅力的にするためにおもちゃや花が描かれていますが、今のところ赤ちゃんが出ていれば違反といえ、それ以外について違反として裁判にかけたら負けると思います。
日本では赤ちゃんの絵が多いけれど、ほかの国ではそれほど使っているわけではありません。
:2歳までに与えられる乳製品は全て母乳代用品ということでしたが、大人の食べる牛乳なども規制の対象になりますか? そうだとしたら消費者はどのように製品を選んだら良いのでしょうか?

:(アレイン)乳幼児用につくられている製品すべてが国際規準の対象範囲ということになります。大人が食べる普通のヨーグルトなどは規制対象ではありません。
難しくなるのは、何もラベルになくて1歳児用のミルク、2歳児用ミルクとだけあるもの。これはグレーゾーンになるでしょう。
ヨーグルトを宣伝するのはいいけれども低月齢の赤ちゃんの写真を使ってはいけません。低月齢から与えられると書いてもいけません。どのように、またどこで宣伝がなされるかによります。
:3ヵ月・6ヵ月などの乳幼児健診で、健診の後企業の栄養士がひとりひとりに面接するシステムになっており、サンプルや資料をくれます。これは違反になりますか?栄養不良なら人工乳を足す指導をされたりします。

:(アレイン)違反になります。
一つ一つ見ていかなければいけないが、栄養不良が母乳育児によって改善されるものであれば、人工乳を足す指導は違反。教材として情報を配るのも違反です。
WHOは地元でとれるの栄養のある食品を食べさせろといっています。日本では納豆など。

:(エスコット)低月齢の赤ちゃんであれば、栄養不良の場合、栄養士がラクテーションコンサルタントに紹介してほしい。サンプルを与えるよりも。
栄養が足りていても小さい赤ちゃんがいて、全ての赤ちゃんが大きくなるわけではないので注意が必要。
:アネリス・アレインさんに質問です。メーカーが次々新しい戦術を作り出しグレーゾーンが多くなると思います。そのとき白黒つける基準とシステムを教えてください。

:(アレイン)会社側は弁護士もついていて会社側が決めると主張するでしょう。本当は国際的な規制団体があるといいのですがそうではないのが現状です。
違反事例があると私たちは企業に働きかけます。その半分に企業は賛成し、半分、いやちょっと言い過ぎた。20%くらいかな、に反対します。その半分に対しては私たちは闘争をしなければなりません。
以前違反だといって持ち込んだら「この赤ちゃんはかわいくないから違反でない」と反論されたことがあります。
WHOはノータッチの状況。オーストラリアでは違反かどうかを判断する委員会があります。国によっては法律でそういうシステムが整っている場合もあります。
:コードとは何か分かりにくいです。WHOが各国に進めているというだけで強制力はないのでしょうか。国内法がない現時点でコードにどのような販売促進抑止力があるかを知りたいです。

:(城所)国際規準というのは倫理基準と呼ばれていまして、倫理として守ってくださいと勧告しているわけで、法律ではありません。
当会(乳児用粉ミルク問題を考える会)は法制化に向けて活動していますし、行政の人を呼んでこういう法律をつくりましょうという活動をしているわけです。
企業の方にこれを守っているかというプレッシャーをかけても、「遵守しています」という言い方で逃げられています。粉ミルクを考える会では粉ミルクの缶への警告表示を法制化すべきであると運動しています。「安易な粉ミルクの使用は乳児の健康を害する可能性があります」というタバコと同じような警告表示を考えています。

質問者:何か義務があるような気がして、そういう方向の報告を持って帰りたいので、パネリストの方に言葉をいただきたいと思います。

:(ジュー・カン)政府に働きかけるとすればひとつ方法があるのではないか。子どもの人権を守るという視点を通して。
前提条件として子どもはベストな保育を受ける権利があるという条項のある「子どもの権利条約」を日本も批准しているので、それを通して主張するという方法がある。

:(エスコット)もうひとつ裏側の方法は、BFH(赤ちゃんにやさしい病院)をどんどん増やしていくこと。そこでは国際規準に見合っていることが要求されるので、それを増やしていくことが考えられます。

文責:本セミナー情報発信チーム

Day3 日本での母乳育児支援活動~母乳育児支援ネットワーク

高橋万由美氏(母乳育児支援ネットワーク代表)の話

母乳育児支援ネットワークは、たくさんの母乳育児支援グループが連携する場になれば、と1999年に設立された。
母乳育児を強制するのではなく、誰でもどこでも母乳育児に必要な支援を得られる世の中を目指す。
高橋さん自身、片手で母乳育児をしながらインターネットで母乳育児情報を探されたという。
先進国の中でも母乳育児の割合が高いスウェーデンの様子が紹介された。
働くお母さんのための制度が整っていることは知られているが
女性の声が政治に反映されやすい社会であるという点が日本と大きく違う。
日本では「母乳育児ができない人はかわいそう」という意見も強く
母乳育児を続けるために必要な情報・支援を受けられない人がほとんどである。
適切な情報に恵まれるのは宝くじに当たるようなものだ。
もっともっと必要な情報がお母さんたちにいきわたるように活動したいと考えている。

Day3 日本での母乳育児支援活動~乳児用粉ミルク問題を考える会

―城所尚代氏(乳児用粉ミルク問題を考える会代表)の話

工場で粉ミルクがどうやって作られるのか冊子を配布。
粉ミルクの作り方、原料はミルク缶に書いてないし、それを調べるのも大変である。
母乳育児の大切さ、粉ミルクそのものについてきちんと情報を知らされないままでは
きちんと「選択」することができない。
「母乳代用品の販売流通に関する国際規準」の法制化も目指している。
この国際規準には(1981年の段階で)118ヶ国が賛成したが
アルゼンチン・日本・韓国・は棄権、アメリカだけが反対した。
法律の制定には男性が多く関わることもあり、男性に母乳育児について知ってほしい。
城所さんの個人的な友人であるイギリス人女性は
母乳育児についての知識もあり、望んでいたのに、
産後の精神不安定な中でそれを果たせなくなってしまった。
私たちは妊娠中よりもっと前、中学生くらいからの教育が必要だと考え
中学・高校・大学、男子校でも母乳育児について語っている。

 

Day3 日本におけるIBCLCの活動

-瀬尾智子氏(日本ラクテーション・コンサルタント協会)

IBCLCとは?
International Board Certified Lactation Consultant
(国際認定ラクテーション・コンサルタント)
母と子に質の高い母乳育児支援を提供するのに必要な、一定水準以上の技術・知識・態度を持つヘルスケア提供者のこと。
IBLCE(ラクテーション・コンサルタント資格試験国際評議会)によって実施される世界共通試験に合格することによって得られる資格を有する。
IBCLCの役割(1)
( Competency Statementsより)
1.出生前から生後1年以上の期間にかかわる様々な状況でのラクテーションについて、包括的なコンサルテーションと教育を行う優れた技術と知識を有する。

IBCLCの役割(2)
2.母乳育児のケアを行うために、以下の総合的な知識を有する。
解剖学・生理学・内分泌学・栄養学・生化学・免疫学・感染症学・病理学・薬理学・毒物学・心理学・人類学・子どもの成長と発達・統計学・倫理と法律的問題・母乳育児に関する技術・公衆衛生学

IBCLCの役割(3)
3.母乳育児のサポートの際、パーソナリティについての知識、カウンセリングの技術、家族・集団理論を応用できる。
4.母乳育児の文化的・心理的・栄養学的・薬理学的な観点を総合的に踏まえ、ラクテーションのコンサルタントを行うことができる。
5.クライアントと医療者との間に立ち、適切なコミュニケーションの技術を使用できる。

IBCLCの役割(4)
6.家族の個別性を大切にするケア、クライアントの自主性、情報が十分示された上での意思決定と適切な医療ケアを尊重し、クライアントとの間に協力的な支援関係を築く。
7.地域や職場、医療専門家のなかにおいて、母乳育児を支持するように行動する。

IBCLCの役割(5)
8.クライアントや医療者、地域への教育活動において、成人学習の理論を実践することができる。
9.実際の応用に適切かどうかを判断できるように、最新の研究結果を解釈することができる。

IBCLCの役割(6)
10.フォローアップの計画をたて、他のヘルスケア提供者や地域の支援組織に適切な照会を行い、ヘルスケアチームの一員として職務を果たすことができる。
11.クライアントの包括的な記録を残す。

IBCLCの役割(7)
12.専門家の倫理コード、地域の法律やコードを遵守し、適切な衛生水準を維持する。
13.WHOの母乳代用品の販売流通に関する国際規準に概説されている医療従事者のためのガイドラインを遵守する。
14.適切で規則的な継続教育により知識と技術を維持し深める。

IBCLCになるには?
受験資格:
・看護職では、教育背景が4年以上の場合、最低2500時間、短大卒の場合は最低4000時間、臨床医の場合は最低900時間、それ以外の背景の場合はそれぞれに応じて、母乳育児コンサルタントの経験があり
・受験日から遡って3年以内に母乳育児支援に関する専門教育を45時間以上受けていること。
試験:
7月の最終月曜日に全世界共通試験が行われる。

日本のIBCLC
日本人IBCLC第1号は1995年に認定
2003年1月現在、日本語を第一言語とするIBCLCは39人
海外在住日本人IBCLCは5人
英語を第一言語とする日本在住IBCLCは3人

日本のIBCLCの背景
(日本在住外国人IBCLC・海外在住日本人IBCLCを含み、資格は重複)
助産師  27名
看護師  2名
保健師  7名
小児科医 7名
産科医  3名
ラ・レーチェ・リーグ・リーダー6名
弁護士  1名
ソーシャルワーカー 1名

日本におけるIBCLCの必要性(1)
母乳育児支援に関して、IBCLCと従来からの助産師の関わり方は重なり合う部分も多い。
しかし、様々な専門家の行う「指導」には、知識の正確さや技能に差があり、必ずしもすべてが効果的ではない上に母親を混乱させる場合がある。

日本におけるIBCLCの必要性(2)
母乳育児支援に関わる専門家の質を一定の水準に保ち、ケアの受け手である母と子、そして家族に良質な母乳育児支援を提供するために、資格を設定。
専門職としての背景に関わらず、母乳育児支援のためのEBMを基にした共通の知識基盤と支援技術を持っているのがIBCLC。

日本のIBCLCの活動
(JALC正会員のアンケート調査より)
実際の母乳育児支援(施設内や個人で)
同僚や他の専門職へ母乳育児支援についての情報を提供
講演
執筆
教育
インターネットなどでの情報発信

日本ラクテーション・コンサルタント協会
Japanese Association of Lactation Consultants(JALC)とは
IBCLCおよび母乳育児支援に関わる専門家からなる非営利団体。
1999年に有志によって設立。
IBCLCの国際組織である国際ラクテーション・コンサルタント協会(ILCA)の姉妹団体。
正会員はIBCLC。賛助会員は約400名。

JALCの主な活動
学習会の開催
スタンダードな情報の提供
国内外からの情報の紹介
国内外の母乳育児支援団体との交流
IBCLCとしての情報発信
http.//www.jalc-net.jp/
参考文献
井村真澄:国際認定ラクテーション・コンサルタント(IBCLC)について. 助産婦雑誌, 56(6):9-15, 2002
瀬川雅史訳:Competency Statements( Candidate Information Guide and Application Booklet, 1999)より
大山牧子:JALC正会員アンケートより

いずれも著者の了解を得て、一部改変。
協力してくれたJALCの仲間全員に感謝します。

国際規準違反報告フォーム

母乳代用品のマーケティングに関する国際規準」の違反を日本語で報告できます。乳児用食品国際行動ネットワーク(IBFAN)のメンバーグループである母乳育児支援ネットワークの有志が英語に訳してIBFANに届けます。

アイコンまたはこちらをクリックすると「国際規準」違反を報告できるフォームが開きます。ご協力をお願いいたします。

 

最初は母乳だけ、その後も他の食べ物を補いながら母乳を与え続ける。金色のリボンは、 その「ゴールド スタンダード」、つまり理想のありようの象徴です。

WABA(世界母乳育児行動連盟)とユニセフが共同で提唱している「金色のリボン運動」に参加しています。

Facebook 母と子の育児支援ネットワーク(災害時の母と子の育児支援 共同特別委員会)

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